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夜の喫煙所で
喫煙所は、宿舎からは離れており、駐輪場の中にある。
夜、足元もおぼつかない暗がりの中を、複数棟ある宿舎の間を抜け歩いて、屋根のある駐輪場に近づく。
宿舎の壁は無機質で、灰色のコンクリートに規則的に配置された窓からの薄明かりが漏れる。
それらに囲まれた駐輪場は、閉じ込められているようにも、隔離されているようにも見える。
駐輪場の屋根の下を照らす、ぼんやりとした古い蛍光灯の灯りが見える。
その光はいやに青白い。
1人でそこでタバコをつけ、イヤホンで音楽を聴くと、外界から遮断される。
手はタバコを持ち、口で吸い込み、鼻で匂いを嗅ぎ、目は煙を捉え、耳には好きな音楽。
タバコと私と音楽のほかに何もなく、蛍光灯の灯りで周囲の闇から守られる。
私はここで守られているのか、閉じ込められているのか分からなくなる。
じっと煙と音楽に心を寄りかからせて、日中溜め込んだ不安を煙と共に吐き出す。
せめてこの煙は、コンクリートの壁の外に漂って行くのだろうか。漂い出たほうがいいのだろうか。ここで行き場もなく閉じ込められた方がいいのだろうか。
未だ捉え方を見つけられずにいた。