プロポーズと私
「あ、そうだ」
牢屋を出て何処かに向かう途中、ジェルミーは何かを思い出したように一度立ち止まり、私を降ろすと懐から何かを取り出した。
「いつも邪魔されて君と会う事が出来ないから今の内に…こんな場所で申し訳ないんだけど…」
そう言うと、ジェルミーは片膝をつき私に何かを差し出してきた。
ちょっと待って。これはあれだ。それ以外あり得ない程あれだ。
「ミィニャ嬢、僕と結婚してほしい」
「はい喜んで!!」
パンパンパーン!!と、頭の中でクラッカーが弾けた。そうか、今日見たあの幸せな夢はこの事を暗示していたのか。成る程ね。ならそれ以外のあれこれは全部試練だったのかもしれない。そうだ。そうに違いない。ありがとう神様。今度こそ私は幸せになってみせる!
ジェルミーに左手を差し出すと、さっき懐から出した指輪を私の左手の薬指に嵌めてくれた。
「本当は今直ぐ結婚したいんだけど、やっと願いが叶ったから盛大に祝いたいんだ。邪魔されるだろうけど、心配しないでね。僕は聖女に興味ないから」
「あ、は、はい!ジェルミー様と結婚出来るならいつまでもお待ちします!あ、でも、お姉様を好きになっても責めたりしないので安心してください」
「そんなに待たせたりはしないから。後、絶対そんな事は起きないよ。僕はあの愚弟やその他とは違うから」
「は、はい!」
何故か一瞬、背筋が冷えた。ジェルミーはいつも通り笑ってるから、もしかして皆が起きて私に怒ってるのかも。そうだ。このままじゃ駄目だった。皇族や高位貴族に攻撃した以上、何らかの罰を受ける可能性は高い。これはジェルミーとの幸せな未来の為の試練なんだから、頑張って乗り越えなければ。
「ジェルミー様、少し待っててもらえますか?私、皇帝陛下達とお話をしてきますから」
「なら僕も行くよ」
「いえ!ここでお待ち下さい!直ぐ戻ってきますので!」
ジェルミーを引き留めて、私はさっき居た休憩所までダッシュした。
バーン!と休憩所の扉を開くと、未だ横たわる皇帝達が居た。神官達の治療魔法を受けているけど、ダメージが大き過ぎて回復出来ずにいるようだ。なので私はさっさと皆に治療魔法をかけた。
私の自慢と言えば聖女である姉が居る事と、魔法の才能だ。さっきの攻撃でもそうだけど、この国で最も力ある皇族さえ一瞬で気絶させられるくらい私は強い。治療魔法もお手の物だ。
「………ニャーゴ…お前、なんて事してくれんだよ…」
「ミ、ミィ…なんで俺まで…」
目覚めて早々私を非難してくる人達に、私はあからさまな溜め息を吐いて腕を組んだ。
「皆さんがぐーすか眠っている間、私がどんな目に遭っていたかご存知ですか?」
「お前のせいでぐーすか寝てたんだからわかるわけないだろ」
「私のせいだなんて…まさか罪に問うおつもりですか?」
「そんなわけないだろ。だが俺達は一応皇族や上位貴族だからな。他の奴なら即死刑だ。気を付けろよ」
「じゃ、じゃあ、私は無罪ってことですか?」
「当たり前だろ」
なんだ、よかった、罪に問うつもりなら、この場に居る全員の記憶を消そうと思ってたけど、その必要はなさそうだ。




