表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

ナンパ

 フェリーで揺られること約一時間。二人でビールを飲みながら海を見て過ごした。

 たまに隣で彼が大声で何か叫んでいたが、波の音でかき消されて何を言っているか分からなかった。島に着くころには彼は声が枯れていた。

 島に来てすぐに海岸に行く。夏休みとあって、人は多い。トイレで海パン姿になり、荷物を視界に入る位置にまとめて置いてから、彼は全速力で走り、海にダイブした。僕も後を追いかけ、海に入った。

 彼は二、三人組女性グループに片っ端から声をかけた。船で叫び過ぎていたので、ハスキーボイスで彼女たちの容姿を誉め、一緒に飲もうと言っていた。大体怪しまれるし、男連れだったときは脅されることもあった。めげずに話しかけ続け、勢いに負けた形の二人組と一回だけ一緒に海の家で飲んだが、ハイテンションでよく分からない話をする彼と、ほとんど何も話さない僕をしり目に、すぐに帰ってしまった。結局、彼と二人、海の家でビールばかり飲んでしまっている。

 彼はナンパ相手に名前を聞かれたとき、自分のこと「デイブ」と名乗っていた。その理由を後で聞くと、本名だと言っていた。どうみても海外の血が入っているようには見えなかったが、それ以上聞くのはやめた。その話の流れで僕も名前を聞かれたので、ジョニーと答えたら普通に会話が終わってしまったので、本当はシンジだと言い直した。デイブは、僕がどことなくエヴァンゲリオンの主人公に似ていると笑った。

 日も暮れてきた頃、ビールを何度も持ってきてくれていた海の家の女性店員にデイブが連絡先を聞いたところ、教えてもらえた。黒髪で眼鏡の文科系の学生といった見た目で、どう考えても断られると思ったが意外だった。デイブも自分で聞いておきながら、びっくりした表情をしていて、嬉しそうだった。

 彼女はこの島へは夏休み期間バイトで来ているとのことで、バイトが終わったらフェリーで本島に戻るとのことだった。彼女の方も友達を一人呼んでくれるとのことで、駅前の昨日行った居酒屋で待ち合わせをした。


 僕らは先にフェリーで本島に戻り、ネットカフェでシャワーを浴び、歯磨きをした。僕は買ってきた服に着替え、今まで着ていた服はすべて捨ててしまった。

 やることもないので、デイブと二人で先に居酒屋入って飲んでいた。デイブも機嫌よく「ナンパって、案外うまくいくもんだね」なんて言って笑ってる。僕も楽しくなってきて、「うちら、いいコンビかも」と言って笑っていた。調子に乗って飲んでいたためか、彼女たちが来るころには二人とも随分酔ってしまっていた。

 スマホをもっていたデイブがやり取りして、彼女たちは席にやってきた。海の家でバイトをしていた彼女はコノミという名前らしい。僕の思った通り、この県にある大学の文学部に通っているとのことだった。もう一人は彼女の高校時代の友達で、ユキという名前の短大生だった。明るい髪色をしていて、よく話す活発そうな子だった。

 会話は大体デイブとユキが話し、僕とコノミはそれを聞いて笑っているという形だったが、僕がデイブの曲について話したときは、彼女たちは大笑いしていた。ぜひ聴いてみたいとのことだったので、店を出て駅前でデイブが弾き語りすると、彼女たちはさっき以上に爆笑していた。デイブはそれをみてヘラヘラしていたが、内心ちょっと傷付いてるようにも見えて、それがまた可笑しかった。


 僕らは、二件目はカラオケに行った。彼女らの歌声は何だか癒された。デイブは相変わらず全力で叫びながら歌い、皆に爆笑されて少し傷付いていたが、デイブも酔っていたので楽しそうだった。

 僕も酔っていたのでデイブの真似をして叫びながら歌ったが、変に感心されてしまって逆に恥ずかしかった。キャラのせいか、それとも歌が向いてるのか。よく分からなかったが、酔っているのでどうでもいい気持ちになり、深夜まではしゃいで、飲んで歌った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ