夏空を呪う
「セミが7日間しか生きられないのに外に出てくるのは、この蒼い空を見上げるためなのかもしれない。」
「・・・は?」
日差しが照りつけるプールの帰り道に
ふと呟いた右隣の友達。
「なんだよ、熱中症で頭おかしくなったか?」
左隣を歩く少年が睨む。
「僕は大真面目だよユースケ。」
「どこがだよ。セミが鳴くのは彼女が欲しいからだって先生が言ってただろ。なあ、コーイチ。」
「そうだね・・・でも・・・」
「ん?」
「セミに理由を聞いたわけでもないのに、それって本当なのかな・・・?」
「んーーー???コーイチも熱中症か???まともなのはこのリュージ様だけか???」
アイスを齧りに寄ったコンビニでも会話は続く。
「セミってさ。生き物の中でも特に役に立たないんだよね。」
「まあ・・・鳴いてるだけだもんな。」
「7年地下に潜って、やってることは木の根っこから栄養摂ってるだけ。出てきても7日間しか生きられず、ミンミン鳴いて交尾してオシマイ。なんか・・・変じゃない?」
「変・・・か・・・たしかに・・・。」
「イヤイヤイヤ、単にそれが生き残るのに一番良かっただけじゃねーの?」
「リュージ・・・夢がないね・・・」
「へーへー、夢のない小学生で悪かったですよーっと。」
「アハハ・・・」
「この前映画でさ、空が蒼いだけで気分が晴れやかになるって言ってたんだ。最初はよくわからなかったんだけど、雨の日の次の日が晴れだった時、あーこういうことかーって。」
「それがセミとなんの関係があるんだよ。」
「セミって7年も地下なんだよ?晴れはおろか曇りも雨も見れないんだよ。」
「そっか。だからちょっとでも蒼い空を見上げたくて・・・。」
「んー・・・2人の話を聞いてたらなんかそんな気がしてきちまった・・・。」
「でもそう考えるだけで、セミの声がちょっとだけ違う聞こえ方になるね・・・。」
「夏空を見るためだけに、生まれてきたんだな・・・。」
「ちょっと辛いね・・・。僕はそんな人生・・・というかセミ生はなあ・・・。」
日差しが西日に変わりつつある時間だった。
「んでさ、なんでこんな話したんだ?」
「んーと・・・そんなセミたちを捕まえるのはどうかって・・・。」
「明日のセミ捕りが嫌だったんだね・・・。」
「最初からそう言えよ・・・。」
「2人とも楽しみみたいだったから、心に訴えてみようかと・・・。」
「めんどくせぇ・・・なら明日のプールかなぁ。」
「プール行って、アイス食べて、グダグダ喋って・・・。」
「そして宿題に追われる。」
『言わんでいい!』
両サイドから悲痛な叫びが響く。
それは夏空に呪われた、少し悲痛で、少し楽しい、短い夏を楽しむ鳴き声。