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【本編完結!】戦国維新伝  ~日ノ本を今一度洗濯いたし申候  作者: 歌池 聡
第十章  未来の記憶を持つ者たち

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087   厄介な来訪者   羽柴駒


 あれから半年余り。──南伊勢での暮らしは今のところ順調です。


 佐吉の誘拐未遂が無事に解決し、御隠居様の強奪も未遂で終わりました。何より、御隠居様自身が小一郎に負けたのがよほどこたえたのか、完全に覇気を失ってしまったようですし。

 美濃に移ってからは、お館様が辞を低くして剣術や作法に関する相談役になるよう打診されたようですが、どうやら剣術指南は固辞して、公家社会のことに関する相談役として落ち着いたようです。


 反織田強硬派の家臣が一掃されたこともあり、南伊勢の統治は左中将様と三介様のもとで問題なく回り始めています。


 無明殿の側も、立て続けに策が失敗したのであきらめたのか、その後何かを仕掛けてくる様子はありません。まあ、他にも何か企んではいると思うんですけど……。


 私の育児院の仕事も、今のところ大きな問題はありません。初めの頃はお雪様が私と三介様の仲に嫉妬して、やたらと何かにつけて張り合ってきて少し閉口しました。けどまあ、芳野様(竹中半兵衛の妻)の嫉妬深さと思い込みの強さに比べれば可愛いものです。すぐに打ち解けることが出来ました。


 佐吉も、子供たちの奔放な振舞いに振り回されながらも頑張っています。最近では子供たちが学問に興味を持つように遊びの要素を取り入れるなど、なかなかに工夫を凝らしているようです。だいぶ頭も柔らかくなってきたのかしら。






 さて、この間に、世の中ではいくつかの大きな出来事がありました。

 私たちにとって一番大きい出来事は、近衛様の復権と種痘法の公開です。


 古来からたびたび大流行して、多くの人の命を奪ってきた痘瘡(とうそう)──。近衛様は、その予防策である種痘法を織田家・羽柴家とともに開発したと奏上なさいました。


 もちろん、公家衆のほとんどは猛反発したそうです。何しろ、何事も前例を重んじる方々です。『人にわざと獣の病をうつすなど前代未聞、もっての外だ』と。

 それに対して、近衛様が一喝して黙らせたのだとか。『病の新しい治療法に前例がないのは当たり前、自分こそが身体を張ってその前例になったのだ。文句があるなら痘瘡を治してみせろ』と。


 やはりお館様とともに、御自ら危険を顧みずに実験台になったというのが大きかったみたいです。帝はその勇気にいたく感激し、近衛様の関白への復職を即断なされたのです。

 ──まあ、関白の二条殿下が病に臥せって参内(さんだい)できない時を狙って奏上したあたりは、さすがのしたたかさと言うべきなんでしょうね。


 そして、種痘法発見の功に乗じて、お館様が帝に奏上してこの夏に実現したのが、『元亀(げんき)』から『天正(てんしょう)』への改元です。


 これは、ただ単に年号の呼び方が変わったということだけを意味するのではありません。

 改元に際しては、足利将軍家がその諸経費を負担するのが通例となっています。これまでにもお館様が何度か奏上したものの、その度に公方様に却下されてきたのです。

 なのに此度は、公方様を介さずに織田家の奏上と費用負担によって改元を行った。──これは朝廷が、もはや足利将軍家に天下を差配する資格なしと宣言したに等しいのです。


 たぶん備後にいる公方様や、本願寺など今後も織田に抵抗していこうとする勢力は、意地でも『元亀』を使い続けるでしょう。種痘法のことも、『人を畜生道に墜とそうとする悪魔の所業だ』などと盛んに喧伝しているようですが、その噂を聞いても小一郎は気にする様子もありません。


「んー、まあ、いずれ収まるじゃろ」

「──どういうこと?」

「実は、商人を使って全国に噂を広めとるんじゃ。『織田が痘瘡の予防策を見つけ、帝もお認めになった。なのに、つまらん意地を張ってそれを認めようとしない馬鹿がおる。そこの領民たちは何ともお気の毒になぁ』とな。

 さあて、民たちからの突き上げに、あいつらがどこまで耐えられるかのう」


 ──うーん、やっぱり小一郎ってちょっと腹黒だわ。






 小一郎は月に一度、数日の休みを取って奥志摩から会いに来てくれます。開発の仕事の方は上手くいっている部分もあり、なかなか捗らないこともあるようですが、とても活き活きとしているように感じます。

 やはり、お義母様とのわだかまりが解消して、いつでも今浜に帰られるようになったのが大きいんでしょう。


 ──市松が未来の記憶を一気に思い出して倒れた時、半兵衛様のとっさの判断でお義母様にも立ち会わせたそうです。それでお義母様に、小一郎の身にも同じことが起こったのだと理解していただくことが出来たのです。


 市松がここに来てから数日遅れで、半兵衛様と義姉上様から事の成り行きを知らせる文が届いたのですが、そこにお義母様から小一郎宛ての文が同封されていました。

 読み書きの出来ないお義母様が、おそらくは誰かから教わりながら一所懸命にしたためた、人生で初めての手紙──。

 紙いっぱいにぎこちない字で『こいちろう、すまなかった』とだけ書かれたその手紙を握りしめて、小一郎が一晩中こっそりと泣いていたことは私だけの秘密です。






 奥志摩から大河内(おかわち)城に来ると、小一郎はまず、方々から送られてきた手紙や書類に目を通すところから始めます。羽柴家からの近況を知らせる文や、各地の商人から様々な噂を集めた文などですが、最近はちょっと別の要件での文も増えているようで──。


「うーん、これも違う。これもこれも──弟子入り志願の文ばかりじゃのう」


 小一郎が『北辰一刀流』の流派名を名乗り、北畠の御隠居様に勝ったということが知れ渡って以来、この手の文が増えています。本当の目的はこれじゃないんですけどねぇ。


「まあ、わしらみたいな者がそう易々と見つかるとは思うてなかったがの」

「そうよ、ひとり見つかっただけでも良かったじゃない」


 ──実はあれからひとりだけ、未来の記憶を持った人物が現れたのです。


 越前の下級武士、有馬吉兵衛(きちべえ)殿、四十歳。小一郎とほぼ同じ頃に未来の記憶を思い出したのですが、身分の低い自分が何か言ったところでどうせ誰にも信じてもらえまいと、ずっと伏せていたのだそうです。

 やがて、どうやら小一郎が歴史を変えているようだ、もしや自分と同じ境遇なのではないかと推測していたところに、この時代にないはずの『北辰一刀流』という名を聞いて確信し、訪ねて来てくれたのです。

 越前朝倉家の先行きも暗そうだし、民や家臣も次々と逃げ出し始めている。どうせなら小一郎とともに大きな仕事をしてみたいと、妻子を連れて出奔して来たのだとか。


 どうも、本木(もとき)昌造(しょうぞう)殿という未来の人の記憶を受け継いだということですが──この人、何だかやってきたことが多すぎて、何の専門家なのだか良くわかりません。

 私がざっと聞いたところでも、オランダ語の通詞(通訳)だったり日ノ本初の鉄製の橋を作ったり──蒸気船の船長もやったことがあるそうです。あと生涯を通じて、同じ書面を大量に作る『かつじいんさつ』を開発してきたと言っていましたが──それがどう役に立つのか、私にはちょっとわかりません。

 とりあえず、吉兵衛殿にはこの先どんなことが出来そうかを書き出してもらっているところなんですが──。






「まあ、焦らずに待ちましょうよ。未来の記憶を持つ人なんて、そう多くはいないと思うし」


 私が励ますように言っても、小一郎は何だか難しい顔のままです。


「──小一郎?」

「いや、ちと思うとったんじゃがな──逆に、多すぎないか?」


 え、どういう意味? まだ無明殿も含めて六人しかいませんよね?


「いやな、あの日記のご老人のように、ごくまれにそういう者もおったとは思う。もしもっと多くいたのなら、各地に言い伝えが色々と残っていてもいいはずじゃ。

 それなのに、わし、無明殿、次郎殿、市松、そして吉兵衛殿とごく短期間に五人も現れとる。これって、さすがに多すぎやせんか?

 もし、未来の記憶持ちがこれほどの頻度で現われるんなら、もっとこの現象が世に知られておってもおかしくなかろう?」


 ──なるほど、言われてみればそうかも。


「ううむ、こういう考察については、半兵衛殿が得意そうなんじゃがのう」


 小一郎が前髪を掻きむしりながら首を捻ってます。──あ、その癖、まだ直してなかったのね。後でお仕置きです。


「うーん、そうねぇ。確かに偏っているといえば偏っているかも──あっ」


 その時、私の頭の中に、あることが閃きました。


「ねえ、それって『地震』のようなものなんじゃない?」

「地震──?」

「ほら、地震が滅多にない地域で大地震が起きると、その後しばらくは地震が続くっていうじゃない? そんな現象なんじゃないかしら」

「うーん、なるほど……」

「将軍がその地位を自ら手放すほど、世が乱れたんでしょ? だとしたら、民たちの不安はとんでもなく大きかったはずよ。そういう不安とか、志半ばで倒れた人の無念とか恨みとか──そういった強い想いが積もりに積もって、この現象を引き起こしたのだとは考えられない?」

「うーん、確かにそう考えればその時代の人ばかり、というのにも説明がつくか。

 ──なかなかに説得力のある仮説じゃな」


 小一郎の顔に、少し鬱屈が晴れたような明るさが戻りました。


 ちょうどいい機会です。もうひとつ、ちょっと引っかかっていた問題も片付けちゃいましょうか。


「──ねえ、もしかして『未来の記憶持ちなんてことが自分の子供にも受け継がれてしまったらどうしよう』とか考えてる?」

「えっ!?」


 小一郎の顔がわかりやすく固まりました。どうやら図星だったようです。


「どうも、子作りにあまり乗り気じゃないような気がしてたのよねー。私に飽きたのかとか、他に女がいるのかとかも考えたけど、どうもそうじゃないみたいだし。

 どうして未来の記憶を持ってしまったのか、その仕組みがわからないと、子供までが同じような目に遭うかもしれないと不安だったんでしょ」

「あー、いや、その……まあ、そういうことじゃ」


 ばつが悪そうに縮こまる小一郎が、何だかかわいい。思わず、背中から抱きついちゃいます。


「馬鹿ねぇ。どう考えたって答えなんてわからないんだから、心配してもしょうがないでしょ?

 そうなったらそうなったで、親の私たちがしっかりと支えてあげればいいだけよ。

 それに、小一郎がそんなことで尻込みしてたら、これからお嫁さんをもらう次郎殿や市松まで二の足を踏んじゃうわよ。

『上に立つ者は率先垂範すべし』──これが信条なんじゃなかった?」

「うーん、それを言われると弱いのう」


 小一郎がまた前髪を掻きむしろうとしたので、手首を捕まえて止めて、ついでに耳元で甘くささやいてみます。


「私だって、小一郎との赤ちゃん、欲しいんだからね?」

「お、お駒──」


『──あ、あのー、小一郎様、お駒様! お話し中に誠にすみません!』


 いきなり部屋の外から声がかけられました! え、楓殿──⁉

 まさか今のやり取り、聞かれてた? ──って、前にもこんなことがあったような。


「か、楓か! 入ってかまわんぞ」


 小一郎が取り繕ったように応えると、楓殿が申し訳なさそうに入ってきました。顔が真っ赤ですし──やっぱり聞かれちゃってたのね。


「その、お邪魔する気はなかったのですが、今浜の首領から大至急ということでカラス便が届きまして」


 小一郎は苦笑いを浮かべながら楓殿から書状を受け取って読み始めたのですが、その顔にみるみるうちにげんなりとしたような表情が浮かんできました。


「うわっ、しもうた。そういう可能性もあったか──」

「どうしたの? 何か問題でもあった?」

「どうやら、もうひとり未来の記憶持ちが見つかったらしいんじゃが──わしに会わせろと、今浜に怒鳴り込んできたらしい。じきに、こちらにも来るぞ。

 それにしてもまた、よりにもよって厄介なやつが──」

「厄介なやつ? 誰なのそれ」

「徳川殿の家臣随一の槍の遣い手で──がっちがちの忠義者じゃ」






「──お初にお目にかかる。本多(ほんだ)平八郎(へいはちろう)でござる」


 翌日、聞いていたとおりに本多殿がやってきました。慇懃(いんぎん)に頭を下げる姿は、二十台半ばと聞いてましたが古武士然とした佇まいで、何より全身から隠し切れない殺気がにじみ出しています。怖いなぁ。


 ──本多平八郎忠勝(ただかつ)殿。徳川家臣でも指折りの猛将で、しかも無類の忠臣としても知られています。

 本多一族は一向門徒が多く、三河で大規模な一向一揆がおきた時にはその多くが一揆側に付いたのですが、この平八郎殿は浄土宗に改宗してまで徳川殿に忠義を尽くしたのだとか。


「おお、本多殿のお噂はかねがね聞いておりますぞ。徳川家随一の──」

「世辞など結構。こうして訪ねて参ったのは、お尋ねしたき議があったまで」


 にこりともしません。こういう相手に、感情を揺さぶるような小一郎の話術が通用するのかしら。私がいれば物騒なことはしにくいんじゃないかと思って、無理を言って同席したのですが、お構いなしに斬りかかってきそうなんですけど。


「尋ねたいこと、のう。それを聞いて、どうするつもりなんじゃ?」

「返答次第では──斬らせていただく」


 取りつく島もない様子に、小一郎が大きく溜息をつきました。


「まあ、用件におおよその見当はついとる。わしの『北辰一刀流』という流派名を聞いてやってきたということは、おんしもその名を知っておる──すなわち、この先の世に何が起こるのか知っとるということなんじゃろ?」


 小一郎の問いかけに、本多殿が黙って小さく頷きます。その右手が、わずかに左腰の脇差に近づき始めます。


「──で、あれか。自分の知る未来では徳川殿がいずれ天下人になるはずなのに、どうやら羽柴小一郎が歴史を大きく変えて邪魔しようとしている、許せん、というところじゃな?」


 本多殿がもうひとつ大きく頷きます。腰がわずかに浮き、今にも抜き打ちに斬りかかろうかという気配です。


「あのなぁ。言っておくが、わしは誰が天下を取ろうが別にかまわんのじゃ。徳川殿の邪魔をするつもりもないぞ」

「──何っ⁉」


 小一郎殿が飄々(ひょうひょう)と発する言葉に、本多殿はさすがに意表をつかれたようです。


「天下を取るのがお館様だろうが徳川殿だろうが、わしゃ一向にかまわん。──それが兄者でさえなければな。

 わしの最大の目的は、兄者に天下を取らせないこと、非道な暴君にならせないことなんじゃ。──そう言えば、わかってもらえるかの?」


「──豊臣の世を目指しているわけではないのだな?」

「目指しておらんよ。兄者や豊臣家の末路くらいはおんしも知っとるんじゃろ? 

 朝鮮出兵などさせとうはないし、その後に羽柴家が滅ぼされるいくさもまっぴらじゃ。

 ──何しろ、わしの記憶の持ち主は土佐の坂本龍馬。いくさ嫌いは筋金入りじゃからな」






「──坂本龍馬か、なるほど……」


 本多殿は、しばし記憶を辿るように黙っていましたが、やがてぽつりと口を開きました。


「妙な縁もあったものだ。それがしの記憶の持ち主は、どうやら坂本龍馬暗殺の濡れ衣を着せられて、ずいぶんと肩身の狭い思いをしたらしい」

「何じゃと?」


「それがしの記憶の持ち主は『原田左之助(さのすけ)』でござる」

「原田? ──え、新選組の原田か⁉」


 ──新選組の話は、以前に寝物語で聞いています。龍馬殿が京に潜伏していた頃、京の治安を守る新選組に何度も追いかけられ、危ない目にも遭ったのだとか。


「しかし『濡れ衣』ということは、龍馬はおんしに斬られたわけではないんじゃな? では、いったい誰が──」

「さあ、存じ上げませんな。坂本龍馬はあちこちに敵も多かったようですから」

「ま、まあええか。とりあえず、龍馬が画策した『大政奉還』は成った。徳川幕府が終わり、無事に新政府が出来たということなんじゃろ?」


 その言葉を聞いて、本多殿が意外そうな表情を浮かべました。


「え? ──ああ、なるほど。貴殿が坂本龍馬暗殺の後のことを知らんのは道理ですな。

 残念ながら、大政奉還ではことは治まらず、徳川討伐の戦は起こってしまいましたぞ」


 それを聞いて、小一郎はしばし言葉を失ってしまったようです。


「ば──馬鹿なっ⁉ 政権を返上した徳川を倒す必要がどこにあるんじゃ! それに、そもそも大義がなかろうが!」

「いえ。薩長の新政府は徳川に、政権だけでは足りない、全ての領地を返上しろと迫ったのです。

 しかし、そんなことをすれば何万人もの旗本が路頭に迷ってしまう。呑めるはずがない。

 かくして徳川はやむを得ず薩長に立ち向かったものの──帝の(ちょく)により『賊軍』の烙印(らくいん)を押されてしまったのです」


 そう語る本多殿の顔には、激しい怒りと焦りの入り混じった複雑な表情が浮かんでいました。


「──それがしは、殿がいずれ天下人になる未来と、そして、いずれその幕府が滅ぼされるさまを知ってしまったのだ! 知ってしまった以上、何としてもそれを阻止する手立てを考えねば──」


「────だが、どうやって?」 


 黙ったまま何やら考え込んでいた小一郎が、ようやく口を開きました。


「二百数十年後にこういうことが起きるぞと予言でも残すか? だが、誰も信じまい。

 では、今のうちに薩摩や長州を滅ぼしておくか? ──だが、それもおそらく無駄じゃ。徳川があのまつりごとをしておる限り、間違いなくいずれ異国の圧力がかかり、不満を爆発させる勢力が現れるぞ?」

「そ、それは──」


 少したじろいだ本多殿に、小一郎が少し語勢を弱めて語りかけます。


「なあ、原田殿の記憶を持っているなら、わかっとるんじゃろ? 徳川の世が、日ノ本の民にとって決してよい時代ではなかったということを。

 異国との交わりを閉ざしてしまったり、民や大名たちが逆らえぬよう力を奪ったり──その歪みが一気に噴き出したあの暗い時代を見てきたんじゃろ?」

「──」


「わしはな、今のうちからそうならんような国の形を目指しとる。異国に負けないような強い国にして対等に交易し、民を豊かにしてまつりごとに不満を抱かせないようにする。──それが、わしがお館様のもとで進めてきたまつりごとじゃ。

 実際、三河でも民の暮らしぶりはずいぶん良くなってきとるじゃろ?」

「そ、それは確かにそうだが──」

「それでもどうしても徳川の世を目指すというなら、好きにすればええ。わしの考え以上に民を幸せに出来る算段があるというなら、そちらに力を貸してやらんでもない。だがな──」


 そう言って、小一郎は先ほどの本多殿にも負けないほどの威圧感をにじませて睨みつけました。


「もし、わしが知っているとおりの()()徳川の世をただ目指すというのなら──その時は、この羽柴小一郎、持てる全ての力をもって断固阻止させていただく」




最近、急に増えてきた転生者が、一気にふたりもw


有馬吉兵衛というのは架空の人物ですが、本木昌造氏は実在した凄い方です。

例によって、なろうの検索では一件もヒットしませんでしたが。


本多忠勝と原田左之助は、もう言うまでもない有名人同士の取り合わせですね。

個人的には、単細胞同士という恐ろしいイメージもあるんですけどw



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― 新着の感想 ―
[良い点] つまらん意地を張ってそれを認めようとしない馬鹿がおる。そこの領民たちは何ともお気の毒になぁ [一言] 笑ってしまいました。
2023/04/09 18:09 退会済み
管理
[一言] 藤岡弘(真田丸)にのりうつった、山本太郎(新撰組!)を想像してしまった
[一言] >同じ書面を大量に作る『かつじいんさつ』 それが実現すれば、大量印刷された書物が安価に入手できるようになりますな 戦国時代初期、公家の三条西実隆が書写した源氏物語全54巻の売価が銭30貫文だ…
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