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吸血鬼ちゃんと月夜の剣  作者: ルゥ
2/2

疑念

 ────────


 ───────


 ──────


 ─────?


 ────!


  ぽつり、と、私の頬に冷たい何かが垂れる感触。



「んぅ……は!?あれ……?生きてる…?」

 

  確か…藍夜と雨の中を歩いていたときに雷に撃たれたのが最後の記憶……だが、今私は意識を持っている。



「そうだ、藍夜は!」


  はっとして周りを見渡すものの、青々とした葉を付けた木々が静かに揺れるのみで、人影らしきものは無い。

  微かに小動物や虫の鳴き声は聞こえるが、それだけだ。



「……藍夜……?居ないのかな…?」


  多分そうだろう、さっきは私はそれなりに大きな声で叫んでいる。もし近辺に藍夜がいるのなら、私の声を聞いて応えてくれるはずだ。

 


「はぁ…………というか、ここはどこ?」


  私が雷に撃たれた場所の近辺には、こんなに木々が生い茂る場所は無い。あるとすれば近くの神社あたりだろうが、それでも見える範囲に人工物が無いということは考えづらい。いくら広い敷地でも、石畳くらいはあるだろう。

  だが、それよりも、だ。



「……ヒグマとか来たら怖いなぁ……流石に刀が無いと……」


  丸腰では流石に勝てるとは思えない。木刀でもあれば、胸か頭をド突いて逃げられるのだが、素手ではそれも叶わないだろう。せいぜい爪で引き裂かれるか、牙で喰われるのがオチだ。

  私としても死んでやるつもりはないので、木の枝でも使って徹底抗戦してやるが。上手くいけば、目玉の一つや二つ持っていけるだろう。



「お、これは良さげかな」


  当てもなく歩いていると、両端で太さの違う枝を拾う。

 RPGであれば、『きのえだを手に入れた!』なんていうログが表示されているかもしれない。

  …………ふ

 


「ふふ、あははっ!」


  一人で勝手にツボる私。






「はー、くだらな。さて、これからどうするか……」


  少し笑って緊張を飛ばすと、これまでと同様に歩き続ける。特にアテはないが、1箇所に留まって飢えるよりはマシだろう。それに川や水溜まりすら見つけられていない。

  幸いにして今はそこまで気温が高いというわけでもないが、それでも脱水にならないわけではないので水場や水分の多い食材の確保は最優先だ。









  それから二時間程歩き続け……



「いやほんと、どこなのここ……」



  アラスカの奥地とか言われても驚かないレベルで自然がひろがっている。


  このままでは野生化するのではなかろうか?


「ワイルド 女子高生……ゴリラにはなりたくないぞ私」

 


  くだらないことを考えつつ結構な時間を歩いた筈だが、先程も言った通り人工物が何も無いのはおかしいだろう。

  白神山地など世界遺産に指定されている区域ならば納得出来るが、あの近くにそんな場所は無い。


  ……雷に吹き飛ばされて白神山地に飛ばされた?

  そんな馬鹿な。 飛ばされるわけないだろう。

  それに、吹き飛ばされる前に失敗した料理もかくやというような黒焦げの塊の出来上がりだ。生存確率は0に等しい。

  よしんば生き残ったとしても落下の衝撃でお陀仏間違いなしなので、その可能性は考えづらい。

 

  ………………今思い出したが、何故か私は無傷なのだ。服や髪くらい焦げていそうなものだが、外傷は皆無である。

  ふと思ってスマホを取りだし起動すると、普通に起動した。

  どれだけ山奥なのか圏外表示がされており、あまり機能は使えなさそうだが。


  鞄も無事、スマホも無事となると、いよいよもって訳が分からなくなる。雷に撃たれたとするなら、通電して故障しているのが普通だろうに……



「まぁ、無事だからいいかな」


  あーだこーだ考えているが、それが真理だ。

  結局のところ、生きていればいい。命があれば可能性がある。死んでしまえばもうなにもかも終わりなのだから。


  だが、こんな山奥で食料も水もなく朽ち果てる可能性があるのも事実、私としてもそろそろ歩くのは疲れた。



「ちょっと休むかな……」


  自分の足音を消し、周囲の自然音に耳を澄ませる。

  もし近くに川があれば見つけてやろうということだ。恐らくそう簡単にはいかないだろうが、見逃すよりはマシだ。

  ついでに足も休めてやろうという魂胆である。

  すると、微かに生物のたてるであろう音が聞こえてきた。



「んーー……叫び声…?いや、断末魔というべきかな…

 少なくとも人じゃないっぽい…」

 


  かといって、獣かと言えば……少し違うような気もする。

  ………いや、これはどちらかといえば……



「…………いや、まさかね……物語じゃああるまいし……」


  思い当たった可能性を頭から振り払いつつ、心臓の鼓動が早まるのと共に汗が出るのを感じた。

  万が一に備えて周囲に意識を巡らせると、先程から持っている枝を両手で握り締める。

  最悪……本当に最悪の状況なら…………戦いになるだろう。



「出来ることなら……外れて欲しいな……」

 

 




  ただ、その願いは叶いそうに無かった。

  私が『それ』を知覚したのは、他ならぬ血の匂いを感じたからだ。


  そして───────────────















「えぇ……何があったんですかね……」



 

 

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