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オルタナティヴ・アバード  作者: 諸葛ナイト
第3章 黒と白

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見つけた自分、掴んだ目的

 ルカは唐突にリヴァレの姿が眼前から消え、その気配が後ろに移ったことに驚愕し目を見開いた。


「ッ!?」


 振り向きながら剣を横へと振りギリギリのところで攻撃を受け止め、金属音を辺りに響かせる。


(なんだ!? まるで見えなかったぞ!)


 初手で剣を打ち付け合ったが力勝負では不利と即座に悟り、距離を取った。

 かと思えば一瞬で後ろに回り込まれていた。それがルカの認識だった。


 ともかく鍔迫り合いが不利なのはわかっている。


 距離を取るための行動として手始めにルカ・アバードはエレマフォトンを吹かしながら左足を軽く上げ、リヴァレ・アバードへの足へと落とす。

 丁寧に踵を向けた攻撃だ。


 すぐさまリヴァレはそれに反応、狙われた右足を下げた。

 そのタイミングでルカは尻尾を地面に叩きつけて支点とし、右足から回し蹴りを繰り出す。


 彼女もそれは距離を取るべきと判断、すぐさま後ろへと下がった。


 追撃を仕掛けるつもりだったが滑るように動いていたためとてもだがそれはできない。


(動きに隙がない。しかも、ウェスバの時よりもずっと速い)


 攻撃の隙を与えれば確実に押し負ける。

 悟ったルカは剣を逆手に持ち替えると槍投げの要領で投げ飛ばした。


 当然その見え見えの攻撃をかわす必要はない。

 リヴァレは左手の短剣で弾き飛ばした。


 予想した行動を見たルカは頭の中で組んでいた行動を実行に移す。


 地面を蹴り飛ばしながら作り出したのは長槍だ。

 両足を地面にベタ付けして急ブレーキ、長いブレーキ痕を尻尾のように引きながらルカは槍を突き出した。


 短剣はすでに彼が投げた剣に対応したためすぐには動かせない。

 結果的に長剣で刺突を逸らすしかなかった。


 ガリガリと槍の長い柄が削れるのも気にせずにルカはさらに距離を詰めると尻尾を伸ばす。

 狙いはリヴァレの左腕。


「なっ!?」


 驚愕の声を上げるリヴァレ・アバードの左腕にルカ・アバードの尻尾が巻きついた。


 それを振り払おうとするよりも早くルカはリヴァレを地面に叩きつけるとその場で引きずり一回転、さらにおまけと言わんばかりに地面に叩きつける。


 さらに続くと思われた攻撃だったが、リヴァレは逆手に持った剣を尻尾へと向けて突き出した。


 その一撃から逃れるためにルカは尻尾の拘束から解く。


 どちらが言うでもなく互いに距離を取ると構えを直した。


「容赦ありませんね」


「リヴァレさんも、それを望んでたでしょう?」


「ええ……!」


 再び距離を縮める剣を打ち付け合う。


 攻撃を弾き、弾かれる激しい攻防の中でリヴァレは口を開いた。


「あなたは、強い。だからわたしは、あなたを通して私を知れた」


「俺を、通して?」


「はい。私は怖かった。自分のために戦うことが、剣を取ることが、力を得ることが」


 私利私欲のために握る力はいずれ暴走する。

 その考えが強かったリヴァレは常に誰かのために戦うことを望んだ。


 誰かのため、であれば間違いなく誠実だと思ったからだ。

 もし自分のために力を使えばそれは不誠実ある、そう思っていた。


「ルカ、あなたは言いましたね。私はどこまでも誰かのために力が使えるのだと」


 ルカから問いかけられ、答えて、そして改めて考えてようやくその答えにたどり着いた。


 誠実かどうかは関係ない。


「私は、どれほどの苦難があろうとも、例え守れないものがあろうとも、悔やみながらも再び立ち上がることができる自分になりたい!

 誰かのためじゃない、自分のために。そのために私は力を持ち、技術を磨く!」


 その力強い言葉と共にルカを押し飛ばした。


 リヴァレの力を持つ理由の中心は他者ではなく自分自身へと移った。

 しかし、不思議とこれでいいと今は思えている。

 だからルカへも今のように胸を張って言うことができた。


 それを受けたルカがどんな表情を浮かべているかはわからない。

 ただ小さく笑ったのは息の吐き方でわかった。


「自分のために誰かを守る、か」


 構えを整えながらポツリと呟いたルカはリヴァレへと言葉を向ける。


「リヴァレさん。俺が話したかったのは目的についてです」


 リヴァレが息を飲むのがルカにはわかった。

 彼女としてはその答えによって彼への扱いが決定付けられる。


 そのせいかわずかな間をおいてから彼女は問いかけた。


「あなたの力を使う目的、戦う理由は?」


 初めてその問いを投げた時とほぼ変わらぬ口調と声音。

 あの時は何も返せなかったが、今は違う。


「俺は、俺が帰る場所を守りたい。

 そこにいる人も、場所も、俺が俺でいられる場所を守りたい!

 他の誰でもない、ただ自分自身のために」


 それがルカの見つけた目的だ。

 もう自分が過ごしてきた大切な場所を壊させない、誰も失わせないために立ち上がり、力を得る。


 そして、帰りを待つ者たちの元へと帰るための力を持つ。


「それは……」


 リヴァレは目指す自分になるために、ルカは自分が帰る場所を守るために。


 どちらも言葉は違えど守ろうとするものに大きな差はない。

 むしろ「自分のために誰かを守る」という点で共通しているところがある。


「俺は目的を言った、あなたの答えは!?」


 ルカからしてもリヴァレの顔はわからない。

 ただ、その頭が下がったのはわかった。


 固唾を飲み次の言葉を待つルカに対して小さな言葉が向けられる。


「リヴァレ……」


「え?」


「リヴァレ、で構いません。あなたは私の仲間です。

 共に同じ目的を持ち、戦場に立つ大切な仲間です。そのような敬称はいりませんよ」


 笑っているどころか喜んでいるように感じられたリヴァレの声にルカが返す答えは当然たった1つ。


「……っ、ああ!」


 互いに憂いはなくなった。

 あとはこの決闘に決着をつけるだけだ。


 それは2人とも同じ考えだったようでどちらが言うでもなく地面を蹴り飛ばすとエレマフォトンを吹かし、距離を詰める。


 ルカの突き出した槍をかわし、懐に入り込んだリヴァレが剣を下から振り上げた。


 上半身をそらすことで寸でのところでルカは回避。

 続けて槍を手放したルカは右足でリヴァレを蹴り飛ばした。


 攻撃の直後ということもあり回避は間に合わない。


「ッ!?」


 蹴りは見事にリヴァレを捉えた。

 それを示すように吹き飛んだがルカは確かな手応えは感じられていなかった。


(ダメだ浅い! 当たる寸前に下がられた!)


 リヴァレは1回転すると何事もなく着地、そのまま再びルカへと急接近。

 わずかでも時間を稼ぐために槍を投げ、剣を作り出した彼も足を踏み出した。


 投げられた槍を羽虫を払うように軽い動作で左手の短剣で弾き飛ばしたリヴァレは剣を振り下ろす。


 その一撃はルカが横へ振るった剣により受け止められた。


(くっ!? 乗せられた!)


 先ほどルカが投げた槍の狙いは左胸。

 明らかにリヴァレが短剣で対処し、そのまま攻撃に移ることを考慮し、狙った行動だ。


 高速戦闘でどうしても視野が狭くなる中での誘い。

 これに乗ってしまった時点でこの近接戦闘の流れはルカに取られた。


 そう悟ったリヴァレは短剣を投げてルカから離れようと後ろへ飛ぶ。


 当然、その行動もルカは予想していた。

 その証拠に右半身を引いて短剣をかわすとそのまま通り過ぎるはずだったそれを尻尾で器用に絡め取ると空中に投げた。


 リヴァレの意識が一瞬、その動作に持っていかれた隙にルカは短剣を作り出し投擲。


 即座にその攻撃に意識を戻し、右腕の外骨格で弾いた。

 両腕の外骨格は飾りではなく、実際に盾のように硬いためダメージらしいダメージは受けていない。

 しかし、その防御のせいで後退行動は止まった。


「ッ!!」


 リヴァレが歯をくいしばる中でルカは空中に投げた短剣を掴み、その切っ先を首に向けて静止した。


「……決まったな」


 ミカエラが呟いたその時、上空から声が降りる。


「決着! 勝者ルカ!」


 その後に上がったのは心の底から湧き上がる感想を示すような感嘆の声だった。

 それからポツポツと拍手が波及し、歓声が上がった。

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