59.月
「……見える」
「え? な、なにを?」
戸惑うカルラ。
一方で、俺には見えた。
まるで導かれるように、背中の六枚羽を羽ばたかせて飛び上がる。
ものすごいスピードで飛び上がった。
世界中のどの鳥よりも速く。
同じ空の住人であるエヴァよりも更に速く。
そんな速度で、一直線に、真上に飛び上がった。
青かった空を突き抜けて、黒めく空に突入する。
それでもまた、飛び上がる。
「あ、あの――」
「え? ついてきたの?」
声に驚く。
真上に向かって上昇を続ける俺のそばに、ぴったりとついてくる感じのカルラ。
「は、はい! なんだか分かりませんけど」
「そうなんだ」
「あの、あなたが……神様なんですか?」
「うーん、まあ。そうだね」
俺は曖昧に頷いた。
海神ボディだからそれでいいんだけど、やっぱりまだ、自分から「神だ」って名乗ることに抵抗があった。
「じゃあ! いまから神様の世界に連れて行ってくれるんですか?」
「神の世界?」
「天界って言われている……違うんですか?」
「……どうなんだろうね」
俺は真上を見つめた。
今でも上昇を続けている。
飛んでいるのは、俺の力による物だ。
ただ、真上に向かって飛んでいるのは、何かに導かれて――という感じだ。
あそこに行かなきゃ行けない、そう感じたから向かってる。
力を使って、まっすぐ向かってる。
「あぅ……」
いよいよあたりが真っ暗になって、カルラが怯えだした。
「大丈夫だよ、僕がいるから」
「あっ……はい!」
カルラは一瞬だけ戸惑った後、大きく頷いた。
俺がいる――神がいる。
その事で、彼女は安心感を覚えたみたいだ。
「もしかして……」
「なあに?」
「あそこに行くんですか?」
「……なのかな」
俺は真上をみた。
青い空を抜けて、黒い空に突入した。
そしてその先には、徐々に大きくなって見える「月」があった。
そう、月だ。
いつも見えている夜の代名詞。
時には昼間でも見える、月。
上昇を続ける真上に、その月の姿があった。
だからカルラはそう思った。
「すごい……どんどん登ってる……」
「のぼってるねえ」
上昇を続けた俺たちは、そのまま月に到着した。
ぐるりと反転して、カルラと共に月に着陸する。
逆に空を見上げる。
そこに、さっきまで俺達がいた、青くて美しい大地があった。
逆に月は殺風景だった。
どこまでも広がる荒野。
岩と土しか見あたらない無機質な感じの世界。
「殺風景だね、ここ」
「は、はい」
「まさか月に来てしまうなんて」
「は、はい……」
「そこ、なにをしている!」
ものすごい剣幕で怒鳴られた。
声の方を向くと、男がこっちをにらんでいた。
俺たちをにらむ男は――背中に二枚の翼があった。
「翼だ……」
「神様と同じ……」
カルラのつぶやき通り、男の背中にある翼は、俺の背中にある翼ととてもよく似ていた。
違うのは俺のは六枚の翼で、男のは二枚しかないということだ。
その事を、男も気づいた。
「翼が六枚――お前、何者だ!」
「何者って言われても……」
どう答えたらいいんだろうか。
神だ、っていうのは違う気がする。
「おいいたか!」
更に別の男の声がした。
直後、ぞろぞろと集まってきた。
最初の男と同じように、背中に二枚の翼をもつ男達が次々と現われた。
総勢十人、現われて、俺とカルラを取り囲んだ。
その男達の「色」が見えた。
全員が――黒だ。
「なんなんだその少年は」
「見ろ、背中に翼が――六枚もあるぞ」
「どういう事だ?」
人数は増えたが、「俺の事」を知っている者はいないようだ。
ここに来たのは間違いだとは思わなかった。
背中に翼を生やした人間は他に見たことない。
俺から翼が生えた瞬間、ここに来なきゃいけないと思い、来てみたら翼が生えている者が他にもいた。
だから、ここに来たのは間違いではないはずだ。
俺がそうやって納得していたが、俺たちを囲む男達はむしろ警戒心を強めた。
「どうする」
「捕まえて、長に判断を仰ごう」
「そうだな」
男達は一斉に頷いて、武器を抜き放つ。
それを構えて、俺に向けてくる。
すると――爆発した。
俺に向けた武器が、同じタイミングで一斉に爆発した。
剣やら槍やら、本来は「爆発」とはまったく無縁の武器が、一斉に爆発したのだ。
「な、なにをした!」
「僕はなにもしてないけど」
「でたらめを言うな! なにもしないでこうなるはずがないだろ! 我々の武具は祝福を受けた物だ、なにもしないでこうなるはずがないだろう!」
「そう言われても……」
なにもしてない、としか言い様がない。
実際に、本当になにもしてないんだから。
「あ、当たり前だよ!」
俺のそばで、若干及び腰ながらも、勇気を振り絞って――って感じでカルラが男達に向かって言いはなった。
「神様に武器を向けるなんて罰当たりな事をしたんだから当たり前だよ!」
「「「神だって?」」」
男達は驚き、一斉に俺をみた。
驚きが、敵意に取って代わる。
黒だった色が、一斉に揺らめきだした。
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