キャタピラ
キャタピラ、かっこいい!
あたしのあしにキャタピラがあったら
ひざをついたって まえにすすんでけた
もう歩けないって
べそをかきながらでも
きゅるきゅる音をたてて
車輪がベルトをまわせば
根性なしのあたしでも
ちゃんと まえにすすんでけたんだ
あたしのおしりにキャタピラがあったら
しりもちついたって まえにすすんでけた
失敗しちゃったって
すってんころりんでも
がたごと音をたてて
石ころ道でベルトをまわせば
どじっコのあたしでも
ちゃんと まえにすすんでけたんだってば
あたしのせなかにキャタピラがあったら
ねころがったって まえにすすんでけた
なにもかもいやになっちゃって
やる気もぜんぜんでなくても
くるくるいっしょうけんめいに
車輪がベルトをまわせば
ぐうたらのあたしでも
ちゃんと まえにすすんでけたのに それなのに
どうしたことか
あたしのからだには
どこにも ひとつも
キャタピラがついてないじゃんって
あたしはやっと気がついた
うそ
ほんとはずっとむかしから気づいてたよ
だから
根性なしで
どじっコで
ぐうたらのあたしは
ちっとも まえにすすんでけないんだって
とっくにわかってたんだよね
あーあ
なんであたしのからだには
どこにも ひとつも
キャタピラがついてないんだろう?
神さまがうっかり つけわすれたのか
あるいは 予算がたりなかったにちがいない
予算がたっぷりあったんなら
キャタピラどころか
ジェットと翼をつけてくれただろうから
そうかんがえると うらめしいったらありゃしない
おかげであたしは
ひざをついたり
しりもちをついたり
ねころがったりしないで
二本あしで立って歩いてかなきゃ
まえにすすめないじゃないか
くじけないで
しくじらないで
なまけないで
二本あしで立って歩いてかなきゃ
まえにすすめないなんて
なんて せちがらい世のなかだ!
でも みんなもそうやって
まえにすすんでくんだって
そうかんがえたら
あたしひとりが
ひざをついて くじけたり
しりもちをついて しくじったり
ねころがって なまけたり
そんなふうにしてられないよね
あたしだって 二本あしで立って
なんとか歩いてかなきゃいけないんだ
あたしは そう決心して
二本あしで立ちあがると
とりあえず歩きだしたよ
もう あたしのからだの
どこにも ひとつも
キャタピラがついてないなんて
うらみごとはくちにしない
もう あたしのからだの
どこにも ひとつも
キャタピラなんかいらない
あたしはこれから
二本あしで立って なんとか歩いてくんだ
たのんだぞ あたしの二本あし!!
たてひざででも。
すわったまま、あしを伸ばし、ちぢめしても。
ねたままころがっても、進めるときづくのは、まだ先。




