受け身な私
11回目の恋に目覚めて3日が経った。その間普通に元婚約者達が何度も我が家に突撃して来たが、私は笑顔で恋愛相談を聞いてやった。だってほら、私も恋愛相談聞いてほしかったから。
「ミファナと夢の中でも会いたいのだ」
「わかる」
「今ミファナは何をしているのだろうか?今直ぐ彼女に会いに行きたいよ」
「それな」
「……君は人の話を聞く気があるのかい?今度はジェルミーが相手だそうだが、彼は昔からよく女を泣かせる非道な男だと聞いているよ。ジェルミー…いや、ロッズオール家が非道な一族なのは有名な話だ。関わるべきではない」
「それ、マーシャと婚約した時にも聞きました。ジェルミー様はサイコパスとは違うんで心配御無用です」
「……………」
眉間にシワを寄せ黙り込むのは、私が8歳の時に婚約していたシヴィル。皇太子に婚約破棄され、傷付いた私が2度目に恋した人だ。
「…まぁいいか。それよりミファナに手紙を書いてみたんだが、読んでみてほしい。おかしなところはないかな?サッパリし過ぎか?もっとアピールするべきだろうか?」
「んー…『今日はいい天気だな。明日も晴れるといいな。明後日も天気がいいと嬉しいよ』…小学生の日記より酷い内容ですね。これ手紙出す意味あります?」
「そんなに酷いだろうか…ミファナは雨や曇りが嫌いだろう?晴れを願えば、彼女の好感度が上がるのでは?」
「好感度がそんな簡単に上がったら誰も苦労しませんよ」
恋愛をあまりにも舐め過ぎだ。そんな事で好感度が上がるなら、私は元婚約者達から無限の愛を貰えたはずだ。恋に盲目だった私が、どれだけ元婚約者達に尽くした事か。
「そうか…ならどうすればミファナの好感度は上がるんだい?」
「お姉様の好感度を上げたいなら世界に一つしかないような鏡をあげるか、お姉様に似合う宝石を大量に贈るかすればいいんですよ。いつもそう言っているでしょ」
「鏡も宝石も山程贈っている。なのに一向に好感度が上がらないのは何故だ?」
「さぁ…?」
姉の好感度を上げるなんて簡単だ。ただどんなに好感度を上げても、姉が自分自身を愛してやまない以上、どんなに好感度を上げても意味が無いだけだ。
「好感度なんて気にせず、ただお姉様を愛せばいいじゃないですか。想いが通じ合わなくても、誰かを愛してる時って凄く幸せでしょ」
「…今の君みたいにか?」
「はい!その通りです!」
恋をすると、世界が色付きわくわくが止まらなくなるものだ。まぁ、こんなに浮かれまくってはいるが、実はまだジェルミーから婚約話が来たわけじゃない。マーシャから聞いた、ジェルミーが私と婚約するという話が嘘なら、私の11回目の恋は儚く消える事となる。私からジェルミーに連絡しようにも、悉く兄に邪魔されるため受け身で待つしかないのだ。
「私には理解出来ないな。ただ愛するだけだなんて耐えられないよ。愛する人には愛してほしいし、ずっと一緒に居たいと思う。だから絶対に、ミファナと結婚しなければ」
「そうですか」
シヴィルの気持ちはわからなくはない。ジェルミーに恋していなかったら『執着気持ち悪』くらい言っていただろうけど、今の私はシヴィルを温かく見守る事が出来る。恋って凄い。