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オルタナティヴ・アバード  作者: 諸葛ナイト
第3章 黒と白

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再戦(下)

 ルカ・アバードの振るう剣が空気を引き裂きながら白いアバードへと迫る。

 その攻撃は左半身が逸らされたため当たることはなかったが、彼の右側から躍り出たリヴァレ・アバードが剣による追撃の刺突を仕掛けた。


 尻尾でリヴァレの一撃を弾くとルカを踏み台にして高く飛び上がる。


 蹴飛ばされて地面に落とされるルカにかわり、リヴァレが追い縋ろうとするが、その動きを牽制するように槍を作り出し投げ飛ばした。


 リヴァレが向かう槍を難なく左の短剣で弾いている間に姿勢を整えていたルカが彼女の横を通りて抜け白いアバードとの距離を詰める。


 ルカが作り出したのは円錐の馬上槍。

 なんのフェイントもなく、なにか別の武器があるのではなく、ただの突撃だ。


 しかし、それゆえに動きは速く白いアバードは武器を作り出す前にその槍は腹部に届く。


 そのはずだったーー


「くっ!」


 ルカは奥歯を噛みしめる。

 彼の視線の先では槍は腹部、ではなく右手のひらで止まっていた。


 押し込もうとするが左腕のみではあと1歩が足りない。

 拮抗している間に白いアバードがなにもしないはずもなく、空いている左手を伸ばすと槍を掴んでそのまま握り砕いた。


 寸前で槍から手を離していたルカは雑に投げ捨てられたことで舞う破片を気にすることなく斧を作りすと迷いなく振り下ろす。

 さらに彼の横合いから飛び出し、回り込んだリヴァレも刺突を繰り出した。


 正面と右後ろから挟み込むように迫る攻撃。


 しかし、白いアバードは冷静だった。


 ルカの一撃を斧を両手で挟みへし折りながら尻尾でリヴァレの剣を弾き上げる。


「「ッ!?」」


 どちらかの攻撃はせめて掠らせるつもりだった。

 だが結果はこれだ。


(これは想像以上にーー)


(ーー強い!)


 2人は確信と同時に一気に距離を取ると横に並ぶ。


「ルカ、まだやれますね?」


「もちろん。リヴァレは? ちょっと息荒いけど」


 剣を作り出しながらのからかうような質問にリヴァレは鼻を鳴らす勢いで答える。


「まだまだ余裕ですよ」


「よし、ならこのまま行こう」


「ええ! ルカ、変わらず右は私がカバーします。動きも合わせますからあなたが動きたいように動いてください」


「わかった!」


 軽く剣を振るい手に馴染ませたルカは急加速、白いアバードへと迫る。

 それに続いてリヴァレも加速した。


◇◇◇


 ルカたちが苛烈な戦闘を繰り広げる中、林の木々に隠れるようにガリスとツェルトはいた。


 特にツェルトの機体の右腕にはバリスタを縦にしたような装備が付いていた。


 開発名称は「ブレイク・バレル」

 元々は大型のドラゴン用の装備だったのだが、試験段階で「過剰火力であり持ち運びもコンテナが必要で取り回しが極悪」と散々な評価を受けて開発が中止されたものである。


 しかし、これも扱いようだ。


 攻撃用の鉄の矢ではなく標的の寸前で爆発して網を広げる捕獲用の矢であればその弾速を活かし確実にアギルを捕らえる事ができる。

 網はドラゴンの捕獲用であるため強度も保障されている。


「あとは、狙いを外さないことだな」


「もう! 嫌なこと言わないでくださいよ」


 ガリスは悪びれる様子もなく「悪い悪い」と言い肩をすくめると先ほどまでの空気を吹き飛ばすように真剣な声で問いかけた。


「狙いは?」


「もう付けてます。動いていないあたり私たちに気付いているようには見えないし、戦いを注視しているのかも」


「では隙だらけということか」


「はい。矢の装填、固定を」


 頷いたガリスは置いていた矢をバリスタに番えると弦を引き絞り固定した。


「矢の装填、ならびに固定を確認。引き金をツェルトへ」


「受け取りました。ブレイク・バレル射撃体勢へ」


 肩幅の広さに両足を広げ、軽く腰を落とすとそれを合図にサイドグリップが展開しツェルト機の左手がそれを握りしめる。

 両腕がブレイク・バレルに触れたことで本体にエレマフォトンが流れ出し、余剰分が排出口から吐き出され始めた。


 腰部にあるスラスターから反動を抑えるためにエレマフォトンと空気を軽く吐き出し、ガリスもその背中につき手を置いて支える。


「射撃体勢、よし。最終照準……固定、よし」


「一撃で決めろ。ツェルト」


「ええ。でも、もしもの時は盾役を頼みますね」


「わかっているさ」


 答えたガリスに頭部アーマーの下で笑みを浮かべたツェルトはその口をきゅっと締めたかと思うとカウントを始めた。


「3……2……1……発射!」


 ブレイク・バレルの引き金を引いた。


 瞬間「バチィッ!」という音と爆発にも似た衝撃で木々の枝をへし折り飛ばしながらも射出された矢は真っ直ぐにアギルへと向かう。


 彼がその攻撃を一切考慮していなかったことなど表情が見えないアバードでもその驚いた様子で振り向いたところからわかった。


 超速というにふさわしい一撃はアギルの目前で爆発、勢いよく網が広げられた。


◇◇◇


 ツェルトたちがブレイク・バレルから一撃を放つ寸前もルカたちは白いアバードとの戦闘を続けていた。


 ルカの振り下ろされた剣をかわし、距離を取ろうと下がる。

 しかしその後退をリヴァレは許さない。


 繰り出したのは長槍の一撃。それを援護するようにルカは持っていた剣を投げた。


 それらの攻撃は今まで同様に回避されるだろう。

 だが、回避先は限られている。


(その隙をーー)


(ーー俺が穿つ!)


 新たに作り出したレイピアを作り出した時、2人には聞きなれない「バチィッ!」という音と爆風が林の方から響いた。

 さらに続いて何かが勢いよくアギルへと飛翔する。


 かなり驚いたことだが2人は作戦通りブレイク・バレルが使われたことを即座に理解した。


 そのためすぐに意識を白いアバードへと向け直したのだが、その相手は今までにない動きを見せた。


 攻撃をかわすことも防ぐ時間を惜しむようにバッとアギルの方へと向かったのだ。

 そのためルカの剣は背部の右バインダーを穿ち、リヴァレの一撃は左足の外骨格を削る。


 しかし、それらを気にする様子もなく白いアバードは飛びアギルを突き飛ばすと網に捕らえられた。


 それの行動に一番驚いていたのはアギルだ。

 彼は動揺した様子で白いアバードへと言葉をかける。


「き、貴様、そんな指示は……」


 白いアバードはアギルの無事を確認すると網を鎌を作り出し、切り捨てた。


 一連の行動を見てリヴァレが呟く。


「庇った? アレにそのような意思が?」


 ルカもそのことが意外に映り同じ感想を得たがすぐにある答えに行き着いた。


「……あ」


 それに気づいた後は速かった。

 リヴァレの静止の声よりも速くエレマフォトンを吹かすと急降下を始めた。


『あの人のいる場所が私の大切な場所』


 白いアバードであろう少女は夢の中でそう言っていた。

 もしその通りならばその大切な場所へと向かった危害を放置するわけはない。


 ある程度降下し、ガリスたちがいる林の前でルカは振り向いた。

 視界に映るのは青い空ではなく、白いアバードの群青の瞳だった。


 次いでルカに訪れたのは正面に勢いよくぶつかられた衝撃と地面に叩きつけられた痛み。


「うっ、ぐっ……!」


 時間差を置かずほぼ続けて訪れた痛みに悶絶しながら上半身を起こそうとしたが、馬乗りになった白いアバードの右手が首を掴み抑えつけた。


 締め上げるのではなく、上からかかる押しつぶさんとする強い力に意識が遠のきかけるが、どうにかそれを繋ぎとめながら左手を伸ばす。


 しかし、そのわずかな抵抗も白いアバードの左手により地面に押し付けられた。


 遠くで自分を呼ぶ声が聞こえるが、武器を作り出す余裕もない今のルカに答えることなどできるわけもない。


 そんな中でも状況は変化していく。

 白いアバードのバインダーが一段と大きく開いたかと思うと白い帯のようなものが伸び、ルカ共々にドーム状に覆い始めた。


(これ、が……繭!?)


 そう悟ってももう時はすでに遅い。

 もはや8割近くが白い帯で覆われる中でわずかな隙間から見えたリヴァレに言葉を向けることも出来ずにルカは白いアバードと共に繭に包まれ、意識も失った。

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