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逃げた私と

作者: 暁月

逃げた私と変わる私のちょっと別視点と過去を加えた、作品です。前作と一緒に読んでいただければ嬉しいです。

沢山感想頂きありがとうございます。返信はすることは出来ませんが、作品の向上のため参考にさせて頂きました。

ラウベルはいつも1人だった。

物心がついた頃には使用人として生きていた。

でも使用人のようにお給金も出なければ指定服も渡されずいつも薄汚れたワンピースを着ていた。


そんな彼女を若いメイド達は嘲笑い執事長やメイド長は謝った。ラウベルにこんな酷い仕事をさせてしまってと。だが、ラウベルはそこに関しては別に嫌だとは思っていなかった。


メイド長が私に今あなたにできる仕事はないから休憩しなさい。とそういう。

だから私はまたお気に入りの部屋に行く。


本が沢山置かれている古書室。ここには魔術の本が沢山置かれている。もう既に半分くらいは読んでしまったがまだまだ沢山ある。

私は一冊の本を手に取る。これは約100年前に書かれた本だ。この本にはかつて使われた魔法や昔の人々の魔力について書かれている。


昔は貴族・平民問わず魔力があったそうだ。

でも時が経つにつれ血が薄れ魔力を持つものが減ったらしい。わたしはどうなのだろうか?

魔力を持ってるの?







休憩時間になっては古書室に行くというサイクルになってからはや1ヶ月がたった。

そんなある日古書室に一冊の真新しい本が置かれていた。著者名を見るとみんなが旦那様だというこの家の領主様だ。私の父親でもあるらしいが真相は定かでは無い。


新書が珍しく手に取り目次を読む。するとその中に綺麗なしおりが挟まれていた。この栞は正確ではないが魔力があるかどうかとどのくらいの魔力量があるか分かるらしい。


私は栞を持って力を込める。魔力が流れているかは分からないがしおりが光ったかと思うと灰になって消えてしまった。これは私に魔力があると言っていいのだろうか。よく分からないが魔力を使えることを仮定として練習してみよう。





あれから1年がたち私は10歳になった。あの本のおかげで今は100弱の魔法が使えるようになった。自分の属性は分かってないが色んな魔法が使えるところを見ると全属性持っているのかもしれない。




最近侍女メイド達の私に対する当たりが酷くなってきた。

わざと私がいる前で私を嘲笑って時にイタズラされる。だが、復元魔法が使える私は動じることをしない。それが逆に不快なのだろう。







そんなある日いつも以上にピリピリとした雰囲気の日があった。それは私が彼と出会った日であり、一応私の兄であるらしい人の友人が来た日であった。その日も私は邪魔にならないように古書室にいた。そしてこっそりと魔法の練習をしていた。今回練習していたのは未だに成功したことの無い光魔法のヒールである。ここ数ヶ月練習してるが魔力を使った痕跡が残るだけで何も残らない。ため息をつき本棚にたれかかる。



するとバチっと少年と目が合った。

だれ?見たことない人。ああ、あの令息の友達か。なんでそんな所にいるの?

ここは三階だ。浮遊魔法を使っているのだろうか。まぁ、どちらにしろ魔力が多い人にしか使えない。そんな分析をすると窓を少年がトントンと叩く。正直入れたくはないが身分が高い人を蔑ろにすることは出来ない。仕方なく部屋に入れる。


彼は自分の身分に関する自慢は何も言わず、私が使っていた魔法に関することだけを聞いてきた。

何故こんな私の話が聞きたいのか分からなかったが聞かれたことだけはできる限り答えた。




彼は平民なのに魔法が使えるの?と不思議そうな顔をして尋ねた。私は何故話してしまったのか分からないがわたしがこの家の娘らしいということを話してしまった。すると彼は驚いた顔をして、いきなり窓から出ていった。

何がしたかったのかは分からないがまぁ、何も起きんだろうと思っていた。でも心のどこかで彼に惹かれていた。




それから3日たったある日何故か私はメイド長と一緒に領主様の執務室に呼ばれた。

これから私をこの家の娘として育てることを決めたと言う話だった。私は一体何が起きたのか分からなかったがきっと彼がなにかしたのだろう。

まぁ、衣食住が保証されるだけ感謝しよう。



本館から隔離された部屋で毎日びっしりと勉強をさせられた。だが、地味にそれをこなすことが出来たので1年経つ頃には学ぶことを全て終了したことが伝えられた。

それと同時に私に婚約者が決まったらしい。婚約者は私があの時出会った少年で彼は私より3歳年上(前作で3才違いとなっていたはず)だそうだ。つまり今学園にいる。


そう考えるとほっとした。これで暫く会う必要がないからだ。学園にいる間は長期休み以外は家に帰って来れないので会う機会はない。



でも何故彼が私を婚約者にした意味がわからなかった。色んな本を読んだし色んな人から言われたから分かっている。自分のこの姿が忌むべきものだって。こんなに暗い髪色に瞳の色。

彼やうちの一応家族は綺麗で明るい髪色に瞳の色をしてる。他の貴族の令嬢の方がよっぽどいいだろう。本当になぜ私を選んだの?


いや、そうか。私のこの姿や立場が丁度いいんだ。平民は私と同じくらい暗い髪色や瞳の色をしてる。きっと私は差別しないいい人だよ~と伝えるためには丁度いいんだ。



それに何故か知らないけどまだ私は社交界デビューしてないのにも関わらず色んな黒い噂が流れている。

ある噂は私がもう既に傷物になっているとか

私は呪いにかかってとても見られないほどの姿をしてるとか本当に色んな噂が流れている。

でもそんな傷物を婚約者にしたあの人は素晴らしい人だってね。





ここ最近、自分の髪や瞳の色が一段と暗くなった気がする。私がなにか悪い事をした?

心が黒いから?性格が悪いから?

いい子にならなきゃ……明るくならなきゃ……

もう傷物と言われたくなんかない……

それから私はより自分を作るようになった。

姿のハンデがあろうと誰にも文句を言われないように。


それと裏腹に侍女たちは私を罵り、こう言う。

「努力をしたところで未来の旦那様はあなたを見てやいないのに」


「あなたの婚約者様は聖女様を愛してらっしゃるのですから!」


「聖女様はとても愛らしく、可愛らしい方で」


「あんたみたいな傷物と違うのよ!」


「「「「アハハハハ!あんたなんかいなくなっちゃえ!!」」」」


ってね。笑えるでしょう?そう思う度また私の姿は暗く染まっていく。

大好きだった本を読むことも魔法を使うこともその頃からしなくなった。


気づいた頃には私の魔力は小さく奥深く眠るようになった。自分の本当の気持ちのように。




来年、私は学園に入ることになる。でもそれと同時に彼は卒業だ。きっと私はその日行われるパーティーで婚約破棄されるのだろう。

この国の貴族は学園を卒業した時点で大人の一員と見なされる。彼はきっと聖女様と結婚したいはずだ。でも平民だからもしかしたら私を飾りの妻にして聖女様を妾にするのかもしれない。

それにしたって、今にしたってどちらにしろ私が傷物で悪女であることに変わりはないのだけれど。

でも私が彼に見つけられたことに変わりはない。

どれだけ彼が妾を囲おうが私は許そう。

あの辛かった生活から抜け出してくれたのだから。









卒業パーティーの1ヶ月前。初めて手紙が届いた。卒業パーティーのパートナーとして出て欲しいと。それと同時にドレス一式が届いた。私のこの暗い髪色や瞳にも合いそうな彼の赤い瞳の色が入ったドレス。はじめてみたその美しいドレスに心奪われた。そんな私を見てまた侍女達はいう。



「そんなドレス1枚でそんな顔しちゃってなさけない!!」


「聖女様にはもう何十個もプレゼントしてるのにアンタにはたったこれだけ!」


「1度しか会ったことないあの方もあんたなんかにあげるものはこれしかないとそう判断したのね!!!」


「可哀想~!!」


「「「アハハハハ!!!」」」



彼女たちの声で一気に現実に戻される。

また一段と私の心も姿も暗くなる。





最近は幻聴が聞こえる。「逃げちゃえ」

「もう無理することないよ」って。


誰が言ってるか分からない声。もしかしたら私の心の声なのかもしれない。そう思いながらダンスの練習をする。先生からは心が入ってないけどしっかり出来ていると言われた。

心が入っていないってどう言うこと?

私の心は私のところにあるわ。







そんなことをしているともうパーティーの日になった。パーティーは夕方から。夕方にパーティー会場に行くことになっている。


でも私は決めた。パーティーには行かないって。

その方が彼らは幸せだもの。

だってそうでしょう?この家で暮らして早12年。未だに家族である人と話したことはなく、其れは婚約者である彼も一緒だ。


私は逃げることにする。

何もいらない。魔法が使えれば何とかなる。

だけど何故か無性に手紙が書きたくなった。

一応とは名ばかりの今まで書いたことのないくらい丁寧な字で。感謝というより皮肉を込めて。

長く書かれてもきっと迷惑だろうから。




私は知っている。メイド長や執事長に父が私のことを聞いていたこと。私が本を読んでいること。

だからあの本をあの部屋に置いたこと。

そして婚約者のあの人が私と出会うことを仕向けたこと。


この家のことは父が領主なのは名ばかりで全て母親が実権を握っていること。お金もそうだ。だからあの本は写しだった。魔法が得意な父だからこそできることだったのだろう。


でも知らないふりをして出ていくことにした。



父にはまだ迷惑をかける。また頭を抱えるだろう。私が不器用なばかりに。誰に似たのかは分からないけど。



彼になんの思いも残ってない。あるのは感謝だけ。見つけてくれた恩だけ。だからこそ私は2人の恋を応援する。




心の片隅にある良心を引っ張り出して願う。

父、メイド長、執事長、そして婚約者と聖女様に幸せが訪れますようにと。



思いが届く頃にはきっと私はこの国にいない。

だって手紙を見ると同時に魔法が発動されるように魔法をかけたから。

私は今国境にいる。あと一歩踏み出してしまえば傷物のラウベルではなくなる。

そう。もう私は私だけのものだから。


隣国に移った瞬間大きな光に包まれる。

そしてあの時聞いた声と同じ声がする。

幸せになりなさい!ラウベル!っと。

今まで暗くなるだけだった髪や瞳が輝かんばかりの明るい色に変わった。

心も晴れやかになった気がする。



隣国という新たな地で頑張っていこう!

ただのラウベルとして!



最初ラウベルは天使が下界に落ちて下界の黒さに染まり姿にそれが写ってしまったという設定で描き始めていましたが、全くもって違うものになってしまった気がします。

後日談は望む方がいれば私も書いてみたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございます。

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