兄と私
「どういうつもりだ!」
優雅に部屋で読書をしていた私の部屋に突然乗り込んで来たのは、皇太子殿下とアーチェルド小公爵。
私は一度ジュースを飲んでから無礼者達を見据える。
「先ず、勝手に人の部屋に入って来ないでください。野蛮人じゃあるまいし」
「それは悪かったな!だが私はさっき言っただろ!?ミファナに求婚すると!なのに何故コイツをミファナの部屋に案内したんだ!コイツが来たせいで、求婚する時間も無かったんだぞ!!」
「どうして殿下がミファナと居るんだよ!!お前は僕の応援をすると約束したじゃないか!!お前の部屋にも案内しないで!!この裏切り者!!」
騒ぎ立てる喧しい人達に溜め息を吐きつつメイドに合図を送ると、部屋で待機していたメイドの一人が慌てて部屋から出て行った。
「泣かないでくださいよ」
「「泣いてない!!」」
泣きかけの2人を椅子に座らせ、私のオヤツを仕方なく分けてあげる。
「殿下、アーチェルド小公爵様が来なくたって、結局お姉様に求婚する勇気なんて無かったでしょう?」
「うっ…」
「小公爵様も。そもそも約束もしていないのに家に来ないでくださいよ。後、そんな約束してません」
「そんなぁ…」
しょぼくれながら私が分けてあげたオヤツをモグモグ食べる2人に呆れていると、丁度さっき出て行ったメイドが帰って来た。救世主を連れて。
「また性懲りも無く我が家に来るとは…いい加減お前達の家に抗議文を送るぞ」
「仕方ないだろ。今日は天気が良かったし、求婚にはうってつけだ」
「約束はしてないけど、また来ていいと言われたんだ。問題無いだろ」
「………ハァ、頭が痛い」
「お兄様、交友関係の見直しをした方がいいですよ」
「そうだな…」
救世主である兄は、いけしゃあしゃあと宣う自身の友人達をまるでゴミ虫を見るような目で見た後、私の隣の椅子に座り私のお菓子を掻っ攫った。