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オルタナティヴ・アバード  作者: 諸葛ナイト
第2章 クロスブレン

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防衛準備

 ナテスアと分かれたルカとリヴァレは更衣室にいた。


 クロスブレン用の更衣室にはクローゼットが6つ壁に沿うように並べられ、その向かい側には長テーブルと長椅子2つ、円卓と椅子2つがある質素な作りだ。

 更衣室として作られた部屋だが、待機室や簡易的な状況説明を行う場としても使われている。


 そのため、リヴァレのように長椅子で眠ることもやろうと思えばできる。


 加えて、格納庫と繋がっているため、今のルカのように慌ただしく動いている整備士たちの様子を見ることもできる。


(忙しそうだ……)


 声をかけようにも誰が見てもわかるほどに忙しそうにしているため、そうするわけにもいかない。


 出していた頭を引っ込めたルカは視線をリヴァレへと向ける。

 目を閉じているあたりおそらく仮眠を取っているのだろう。


 ちなみにガリスとツェルトは天使団や城塞にいる貴族たちへの説明と会議を行っているためこの部屋に来るまではまだ少し時間がある。


 手持ち無沙汰のルカがそわそわとしているのは目を閉じていたリヴァレには嫌という程にわかった


 無視しようかとも思ったが、どうも彼のせいで自分も落ち着かない。

 ため息をこぼすしたリヴァレは上半身を起こすと目を開いて言葉を投げる。


「少しは落ち着いたらどうですか?」


「え、あ、すみません。起きてたんですね」


「そりゃ、寝てませんから。

 目を閉じてたのはその方が休めるんです。お勧めしますよ。

 今のところ私たちができることはありませんから」


「それはわかってるんですけど……」


 その言葉の先を言うことはなく、彼は俯いた。

 ルカの心の内にあるその影を見抜いたリヴァレは単刀直入にそれをぶつける。


「怖いですか?」


「……はい」


 一瞬、ためらいの表情を見せたがルカは頷いた。

 そしてポツリとその恐怖をこぼす。


「人が死ぬかもしれないことも、守れないかもしれないことも。

 村をあんなにしたものを見て自分がどうなるかも分からなくて……」


 今不安に思っていること全てが自分に起因しているかもしれない。

 その恐怖が絡まり、巨大な固まりとなった結果のルカから落ち着きを奪っている。


 すっと目を細めたリヴァレはルカに諭すように息を吐きながら肩の力を抜いた。


「背負い過ぎですね。あなたは」


「そうでしょうか?」


「ええ、ウェスバを纏おうと力があろうと私にとってあなたは民です。

 目的を持たないあなたは守ることではなく、生きることを第一に考えてください」


 ルカは顔を上げたがそこには清々しいものがまるでなかった。

 その原因を彼は口にする。


「それは甘え、じゃないですか」


「生きることに甘えて何が悪いのです」


「えっ……」


「言ったはずですよ。何度も。

 あなたは民、民がより力をあるものを頼るのは当然です。

 そして、それは甘えではありません。私たちもあなたたちのような存在があって初めて戦えるのですからね」


「っ、はい」


「良い返事です。

 今のあなたの前に立つ者がいる。それは覚えていて下さい」


 ルカはそれに返事と共に頷く。

 そんな彼の姿を見てなんとなくだが体から邪魔な力が抜けたようにリヴァレには見えた。


 ひとまず安心したところで更衣室の扉が開かれる。


 扉を開けたガリスは部屋の中にいた2人を確認して口を開いた。


「よし、2人ともいるな」


 彼の後ろにはツェルトとナテスアがいる。

 空気を張り詰めるためにパンッと手を叩いたナテスアは言う。


「よーし、なら早速説明といこうか」


◇◇◇


 ルカとリヴァレ、ガリスとツェルトで分かれて長椅子に座り、ナテスアはテーブルに広げられていた紙をトントンと示す。


「まず、これがミクズム周辺の地図だ。いいね?」


 その問いはルカに対してだ。

 すぐさまそれを察した彼は「はい」としっかり肯定した。


「では、ミクズムの戦力だが5部隊の60機、ルリナ様の護衛……つまりはミカエラが率いる1部隊12機、そして私たちヘルファイス研究局(ラボ)の4機だ」


「合計76機……防衛として考えれば十分すぎる数ですね」


 ポツリと確認するように呟いたリヴァレに続いてガリスが言う。


「ああ、現在東西南北にそれぞれ1つ、城塞防衛に1つ、ルリナ様の護衛に1つと割り振っている。

 私たちはルリナ様の護衛のためにミカエラの部隊に合流する」


「ミカエラさんの部隊に……」


「そうよ。本当なら私たちは遊撃隊として動きたいんだけど……まだデメヴィオにそこまでの信頼がないから」


「まぁ、当然ですね。歯がゆいですが」


 様々な言葉を飲み込んでいるのかリヴァレの眉間にはシワが寄っていた。

 それをほぐすようにナテスアは肩をすくめながら言う。


「しかし重要だよ。ルリナ様の死はこの国の未来に影を落とすことになる。そんな事態は避けなければならないからね」


 彼女がそう言ったところでルカが小さく手を挙げながら質問を投げかけた。


「あの、ルリナ様をミクズムから逃したりはしないんですか?」


 戦場になるかもしれない場所にルリナがいると言うのは12機のウェスバがあろうとはいえ、彼女の重要性を知ったばかりのルカにとっては不安を感じる。


 それに対して冷静に淡々とガリスは答える。


「しない。するとしても最悪ミクズムが陥ちる場合だな。

 正直どこから襲ってくるかもわからん敵、しかも今は夜だ」


「わざわざそんな視認性が悪い時に動くよりは周りを固めてた方が守りやすいのよ」


「はい。それに防衛戦で有利なのは防衛側、現状は私たちです。

 危険を犯す必要はない。今のところは、ですが」


「なるほど……」


 頷いたルカに続いてリヴァレが質問する。


「ミクズムの住人たちの避難は?」


「一応すでに始めているよ。みんなこんな時間なのに従ってくれてる」


「無駄な行動だった。と笑えればいいんだかな」


 頭を掻きながらぼやいたガリスにナテスアが4人の顔を見回しながら言った。


「さて、他に質問は?」


 部屋の空気がしんと静まり返った。

 4人は顔を見合わせるとそれぞれ頷いてナテスアへ視線を送る。


 それを受け取った彼女はさらに数秒待ち、本当に質問がないことを確認して口を開いた。


「よし、では行動開始!」


 解散とルカたちを応援するかのように彼女は手を叩き合わせて乾いた音を響かせた。

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