62.理想の世界(始)
「約束の地……?」
訝しげにつぶやくカルラ。
それもそのはず、この言葉は元々彼女から出たもんだ。
彼女が夢の中で何度も見てきたというものだ。
「うん、あそこが、本当の約束の地っぽいんだ」
「本当ですか!?」
「うん」
俺はすこしかんがえた。
もしも本当にそうなのだとしたら……。
俺は長に振り向いた。
「ごめん、あそこにカルラと二人っきりで行ってみたいんだ」
「わかりました。どうぞ行ってらっしゃいませ」
長は理由を聞くことも、食い下がってくることもなく、あっさりと俺達を送り出した。
「私は村に戻って、大地が復活したことを知らせて参ります」
「うん、わかった」
そう言って、長と別れた。
長は飛び上がって、来た道を引き返していく。
それを見送って、後ろ姿が見えなくなるのを待ってから、カルラの方を向く。
「じゃあ、ぼくたちも行こっか」
「はい!」
カルラをさっきと同じように、抱きかかえて飛びあがった。
緑がよみがえった大地。
その大地に一点だけ、天まで突き抜けるような光の柱。
そこに向かって飛んでいく。
「……なんか」
「うん?」
「なんか……ドキドキ、ううん、わくわくします」
「わくわくなの?」
「はい、わくわく……だと、思います」
確信のない口調のカルラ、たぶん、今までにはなかった感覚だから困惑しているんだろう。
その感覚を「わくわく」だというのなら、カルラが今感じているのはかなりプラスな感情。
夢でずっと見ていた「約束の地」。
それに近づくにつれ「わくわく」するようになる。
俺までわくわくしてきた。
一体何が待ち構えているんだろうか、とわくわくしてきた。
程なくして、光の柱の所にやってきた。
「光……だけ?」
降り立ったカルラが、光る柱を見て困った顔をした。
そこは、何ら変哲の無い場所だ。
まわりと同じ、よみがえったばかりの、一面に広がる草原の一部。
そこに、地面から光の柱が立ち上っているだけ。
何もないところから光が立ち上っているのだ。
光の柱の中も、外も。
地面も上空も。
何もかもなくて、ただただ、光る柱があるだけだ。
「どういう事なんでしょうか」
「そうだね……」
俺は慎重に手を伸ばして、光の柱に触れた。
「あっ!」
カルラが声を上げた。
俺も声を上げそうになったのを、とっさにこらえた。
手はすんなりと光の柱の中に入った。
何かに触れた感触はなく、熱くも冷たくもなく。
すんなりと光の中には入れた。
が。
光の中に入っている部分は見えなくなった。
手を水の中に入れると、水の中にある部分は歪んで見える。
そういうのと同じように、しかしもっと変化が大きく。
手を光の中に入れると、光の中にある部分はまったく見えなくなった。
手が光の柱によって切断されているような、不思議な光景になった。
「だ、大丈夫ですか神様」
「うん、なんともない。ほら」
俺は一旦手をぬきだした。
光の柱から出した手はなんともなかった。
もう一度入れてみた、今度は手首まで光の柱の境目に突っ込んだ。
すると、手首からすっぱりと切れているような不思議な見た目になる。
「不思議だね」
「そうですね……あっ」
カルラは手を伸ばしたが、バチッ! 放電がおきて、光の柱に手を弾かれた。
「大丈夫なの?」
「は、はい! ちょっとビリビリするだけです」
「触れないの?」
「たぶん……あっ」
もう一度、今度はおそるおそるって感じで手を伸ばすカルラ。
するとさっきと同じように、バチバチと放電がおきて、彼女の手を弾き飛ばした。
「私じゃダメみたいです」
「約束の地なのに?」
「約束の地は神様のためにあるんです、きっと」
光の柱に触れられない事に意気消沈する事もなく、カルラはむしろテンションを更に高くしてそんなことを力説してきた。
「そうなのかな」
「きっとそうです」
「そっか……ちょっと中に入ってみる」
「はい!」
カルラに見送られて、俺は深呼吸一つしてから、えいやっ! って感じで光の柱の中に入った。
手を入れても何も起こらなかったが、見えなくなると言うだけで、全身が入るのには勇気が必要だった。
全身が入った瞬間、光が溢れて目の前がまったく見えなくなった。
手を目の前にかざして、目をきつく閉じる。
光の奔流が去っていくのをじっと待つ。
数十秒くらいしただろうか、光が徐々に収まっていった。
目を開けてられる程度にまで収まってくると、俺は目を上げた。
「こ、ここは……」
まわりの景色の変わりように思いっきり驚いた。
まず――
「空の上?」
とおもった。
エヴァに乗って飛んだときに見てきた雲の上の景色によく似ている場所だ。
そしてその雲の上に、台、のようなものがあった。
平べったい台だ。
普通の建造物ならば下に支える柱なりあるものだが、この「台」は一枚の巨大な板がそのまま空中に浮かんでいるという不思議な場所だった。
そして、台の真ん中に巨大な石碑があった。
石碑には不思議な紋様が刻まれていて、中心に大きな丸と紋様、まわりに十二個の小さな丸と紋様が刻まれている。
紋様はそれぞれが違うものになっている。
もっとよく見ようと近づくと、真ん中の大きな丸が光り出した!
「これって……」
大きな丸から十二本の光る線が延びて、十二の小さな丸に向かったが、丸は何も反応することなく、やがて十二本の線が消えて、大きな丸の光も消えた。
「……まさか」
ある可能性が頭に浮かんだ。
俺は水筒を取り出して、水たまりを作って、水間ジャンプで飛んだ。
飛んだ先は、新しく建てた図書館。
そこでヘカテー達がそのまま待っていた。
「神? そのお姿は……?」
「後で説明するから、ちょっと一緒に来てくれるかな」
「わかりました」
ヘカテーは何も聞き返すことなく、即答した。
彼女の手を取って、再び水に飛び込んで水間ジャンプでさっきの場所に戻ってきた。
「ここは……」
さすがにこれには戸惑ったのか、ヘカテーが驚きの顔でまわりを見回した。
「これも後で説明するよ」
「わかりました」
ヘカテーと共に石碑に近づいた。
すると、さっきと同じように大きな丸が光った、十二本の光る線が延びていった。
そしてここからがさっきと違った。
十二個の小さな丸のうち、真上にある一番目の丸が光って、線と――大きな丸と繋がった。
「やっぱり」
「神とわたくし、ということですか」
ヘカテーはさすがに頭の回転が早く、すぐに状況を理解した。
「そういうことみたい」
「ということは、神の使徒は十二人いる事になるのでしょうか」
「そうかもしれない」
俺は頷いた。
ヘカテーの推測はきっと正しいと思った。
次の瞬間、またもや光が溢れた。
目の前にある光景が広がった。
光景は一瞬だけしかみえず、すぐに空の上の台に――約束の地に戻ってきた。
「……今の、見た?」
「はい」
ヘカテーははっきりと頷いた。
彼女をして、少し驚いているように見えた。
一瞬だけだったが、俺達にははっきりと見えた。
光景としては、ほとんど見えなかった。
見えたのは、概念。
「神の元に十二人集まれば」
それで「理想の世界」になる。
「おともします、どこまでも」
「ありがとう」
約束の地。
残念だけど、すぐに何かが達成されると言うことは無かったが。
この地にやってきたことで、より「希望に満ちた未来」という概念を見つけて。
俺は、転生して一番、大きな目標を見つけたのだった。
この話で第五章終わりです、次から第六章です。
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