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さらなる理不尽と私

 壁にかけられた時計を見ると、結構な時間が経っていた。ジェルミーを随分待たせてしまっているから、そろそろ行かないと。


「私、ジェルミー様を待たせているのでもう行きますね」

「この状況でか?」

「はい。後はお願いします」

「まだ話は終わってないだろ!!」

「私は終わりました」


 もう言う事はないし、未だに私の肩を掴んでいるアーチェルドの手を振り払おうとした時、休憩所の扉がノックされた。


「ジェルミー・ロッズオールです。こちらにミィニャ・アンガー公爵令嬢はいらっしゃいます?」

「はい!もう直ぐミィニャ・ロッズオール公爵夫人になる私はここにいます!」


 ジェルミーの声が聞こえた瞬間、私は扉にダッシュし勢いよく扉を開いた。


「よかった。ごめんね、心配で来ちゃった」

「いいえ、お待たせしてすみませんでした。私も今からジェルミー様の元へ向かおうとしていたんです」


 私が向かう前にジェルミーが来てくれるなんて、運命を感じずにはいられない。私には見える。ジェルミーの小指と私の小指を繋ぐ赤い糸が。


「よかった。陛下たちもお元気そうで安心しました」

「心にもなさそうな言葉をありがとな。ところでお前、ニャーゴと婚約したって?」

「そんなまさか。はい、来月には式を挙げたいと思っています」

「急だな?」

「今まで散々邪魔されたので、寧ろ遅いくらいですよ」

「へー」


 なんだかバチバチ音がしそうな雰囲気で話す皇帝とジェルミーに首を傾げる。この2人って仲悪かったの?まぁ、確かに、暴君な皇帝と心優しいジェルミーの気が合うわけないか。


「丁度いい。お前に聞きたいこともあったしな。こっち来て座れ」

「かしこまりました」


 ジェルミーにエスコートされ、さっき座っていた席にまた座る。隣にジェルミーが座ったので、私は隙間なくピッタリジェルミーにくっつきながら皇帝にジト目を向ける。いつの間にか兄と皇太子の喧嘩も終わり、皇太子は皇帝の後ろに立ち、兄は私の隣に座った。

 一度皇帝は私と兄を見た後、ジェルミーに真っ直ぐ目を合わせ徐に口を開いた。


「お前、聖女に会ったんだろ?どうだった?」

「何度かお会いしましたが、どうとは?」

「惚れたか?」

「まさか」


 淡々と話す2人を黙って見つめる。ジェルミーは姉に会ったことがあるのか。確か兄がそんな事言ってた気もするな。ジェルミーは聖女に興味ないと言ってたけど、この先どうなるかはわからない。元婚約者たちも最初は姉を少し気にする程度で、一目惚れしたわけじゃない。何度も会って、段々心が惹かれた感じだった。ジェルミーもいつか、姉を好きになるかもしれない。急いで結婚したって、結局は離婚を突きつけられるだけかもしれない。でも、もしかしたらジェルミーは姉を好きにならないかもしれない。前世で『かもしれない運転』は大事だと聞いた事がある。取り敢えず全ての『かもしれない』を想定し、ジェルミーと結婚しよう。離婚する事になっても、ジェルミーが幸せならそれでいいし。


「気にならないのか?」

「全く」

「……お前、どうして姉上に惚れないんだ?」

「僕はミィニャ嬢を愛してるから、聖女を愛する事はないよ」

「そんな事はあり得ない。お前だって知ってるんだろ。どうやって聖女の魅了を回避した」

「それを僕が知っていたとして、態々それを君たちに教えると思う?君だって、彼らに知られたくないだろ?」

「…………」


 押し黙る兄と、ジェルミーを黙って見つめる皇帝と、困惑した感じでジェルミーを見ている元婚約者たちを眺めながら、ジェルミーの格好良さに惚れ直す。私のジェルミー格好良すぎない?好きが溢れて窒息しそう。


「いい度胸だな。教えるつもりがないならそれでも構わないぞ。ただ、俺が皇帝だって事を忘れるなよ?」

「…何をなさるおつもりですか?」

「決まってんだろ?」


 皇帝はにやりと笑いながら私を指差した。


「ミィニャ・アンガー。お前にはやはり罰を与える。流石に皇族に危害を加えた事を見過ごす事は出来ないからな」

「はい?皇帝陛下、さっき私は無罪だって言っていましたよね?お年を召し過ぎたせいでボケたんですか?」

「俺はまだ38だぞ」

「まだと仰るならボケた事は言わないでください。そもそも罰を与えるおつもりなら私は既に牢屋に入りましたから、もう充分罰を受けています」

「本来は処刑だからな、それじゃあ軽過ぎるだろ?」


 とんでもない暴君発言をする皇帝に、開いた口が塞がらない。自分の言葉を翻すなんて、大人として恥ずかしくないのだろうか。


「安心しろ。大した罰じゃない。ただ、俺が許可するまで婚約も結婚も、ましてや恋人を作る事も禁止するってだけだ。つまり、お前等の婚約は無効だ。おめでとう」

「…………………は?」


 皇帝の言葉の意味がわからず、私は暫しフリーズする。皇帝の許可がないと、私は婚約も結婚も恋人も出来ない?なにそれ?どういう事?あの息子にしてこの父ありなの?理不尽って遺伝するものだっけ?なら今直ぐこんな理不尽ばかり言う皇族が治める国から出て行きたいんだけど。

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