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オルタナティヴ・アバード  作者: 諸葛ナイト
第2章 クロスブレン

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クロスブレン(上)

 翌日の朝。ミクズム城塞にあるヘルファイス研究局が所有する格納庫にルカたちはいた。

 今日の仕事が始まった頃で辺りには整備士であろう者たちがすでに何か作業を始めている。


 そんな中でも構わず事情を説明したガリスは締めくくるように言う。


「ーーと、いうわけで本日付けで我がクロスブレンに所属することになったルカ君だ」


「ルカです。よ、よろしくお願いします!」


 ガリスの紹介を受けたルカは緊張した面持ちで言うと頭を下げた。

 再び上げた先には2人の女性がいる。


 そのうちの1人、どこかおっとりしているような女性は「わー」と嬉しそうにパチパチと拍手をして笑みを浮かべると言葉をかけた。


「私はツェルト・カジャスレイです。ツェルトでいいですよ。よろしくね、ルカ君」


「は、はい。えっと、ツェルトさん」


 ルカに名前を呼ばれたツェルトはただでさえ柔らかな印象を受ける顔を笑顔いっぱいにして頷いた。


 次に視線をツェルトの隣にいる小柄な女性へと向ける。

 付け加えるのならば彼女は腕を組み、不機嫌であるのを体全体で漂わせていた。


 オレンジの髪を肩上ほどで切り揃え、彼女の信念でも表すような綺麗な赤の瞳で頭半分ほど上にあるルカを見据えながら渋々といった様子でポツリと言った。


「……リヴァレ・コムラートです」


「え、えっと、リヴァレさん?」


 それに特別答えることもなく、リヴァレはガリスへと視線を向けた。


「彼がクロスブレンに入った経緯と理由はわかりました」


「だが、納得はできない?」


 リヴァレの思考を先読みして出されたガリスの言葉だったが、彼女はそれに驚いた様子もなく頷いて続ける。


「第1に強いと言ってもそれはアバードでの話です。実際にウェスバが使えると証明されていません。

 それに試験部隊とはいえ、個人がいくら強くとも連携が取れないのであればむしろ邪魔です」


 まくしたてるように毅然とした態度で言い並べたリヴァレにガリスは肩をすくめ、わざとらしく悲しむような表情を作りながら問いかけた。


「私の目を疑う、と?」


「そ、そういうわけではありませんが……」


「まぁ、リヴァレの懸念は私も多少抱いているが、その辺りのことは教えてやればいい。

 彼は少なくともできないのではなく、知らないのだからな」


「教える、ですか……」


「ああ、ちょうどよく今日組み上がった新型ウェスバが2機ある」


「あ、だからいつもの部屋じゃなくて格納庫に集合だったんですね」


「そういうことだ。そして、その機体が……こっちだ」


 言いながら歩き出したガリスに続いて彼らが向かったのは格納庫の左隅。

 たどり着いたそこには2機のウェスバが格納状態で置かれていた。


「あっ、これって」


「ああ、ルカは局長が使ってたのを見ていたな。

 これが新型ウェスバ、デメヴィオだ」


「デメヴィオ……」


 ポツリとその名前を呟いたリヴァレと改めてじっと見つめていたルカへとガリスは告げる。


「君たちには今日からこれに乗ってもらう」


「きょ、今日から!? いや、君たちって……」


 そこで言葉を切ったリヴァレはルカを一瞥すると驚愕がありありとわかるほどに目を見開き、言葉を再開させた。


「私はともかく、彼もですか!?」


「ああ、そうだ」


 即答で頷かれた彼女は驚愕から動揺へと色を変えて続ける。


「ちょっ、ちょっと待ってください!

 彼には速すぎます。まずはデメテリスに乗せてウェスバに慣れさせるべきです!

 それに、いきなり信用できない彼を新型に載せるのは!」


「操縦系統は変わらん。慣熟させるということならば2機の間に差はない。

 それにデメヴィオはあと2機生産され、情報収集を行うことになっている」


「後々乗るならわざわざ機種転換なんてさせずに最初から乗せてしまおうって話ですね」


「察しがいいな。ツェルト」


 いくら操縦系統は変わらないとはいえ、ウェスバには道具らしく癖がある。

 当然デメテリスとデメヴィオにもあるはずだ。


 その差に慣れるための機種転換には大抵1、2週間程度の時間を必要とする。

 加えてルカにはそももそもウェスバに慣れる時間まである。


 大抵は1ヶ月かかるものだが、実際ルカがどれほどの時間で乗りこなせるようになるのかは読めない。


 追加の機体が来るまでデメテリスで遊ばせ、その後に乗り換えれるとなるとどう早く見積もっても大体1ヶ月半。

 他にもいくつか理由はあるがそれほどの時間をかけるよりは最初からデメヴィオに乗せた方が良い、と判断したのだ。


「それに、信用なら私と局長がしている」


「で、ですが……!」


 説明はわかる。理解できるがルカは天使団員になるための訓練課程を何1つ終えていない。

 数回の戦闘実績だけで彼の能力を認めるなどリヴァレにはとても出来ないことだった。


 そんな彼女の心情や見方を言葉の端から感じたガリスはルカへと視線を向けながら言う。


「彼はもう我々の立派な仲間だ。守るべき民ではなく、隣に並ぶ者だ」


 それを受けてなお不服そうな表情を浮かべるリヴァレへと視線を戻して彼は続ける。


「リヴァレ、君に彼の訓練を任せる。同じ機体に乗る者同士であればより見極めもつけられるだろう」


「……もし、見極めた結果として私が仲間として見れないのであれば?」


「その時は私や局長に伝えればいい。然るべき処置を下そう。ルカもそれでいいか?」


 ルカにとってはこんな所で躓くわけにはいかない。

 リジオ村を襲ったものと1番接触できる場所は今の所ここしか知らず、他の部隊へ行く手立てもナテスアの助けがあったとしても確実に行けるとは言い切れないからだ。


「はい!」


 ゆえに短くともはっきりと即答した。

 それを見たガリスはリヴァレの方を向いて目線で答えを求める。


「わかりました」


 話がまとまったのを確認して彼は場の雰囲気を切り替えるように両手を合わせ、乾いた音を辺りに響かせた。


 そして、一段ほど口調を明るくさせて告げる。


「では、我々はデメテリスに乗ろう。

 それまで2人は整備士たちから話を聞いていてくれ」


 それぞれが頷いたのを見たガリスの号令を受けて彼らは与えられた指示に従い行動を始めた。


◇◇◇


 デメヴィオは現在の主力であるデメテリスの後継機だ。


 新型ということでデメテリスと比べて全体的に引き上げられた性能にまとまっている。

 大きな違いといえば近接戦へと比重を置いていることだろう。

 そのため各部の反応速度を上げていたり、エレマフォトン噴出口(スラスター)の増設に機体強度も高めている。


 大まかに整備士たちの説明をまとめるとそのようなものだった。


 どれほどの変化があったかなどルカにわかりようはない。なにせこれが彼の初めてのウェスバだからだ。

 緊張と少しの興奮を胸に待機状態のデメヴィオに跨る。


「ウェスバ・クラッド」


 そして、はっきりとそう唱えて初めてウェスバを纏った。

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