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10.溺愛が加速する

「学校を作ったのじゃ」


 ある日、朝食後の読書をしていると、いきなりやって来たじいさんが宣言するように言い放った。


「……えっと」


 あまりにも急なことに、何を言ってるんだこの人は、って感じにぽかーんとなってしまう俺。

 ずっとそうしている訳にもいかないから、気を取り直して、って感じで聞くことにした。


「学校を作ったって、どういう事?」

「字義通りの意味じゃ。新しい学校を作ったのじゃ」

「はあ……そうなんだ」


 で? っていう顔でじいさんを見る。

 すると、じいさんは誇らしげに。


「マテオのための学校じゃ」


 と言い放った。


「僕の?」


 これには驚いた。


 じいさんは公爵という大貴族だ。

 権力もある、財力もある。

 だから学校を一つ二つ建てた所でまったく驚きに値しない。

 むしろ貴族の義務として、そうする事もあるんだなって普通に納得する位だ。


 だが、マテオ(おれ)のためというのなら話はまったく変わってくる。


「僕のために学校を作ったって、どういう事?」

「うむ、この前マテオの魔力を測ったじゃろ?」

「うん、そうだね」


 レイフを連れて来て、金貨三百枚という超レアアイテムを使ってまで俺の魔力を測った話か。


 ちなみに、その時に使ったレイドクリスタルは、俺の魔力の大きさに耐えきれずに爆発四散した。


 金貨300枚が一瞬にして「パァ」だが、じいさんは気にすることなく、むしろ結果に大いに喜んだ。

 魔力値一万超え、史上最高かもしれないという結果に大いに喜んだ。


 そういう意味では、俺にとっても忘れようがない出来事だ。


「あの後調べてみたが、マテオの魔力はやはり歴代最高だという事が分かった」

「そうなの!?」

「その通りじゃ。あの数値、基準こそヤツのオリジナルだが、大雑把に過去の人間の数値も類推はできたのじゃ。結果、一万を超える人間は未だかつて存在しないということが分かったのじゃ。空前絶後の才能じゃ」

「そうなんだ」


 俺はちょっと焦った。


 自分のやったことが「空前絶後」なんて言われたら大半の人間はこういう反応をするんじゃないだろうか。


 それで「落ち着け、落ち着け俺」と心の中で言い続けて、返し(、、)を探した。

 そこで、じいさんの初っぱなの宣言を思い出す。


「それが……どうして学校に繋がるの?」

「マテオのための学校じゃ」

「僕のため?」

「マテオは巨大な魔力を持っておる。しかし、魔法はまだ使えぬ」

「……あっ」

「うむ、そうじゃ。その才能を腐らせてはならん。稀代の才能を稀代の結果に伸ばすために最高の学校を用意したのじゃ」

「そうなんだ……」


 これもまた、じいさんが俺を溺愛する一環だった。


 そういう話も、まあ分かる。


 子供に音楽とか芸術の才能があると分かれば、大金をかけてもいい教師をつけてやったという親を俺は何人も知っている。というか世間一般的にそうだ。


 いや、才能があると「信じたい」だけの段階でもそうする者が多い。


 それを考えると、実際に魔力値一万という結果を出した俺にじいさんが舞い上がって学校を作るのも、規模の違いはあるが分かる話だ。


「箱が最適なのに作らせたのはもちろん、教師も最高のを揃えた。マテオの学友になる子も今は厳選中じゃ」

「学友? 同級生とか、一緒に勉強をする子達ってこと?」

「うむ、そうじゃ」

「なんで?」


 素直に疑問だった。

 俺を育てるのなら、そういうのは居らないだろ。


 もしかして、宿敵と書いて「とも」と呼ぶ相手が居た方が成長ができるから、とかそういう――。


「マテオを称えて、マテオの偉大さを広める者達が必要じゃ」


 ――そっちかよ!

 思わず声に出かかってしまった。

 予想の斜め上の目的に俺はがっくりきた。


 予想は斜め上だが、じいさんがやろうとしていることを考えればちっとも「ブレ」がないのがある意味恐ろしい。


「わしは高齢じゃ、明日天寿を迎えてもおかしくない年齢」


 いやじいさんはまだまだ十年二十年と生きると思うぞ、すっごい元気だし。


「じゃから、わしの後にマテオを自慢し続ける若い世代もついでに育成せねばと思ったのじゃ」

「な、なるほど」

「そして、マテオが学ぶ間の護衛も揃えたのじゃ。安心してそこで学ぶがよいぞ」

「……ねえ、おじい様」

「どうしたマテオ、なにか注文があるのか?」

「ううん、そうじゃなくて。ちょっと念の為に聞いておきたいことがあるんだけど……」


 俺の頭の中にあることが浮かび上がった。

 もの凄い恐ろしい想像だが、聞かずには――目をそらしたままではいられなかった。


「その学校って、どれくらいお金をかけたの?」

「うむ! マテオのために作る学校じゃ。一カ所もケチってはいかんとちゃんと金額を把握しておるぞ」


 じいさんは自慢げに言い放った。


 通常、貴族は使った金は把握してないものだが、それをあえて、とじいさんは言った。


「ど、どれくらい?」

「金貨にして、二万と八千六百――」

「ありえないよ!?」


 さすがにもう飲み込めず、声に出して突っ込んだ。


 金貨二万枚って――いやむしろ三万か!? 

 そこそこの街の年間予算に相当するぞ、それ。


「やはり少なかったか。案ずるなマテオ。小童に言って国からも出してもらうのじゃ」


 恐ろしいことに、じいさんはまだまだつぎ込む気だ。


 孫を溺愛するレベルを超えてるぞ、じいさん……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 10話まで読んで何が伝説級スキルなのか説明も無く ただただ爺さんの孫馬鹿話ばかりでつまんなくて。 とてもつまらないです。
[良い点] 貴族なのに学校?と不思議に思っていたら、理由が凄すぎました。ぶっ飛んでるし、最初からブレないおじい様、すてきです。
[良い点] 爺ぃ…たぶん、まだ本気ではない暴走ぶりなんだろうなぁ(笑) [気になる点] 爺さんに諫言する人って、ちゃんといるんだろうか…いてくれた方が色々と便利なんだケド…
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