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オルタナティヴ・アバード  作者: 諸葛ナイト
第2章 クロスブレン

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気付いた事

 陽が傾き始めて辺りがオレンジに染まり始めた頃、リジオ村から少し離れた平野でクロスブレンの面々は合流していた。


 それぞれデメヴィオから降り、顔を合わせて報告を上げあっていた。


 ルカたちの報告を聞いたガリスは感想をポツリと呟く。


「ふむ、やはりそう簡単ではない、か」


 あれからルカとリヴァレは村の調査を行なったが、天使団の先行調査以上のことはわからなかった。


 何事もなかったのはドラゴンを探していたガリスたちもそうだが、そちらは朗報ではある。


「少し心配だったんですけど、ドラゴンはいなかったようで安心しました」


「そうね。すぐそこに脅威がないなら調査に集中できるわ」


「とはいえ、です。

 正直なところ取っ掛かりを見つけるつもりでいましたが、それすらも現状はかなり厳しいですね」


 率直な感想をリヴァレがこぼしたのをきっかけに全員の表情に影が落ちる。


 手がかりがないだろうことは薄々ながら察していた。

 それでも来たのは実際に見ればまた新たな発見があると思ったからだ。特にそこに住んでいたルカならばまた別の違和感を覚えるのでは、と。


 しかし、それはなかった。


 重い空気が広がる中、唸っていたルカはふと呟く。


「そういえば、なんで俺の家をあんな徹底的に壊してたんだ?」


「それは……いえ、そういえばそうですね」


 誰も深く考えてはいなかったがルカを狙っていたとはいえ家を徹底的に破壊する必要性はない。

 むしろそんなことをすれば「狙っている」と言っているようなことで警戒を助長する行為だ。


「ふむ。まるでーー」


「ーールカ君を挑発しているような」


 それに行き着いた瞬間、ルカは何かに弾かれたかのような勢いで空を見上げた。


(なんだ? この感覚……)


 不思議な感覚だ。


 混沌としていたり、邪悪なものではない。例えば小さな子どものような気配だろう。

 しかし、武器を構えろとルカの本能は告げている。


 アレはそんなものではない、とーー


 妙な親近感を覚えるが、それをもう1人の自分が全力で否定していた。


 気配の正体についてはよくわからないが、間違いなくこの夕闇に染まる空のどこかになにかがある。


 そう確信するルカへとなにも感じていないリヴァレが問いかけた。


「どうかしましたか?」


「なにかいます。たぶん、こっちに来る」


「なにかがたぶん、ですか。随分とふわふわとした言葉ですね」


「すみません。でも、うまく説明できる言葉が見つけられなくて……」


 申し訳なさそうに答えたルカをそれ以上追及することがリヴァレは出来ず、かわりに空を見上げた。


 そこにあるのは薄闇。

 リヴァレには何かを見つけるどころか動いているものを見つけることも出来ない。


(ん?)


 半ば諦め気味に見ている中、リヴァレがそれを見つけたと同時にツェルトは指をその方向に指した。


「南の方に……!」


 ツェルトの指した方向にあったそれらを見つけたガリスは即座に指示を下す。


「全員、ウェスバを装備!

 ルカ、リヴァレは前衛、私が中衛に入る。ツェルトは後衛だ」


「「「了解!」」」


 答えるとそれぞれウェスバを装備。

 ルカとリヴァレは背部担架ユニットからブレード、ツェルトとガリスは狙撃杖を手に取った。


 彼らが装備から配置まで終え、宙に浮かんだころには向かってきていた存在の形をしっかりと認識できるまでの距離しかなかった。


 近づいてきたのは全長は約4メートルほどのドラゴンだ。

 少し細い胴体には4本の足がある。後ろ足は筋肉質で太く大きいが反面、前足はかなり小さくこじんまりとしていた。


 そんな小さい前足の代わりと言わんばかりに主張するのは大きな2枚の翼と長い首に尻尾、そして側頭部のエラだ。


 そのドラゴンの名はルカン・ドラゴン。


 ワイバーンほどでないにしてもそこそこポピュラーなドラゴンだが、クロスブレンの彼は一様に疑問の表情をアーマーの下に浮かべていた。


「なぜ、ここにルカン・ドラゴンが?」


 ブレードを中段に構えたリヴァレが問いを投げた。

 それを拾ったのはツェルトだ。


「そう、ね。あれの生息域は水辺……湖とか海辺りのはず」


 彼らが疑問を覚えたのは生息域の違いだ。

 この辺りにルカン・ドラゴンが棲めるほどの大きな湖や海はない。


「私たちが調査した時にはそれらはなかった……。

 洞窟も見たがあれが住処とするには少々狭かった」


「つまり本当に今、ここに来たということですか。

 嫌な偶然ですね」


 リヴァレの苦笑いと共に発せられた言葉にガリスが「そうだな」と首を縦に振る。


 しかし、ルカだけはその疑問の表情が晴れることはなかった。


(本当に、あれが気配の正体?

 いや、違う。もっと別だった。子どもみたいで、どこか俺とーー)


「ーーッ!?」


 理性か本能かは分からなかったが思考に急ブレーキがかかり、そこから先は言葉になることはない。


(な、ん……。俺は今、何に気付きかけたんだ?)


 たどり着きかけた朧げな答えにルカが狼狽する中、リヴァレが声を上げる。


「ルカ! 訓練どおりにやりますよ。やれますね? やってください!」


「は、はい!」


 自分が感じた存在については後回しだ。

 今は目の前の明確な脅威をどうにかするのが先だろう。


 先行するリヴァレを追ってルカもスラスターを吹かせ、担架ユニットからブレードを取り出した。


 そんな2人の間をガリスとツェルトが放ったのだろう光弾が複数通り抜ける。


 デメヴィオの2倍もある図体相手に外すわけもなく、それらは全て命中。

 しかし、ルカン・ドラゴンの鱗に傷が入っただけでまともなダメージはない。


「固いな……」


「まぁ、海に潜ることもあるドラゴンですし」


 ボヤいたガリスに肩をすくめたツェルトは2人へと声を飛ばす。


「ルカ君、リヴァレちゃん!」


「問題ありません! ルカ!」


「はい、右から行きます。トドメは頼みます」


 ルカは言うとリヴァレを追い越すと右へ膨らみながらルカン・ドラゴンへと向かった。


 光弾の群れのダメージはさしてないのは見ればわかる。

 だが、その巨体に衝撃を与えて動きを止めることはできていた。


 そんなドラゴンへとルカはブレードを斜め振り下ろす。

 その一撃は首の付け根から脇腹へと抜け、切り傷を付けた。


「ッッッ!!」


 ルカン・ドラゴンは悶絶の声をあげるとエラを開いた。

 そこからは空気が勢いよく抜けるような音がなっている。


「攻撃、来ます!」


 言いながら目の前にある開かれた大きな口を凝視したままルカは後退、距離を取る。

 その奥が一瞬歪んだように見えたのと同時、一息に下降。


 ちょうどその時、先ほどまで彼がいた場所を水色の光が通り抜けた。


(よし、動きは読める。ちょっと強いワイバーンとそう変わらない)


「リヴァレさん!」


「はい。十分ですよ!」


 答える声は上の方から聞こえた。

 ルカン・ドラゴンがルカが衝突している間に上昇していたリヴァレ機は捻りながら下降を始める。


 狙いは少なくとも他の部分よりも数段柔らかい左翼の付け根。

 迷うこともなくそこへとリヴァレ通り抜きざまに剣を振った。


 その一撃は的確に狙った場所を捉えていたらしく、ドラゴンからは悲鳴の声が上がった。


 攻撃を繰り出したリヴァレ機を追って下降しようとしたドラゴンへと向けてガリス機、ツェルト機は光弾を放つ。


 彼らの狙いどおりドラゴンはその場に固定させられた。

 大きな隙が生まれた背中に迫るのはルカ機。


 急接近したそれは右翼を掴むとブレードを逆手に持ち替えた。

 そして、リヴァレ機が切りつけた左翼の付け根に迷うことなく突き刺した。


「ーーッッ!?」


 その一撃は肺を貫いたようでルカン・ドラゴンを血を吐き出しながら水っぽい叫び声を上げる。


 痛々しさを感じる鳴き声を無視するようにリヴァレ機は前進、ルカ機が胸部につけた傷にブレードを突き立てた。


 2人はブレードを抜き取ると担架ユニットから狙撃杖を取り出し、それから光弾を放ちながら後退。

 それに合わせてガリス機、ツェルト機も光弾を放つ。


 4機のデメヴィオの光弾の群れを傷だらけの体で耐え切れるわけもなく、絶命して浮力を失ったルカン・ドラゴンは地面へと落ちた。


 力尽き地面に落下したドラゴンの近くに降下したルカはリヴァレと共にゆっくりと近づく。


「……死んだ、ようですね」


「よかった。みんな怪我もなくて」


 緊張を解くためにルカは息を吐く。

 再び空気を吸った時に妙な違和感を覚えた。


(ん……?)


 感じたのは匂いだ。

 血の匂いとはまた別に嗅いだことがない匂いがかすかにした。

 頭の中に残るどこか懐かしさすら感じるような不思議な匂い。


「ルカ、また何か見つけましたか?」


「あ、いえ、今度こそなんでもありません」


「そうですか。では、そちらを持ってください。一応、運びましょう」


「わかりました」


 ルカは疑問を抱えながらも答えてリヴァレが指した方へと駆け寄った。


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