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朝と私

 ジェルミーとの初めてのダンスに、私はドキドキと胸を高鳴らせる。頭上でクスクス笑うジェルミーに、頬は真っ赤に染まり握られた手が僅かに震えてしまう。なんて幸せな時間だろう。このまま時が止まればいいのに。


『ジェルミー様…』

「起きろ!!」


 突然の大声に、私は訳もわからず目を見開く。暫く呆然と部屋の天井を見つめ、さっきまで見ていたものが夢だと気付く。えーっと、どんな内容だったっけ?確かジェルミーとダンスを踊っていたような…


「起きろって言ってるだろ!」

「え?」


 横からあり得ない声が聞こえる。横を向くと、やっぱりあり得ない声の持ち主が、なんかふんぞり返って座っていた。


「おはよう。よく寝ていたな」

「………皇太子殿下」


 ここは私の部屋で今は朝だ。今の私は寝起きで寝間着姿で、人前に出るには髪はボサボサ。そっと口元に手をやり涎が付いてないか確認する。付いてなかった、よかった〜。ふぅ、と安堵の溜め息を吐き暫し考える。……ん?皇太子、殿下?ようやく目が覚めてきて、この異常事態に青褪める。


「は?え?皇太子殿下…?なんで私の部屋にいるんですか?」

「話があって会いに来た」

「ここ寝室ですよ?私も一応女性ですし、非常識って言葉知らないんですか?」

「今更何を言ってるんだ?昔はよく一緒に寝てただろ」

「8歳の時の話はやめてください。頭おかしいんですか?そして家の使用人達はホントに何してるの?なんで止めないの?ロッサ!アンリーべ!まさか買収されたんじゃないですよね!?」


 年頃の令嬢の許可なく寝室に入ってくるなんてとんでもない事だ。私は部屋の入り口前で目を泳がせているメイドの2人を睨みつけた。


「失礼な事を言うな。私はメイドに部屋に入れるよう命令しただけだ」

「失礼な事してるのはそっちでしょうが!今直ぐ出て行ってください!」

「そんな事より話がある。来月の私の誕生パーティーに来るそうだな?ドレスはもう注文したのか?」

「ドレス?」


 私が皇太子の誕生日パーティーに参加しようと決めたのは昨日だ。だからまだなんの準備もしていない。


「まだですけど…」

「そうか!なら準備する必要はないぞ。私が用意しているから、それを着てこい」

「はぁ、どうも…」


 ドレスなんてどれも一緒だし、選ぶのが面倒なのでくれると言うなら貰っておこう。


「まさかそれを言うために、こんな朝早くから我が家に来たんですか?」

「そうだ。お前が私の誕生パーティーに来るのは3年振りだろ?やっぱり行かないなんて言う前に、ドレスを贈ろうと思って」


 そう言えばそうだ。3年前はミザリオと婚約していて、皆に見せつけたいというミザリオのたっての希望で、皇太子の誕生日パーティーに出席したんだった。他の婚約者達は私の一番最初の婚約者が皇太子だと知っていたから、皇太子の誕生日がある時に婚約していた人達は皆、皇太子の誕生日パーティーの招待を断っていたっけ。よく会いに来る元婚約者と会うのも嫌がっていたし、皆結構な狭量だったよね。それに比べて、私はなんて寛大なんだろう。


「そうですか。今回はちゃんと行くんで心配しないでください。じゃあ、朝の支度があるんで帰ってください」


 本当はまだ起きるには早い時間だから、もう一度寝るため皇太子を追い出そうと試みる。今まで帰れと言って素直に帰ったことはなかったけど、今日は流石に帰るよね?

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