30.ここ掘れワンワン
月間一位との差が800ポイントになりました、明日の朝夢の月間一位目指して更新頑張ります!
夜、屋敷の書斎で、一日のほとんどの活動を終えた俺は、最後の「テスト」を行っていた。
机の上に置かれた虫かごから蜘蛛を一匹とりだして、同じくあらかじめ用意したナイフで、まずは首を落とす。
その後首をランタンの火につけて、完全に炭になるまで焼き尽くす。
そうしてから――。
「レイズデッド」
大地の白の魔力を取り込んで、俺の黒の魔力と合わせる。
自分の最大魔力の倍の魔力を使って、蘇生魔法を蜘蛛にかけた。
魔法の光は蜘蛛を包み込んで、しばし。
「……これだとだめか」
首を落として絶命した蜘蛛からなにも変化が起きる事なく、死んだまま動かなかった。
そして、魔法の光も消える。
レイズデッド。
蘇生の古代魔法は完全な不発に終わった。
この一週間、俺は毎日のこの時間に、レイズデッドのテストをしていた。
レイズデッドの特性、それは一気に全魔力を使い切ってしまうこと。
例え魔力が1しかなくても、10000くらいあっても。
全部使ってしまうのだ。
それで使い切って、その後丸一日なにもできないなんて事にならないように、俺は夜の寝る前のこの時間を使ってテストする事にした。
そうして一週間、レイズデッドの効果が大体分かってきた。
まず、完全に蘇生できるパターン。
これは死亡した間もなく、かつ、死体がまるまる揃っていること。
この二つの状況が揃っていれば、完全に蘇生する事ができる。
次に、死体が揃っているが、時間が経過したパターン。
これは一見して蘇生することができたが、再び動き出したそれは生前とは似ても似つかない動きや見た目になってしまう。
平たく言えば「ゾンビ」になってしまうのだ。
正直、蘇生の意味がほとんど感じられない。
最後に、死体が揃ってないパターン。
例えば今の蜘蛛のように首をどうにかしたパターンだ。
これは全くの蘇生が不可能になる。
ゾンビにすらならない。
他にも厳密に細かいのがあるが、大体はこの三パターンに収まる。
完全蘇生と、蘇生不可能なのは深く考える必要はなかった。
俺は蘇生はしたが、ゾンビになってしまうパターンを考えた。
そして――聞く。
「霊的な物がみえなくなるんだっけ」
俺が聞くと、大地の精霊オノドリムが答えた。
「うん、要するに魂だね」
ずっと部屋の中にいて、俺がやってることを見守り続けたオノドリムが答えた。
あの日以来、オノドリムは暇さえ在れば俺のまわりにいる。
「魂か」
「人間って魂の事あまりわからないんだっけ」
「ううん、何となく分かるよ」
そう、俺には何となく分かる。
俺に起きたことを考えればそうだ。
前世の記憶を持っていて、気がついたら大の大人だったのが赤子になって、橋の下に捨てられていた俺。
魂がそのままで転生した、としか考えられないようなことを経験してきた俺は、この世の誰よりも魂の事を体感として理解し、存在を確信している。
「そか。魂って死んでもしばらくは体の中に残ってるんだけど、しばらくするとすぅって抜けて、どこか行ってしまうの」
「魂がないのにレイズデッドをかけたら魂のないまま無理矢理蘇生させる、それでゾンビになるって事だね」
「そういうことだね」
「なるほど……」
となると、テストじゃなくて実際に使うときは、死んでからの経過時間も気にした方がいいな。
大事な人がよみがえる――と思ったらゾンビになってしまったんじゃ、二度悲しむことになるだけだ。
やっぱり、レイズデッドの存在は、ごくごく一部の人間以外には完全に隠しておいたほうがいいな。
となると――。
「ねえねえ、何か困ってる?」
「え?」
いきなりどうした、って感じでオノドリムを見る。
彼女はわくわくした――というか何かを期待しているような目で俺を見つめていた。
「困ってるというか――」
レイズデッドの扱いを真剣に考えてただけだ。
「あっ、そっか、そういうことだ」
オノドリムはポン、と手を叩いて、勝手に何かを納得していた。
「そういうことかって、どういうことなの?」
「人間ってお金がないと困るんだよね」
「え? うん……そう、だね」
俺は今困ってないけど、「人間は金がないと困る」かどうかって言われれば、まあ困ると答えるしかないな。
素直にそう答えたのは、オノドリムが「お金」から一番かけ離れた存在だからな。
何しろ大地の精霊。
いろんな本を読んできた。
「大自然」とか「大地」とか、そういうタイプの精霊の事を知識でたくさん覚えた。
そしてオノドリムと出会ってから、それを本人とのやり取りのなかで「答え合わせ」もした。
大地の精霊は、力はすごいし、人々にあがめられているから名声面もすごい。
だが、俗世のもの、特に金銀財宝とは縁の遠い存在だ。
オノドリム本人も、「なんで黄金と白銀で価値が違うの?」って、何百年も人間を見守ってきたはずなのに、未だに理解していない位だ。
だから、何も起きないだろうと思って、俺は頷いた。
……安易にも。
「わかった! じゃあ付いてきて」
「付いてきて?」
「うん! そだ、たくさんあるから人手も連れてきて」
「人手?」
「行くよ!」
「わわ、ちょ、ちょっとまって!」
オノドリムは俺の手を引いて、書斎から無理矢理連れ出した。
既に夜遅くなっているが、そこもやっぱり大地の精霊だからなのか。
昼も夜も関係ない、って感じでオノドリムはテンションマックスだ。
よく分からないけど、オノドリムに従うことにした。
途中でメイドを捕まえて、何人か人手をといって、オノドリムについて行った。
屋敷を出て、馬車に乗り換える。
一直線に街を出て、街道を無視して進む。
「どこまで行くの?」
「すぐそこだから」
オノドリムはそういって、馬車を先導する。
道を無視して歩くその姿は、人間が作った道などまったく無視して、知っている目的地まで最短距離の直線を進んでいる、って感じだ。
それについていくこと、小一時間。
人気の無い山中にやってきた。
「ついた」
「ついたって、ここがどうしたの?」
「ここを掘って。あんたたち早く」
オノドリムは連れてきた使用人達に命令した。
使用人達は困った顔で俺をみた。
普通の人間ならば従う義理はないが、相手が大地の精霊ともなれば無視していいのか困ってるって感じだ。
それで俺に「どうしたらいい?」って視線で聞いてきた。
「えっと、彼女の言うとおりにして」
おれが言うと、使用人達は動き出した。
地面を掘り始めた。
道具もなにも持ってないから、木や石を使ってほったり、手で土を掻き出していた。
そうして掘り続けて、更に小一時間。
かっ! っていう、今まで土を掘っていた時とはまったく違う音が聞こえた。
「そうそれ、それを運びだして。三十個あるから」
オノドリムがいった後、使用人達は更に掘る。
すると、掘り当てた物が、頑丈な壺であることがわかった。
それを慎重に掘り出して、穴の中から地上にだす。
発掘された壺を取り囲む俺と使用人達、そしてオノドリム。
「これは?」
「金貨」
「へ?」
「人間でいうと……埋蔵金?」
「埋蔵金……えええええ!?」
俺は壺のふたを開けた。
すると、たいまつに照らされて、壺ぎっしりの金貨が輝いていた。
「す、すごい……」
「こんなに……」
使用人達が大量の金貨に絶句した。
「どういう事なの?」
「だから、人間達がうめてった埋蔵金。ここのは300年くらいうまってるのかな。だれも取りに来たことないけど」
「埋蔵金……それをしってるの?」
「当たり前じゃん」
オノドリムはニカッとわらった。
「大地にうめたものなんだから、あたしが知らないはずないよ」
「そっか」
俺は納得した。
そして、オノドリムは更にニカッと笑う。
「埋蔵金はまだまだあっちこっちにあるから、全部あげる」
「それって――」
意味を理解したあと、俺は言葉を失った。
世界中に、埋蔵金伝説が山ほどある。
歴史を見ても、金持ちとか権力者とかうめていった話は枚挙に暇がない。
それを――全部俺に。
「ねえねえ、嬉しい? 助かる?」
ワクワク顔で聞いてくるオノドリム。
さすがというかなんというか。
大地の精霊の溺愛は、皇帝のスケールさえも遙かに上回っていた。
「面白い!」
「続きが気になる!」
「海もコンプリートしろ!」
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