愚か者と私
「どうすればいいと思う?」
答えを持たない人間に、答えを求めるのは愚か者のする事だ。
だけど私は、そんな愚か者に答えてあげる。
「花束なんて邪魔なだけです。貴族家には大抵庭園があるんですから、花が欲しけりゃ庭から千切りますよ。今時花貰って喜ぶ令嬢なんてぶってるだけです。本心では高くて貴重で皆に自慢出来る宝石が欲しいんですよ」
「聞くんじゃなかった…」
望んだ答えじゃなかったからか、ガックリと肩を落とす愚か者に冷笑を浴びせる。
愚か者の傍らには無駄にデカい花束が置かれ、鼻に付く匂いを撒き散らしていた。
「臭い」
「……彼女はこの花の匂いが好きなんだよ」
「ノロケなら余所でやってください」
「お前はそんなだから未だに婚約者が見つからないんだぞ。先日また婚約破棄されたんだろ?これで何度目だ?」
「10回目ですって。料理長がケーキとご馳走作ってくれたんでパーティーしましたよ」
「相変わらずおめでたい奴等だな」
呆れたように溜め息を吐いた愚か者は、約束があるからと言って立ち去ろうとする。
「ゴミ忘れてますよ」
「……せめて花って言え。もう必要無いからやるよ」
「え、いらないです」
「話を聞いてくれた礼だ。捨てるんじゃないぞ。じゃあな」
「大迷惑なんですけど」
花束と共に残された私は、あまりの虚しさに暫し花束を睨み付けていた。