↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス第二巻4/30発売】その政略結婚、謹んでお受け致します。〜二度目の人生では絶対に〜【書籍全二巻発売中】  作者: 心音瑠璃
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/78

この命ある限り *Walter side

番外編、ウォルター視点です。(リクエストのふにゃ〜な感じに出来ているか…な?)

時系列は現世ヴィクターと同時期、戴冠式前です。

フェリーシナに、リゼットやヴィクターにも言えない、魔法を使えなくなった彼の本心を話すというお話です。

 ―――……ふと偶に思い出す。

 亡くなった母さんが、口癖のように言っていた言葉。


 “私達はこの魔法を、考えて使わなくてはいけないの。

 そうしないと、自分の命を削るだけでなく、周りを不幸にさせてしまうからね”


 その言葉の意味が幼い頃は良くわからなかった。

 その意味が初めて嫌という程思い知らされたのは、私と同じ“短命”という運命を持つ母さんを目の前で失くした時。

 “透視魔法”を持つ自分は、弟のヴィクターや父さん、メアリーさんとは違い、周りに不幸を与えてしまう。

 結果的にそんな家族をバラバラにしてしまったのも……、私の所為だ。


(私のこの魔法は、“呪縛”)


 本来、人が持つべき能力ではなかった。

 ただその能力を、何の因果かこうして手にしてしまった。 生まれながらにして一生つきまとう“呪縛”は、その名の通り命も、心さえも蝕んでいった。

 そして、母さんはこうも言った。


 “貴方は、悔いの残らないように生きなさい”


 それが、生前最期に言われた言葉だった。


「……悔いの残らないような生き方なんて、何処にもある訳がないじゃないか」



 そう吐き捨てるように口にした言葉は、宵闇が広がる空へと溶けていったのだった―――





 

「……うん、魔法による副作用は現れていないわね」


 そう言って彼女は、ブロンドの髪をさらりと揺らし、翡翠色の瞳を優しく細めて笑った。


「あぁ、有難う。 フェリーシナさん」

「どう致しまして」


 彼女はサラサラと、何かをメモに書いていく。


「? 何を書いているの?」

「これはね、私の後……後世の“古の魔女”に伝える為の資料を作成しているの。

 要するに、解呪魔法を使ったことによる術者である私と、かけられた貴方に起きた体の異変とかを記録として残しているの」

「なるほど、私達は実験体ということか」

「……まあ、そうなるわね」


 何でもない風に言うのね、と彼女は苦笑いを浮かべて言った。

 そんな彼女に、「まあ慣れているからね」と笑って返せば、彼女はふっと笑みを消して言った。


「……貴方は、本当に“後悔”していないの?」


 突然かけられた言葉に、一瞬言葉を失ったがすぐに口を開く。


「……何のこと?」

「隠さなくて良いわ。

 ……リゼットちゃん達には“大丈夫”と言っていたけど……、本当は、突然魔法を使えなくなって不安なんでしょう?」

「! ……はは、フェリーシナさんにはやっぱり、何でもお見通しなんだね」

「まあ、私は“古の魔女”だから」


 そう言って彼女は曖昧に笑った。

 その笑みが少し気になったものの、私はギュッと拳を握り……、“本音”を口にした。


「本当は……、怖いんだ。

 今迄手に取るように分かっていたものが、突然分からなくなってしまったから」


 生まれた時……とは言ってもあまり覚えてはいないけど、少なくとも物心がつくより前から、人の目を見るだけで心が読めるようになった。

 その人が何を考え、何を感じているのか。

 それは大人になるにつれて、より詳しく分かるようになっていった。


「……握手をしただけでその日の夜、その人の記憶らしき夢を見たり、戦争で敵国の戦略を把握する為に、遠距離にいる人の心を読めるようにもなった。

 そういった魔法は……、大人になるにつれて突然現れるようなものもあって。

 ……徐々にその魔法と共に汚い大人達の心を読んでいく内、自分の心もコントロールすることに慣れていった」


 そんな自分が怖くなった。

 心が、感覚が麻痺していく。

 人に対して嫌でも見る目が変わり、どんどん自分が強かになっていく気がして。

 いよいよもって自分が嫌になって、早くこの運命から逃れたい。

 そう思っていたある日。


「私の目の前に現れたのが、彼女……、リゼット嬢だった」

「! ……彼女が、此処へ来た時ね」


 フェリーシナさんの言葉に頷き、私は自分の掌を見つめる。


「リゼット嬢は……、フェリーシナさんも知っての通り、不思議な魂の持ち主だった」


 家族を守るため。

 その思いを胸に、彼女は深い傷を負った原因でもあるこの国へ、前世をやり直すために嫁ぐことを決意してやって来た。


「そんな彼女の見てきたものが気になって……、私は彼女に自ら握手を求めた」

「!」


 私の言葉に、フェリーシナさんが瞠目する。

 そんな彼女を見て薄く笑みを作り、口を開いた。


「彼女の“夢”のなかの世界で私が見たのは……、変わり果てたこの家の末路だった」

「……っ」


 フェリーシナさんは息を飲んだのが分かる。

 私も無意識に、ギュッと拳を握った。


「誰一人、幸せになることのなかった世界。

 それだけではなかった。 その中には当然、私の姿は一度も映し出されなかった」


 何となく勘付いていた。

 彼女には前世の記憶がありながら、私のことを知らないようだったから。


「やっぱり、私はこの“短命”という運命からは逃れられないんだと。

 ……そう、思っていた」


 でも。


「彼女は……、リゼット嬢は諦めなかった」

「!」


 私はそう言って、フェリーシナさんの……、綺麗な手をそっと握る。

 驚き目を見開く彼女を見て、微笑み浮かべて口にした。


「諦めなければ必ず報われることを……、彼女は証明してくれた。

 彼女には感謝しても感謝しきれないんだ。

 こうして貴女に命を救ってもらえたのも、生きて貴女に出会えたことも」

「……!」


 短い運命でも何でも良い、そう思っていた。

 だけど。


「今は……、少しでも長く生きたいと、心から思っている」


 この命が、心臓が、あとどれ位続くかは分からない。

 フェリーシナさんは“本来ある寿命”まで生きられるとそう言ったけど、それがいつまで続くかも分からないし、下手をしたら明日、明後日かもしれない。

 それに、絶対なんていう言葉はない。

 だから。


「……私は、命ある限り貴女と時間を共にしたい」

「っ!」


 そう言って、彼女の手を持ち上げ、そっと口付けを落とす。

 そして驚く彼女に向かって……、口を開いた。


「それが私の、“悔いの残らない生き方”だと思うから」


 生前、母さんに言われた言葉。

 その言葉の答えが今、ようやく分かった。


(……私の考える、悔いの残らない生き方は)




 ―――……大切な人達と歩む一瞬一瞬の時間を大切にすること。




「その言葉は……、貴女のお母様が仰ったのね」

「!」


 彼女は……、翡翠色の瞳から一筋の涙を零す。

 その綺麗な涙に思わず見惚れてしまえば。

 彼女はそんな私の顔に顔を近付け……。


「!」


 そっと頰に口付けられる。

 今度は驚く私に向かって、彼女は微笑みながら口を開いた。


「その考え……、素敵ね。 勿論、私も賛成よ。

 ……そもそも、私は貴方のことが好きでなければ此処にはいないわ。 王国は今まで敵とみなしていたしね」

「! ははっ、つまり私に下心があったから、此処に残ってくれたと」

「!? あ、貴方は本当に何でもストレートに物事を言うのね……」


 その言葉に、少し笑ってみせる。


「わざとそうしているんだ。

 魔法を持たなくなった今、自分の心を伝える為には回りくどい言い方ではなく、口にした方が良いことははっきりと言った方が良いと思うから」

「! ……ふふ、その考え方にも賛成だわ」


 そう彼女は楽しそうに笑えば、「あ、そうだ!」と人差し指を立てて言った。


「貴方が魔法を使えなくなった代わりに、私が貴方に近付いてくる悪い考えを持つ方々を追っ払ってやるわ!」


 私も大体は人の心が読めるし! と笑って言ってみせる彼女に、「勇ましいお姫様だね」と言って思わず二人、顔を見合わせて笑い出す。

 そして、お互いの手を握り……、コツンと額を寄せ合った。




 ―――いつも無意識に探していた。


 自分が生まれてきた意味を。


 生きている意味を。


 短命という運命を背負ってまで持ってしまったこの魔法は、


 災いでしかないのだと。


 そんな変えることなど絶対不可能な運命を変えてくれたのは、


 他でもない大切な人達だった。


 “貴方は、悔いの残らないように生きなさい”


 今ならその言葉に対して、


 はっきりと返せる。


 “この命ある限り、大切な人達と共に過ごす。


 それが私の、後悔しない生き方だ”と―――







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。