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おくりうた

      どこかで爆発音が聞こえる

      いろんなところで

      そして ゆっくり静かになる


 

 

      1


 


      光が入る

      レイが横たわっている

      その傍らにミカ

      ミカはレイをゆっくり抱きおこす

      そして静かに歌う

      子守唄のような鎮魂歌のような

      もう一人は離れてそれを見ている


 


      2


 


ミカ    レイちゃん レイちゃん 起きてよ

レイ    ウーン

ミカ    考えるんでしょ 明日までに プロット

レイ    ウーン

ミカ    レイちゃん


 


      レイ 起きる


 

 

レイ    うあ!

ミカ    うあって

レイ    あれ ミカ?ミカ!

ミカ    ミカだよ

レイ    よかったあ 生きてたんだ

ミカ    は?え 何

レイ    ミカ~(抱きしめる)

ミカ    はい?

レイ    え あ あれ ここ 私んち

ミカ    寝ぼけてんの

レイ    え

ミカ    ここ レイちゃんち

      何 変な夢見てんの

レイ    夢? ああ 夢かあ なあんだ 私寝てたんだ

ミカ    何度も起こしたんだけど 

      それはもう どっぷりと 熟睡あそばされてましたわよ

      せっかく泊まりに来たのにさ

レイ    ごめーん ミカ

ミカ    まあ いいけどさ あ レイちゃん よだれ

レイ    嘘?

ミカ    嘘

レイ    もう!

ミカ    起きてくれてよかったよ あのまま ずっと寝られてたら

      私 レイちゃんちに 泊まりに来た意味なくなるもん

レイ    ごめんね でも 変な夢だったなあ

ミカ    みたいね どうも私 その夢で死んでるみたいだし

レイ    違うのよ

ミカ    起きた瞬間に 「よかった生きてた~」って

      それって 私 死んでるか それに近い状況にいるってことじゃん

      レイちゃんの夢の中の私ってば 不憫~

レイ    違うんだってばさ

ミカ    何が違うのさ

レイ    ミカだけじゃなくて みんな死んでるの

ミカ    は

レイ    みんな死んじゃってるの

      なんか ミサイルかなんかがさ ドバドバ落ちてさ

      あっちこっちが花火みたいにドカーンドカーンって

      火がゴーゴーなってて 煙で空が真っ黒けで

      それで みんな死んじゃって

ミカ    みんな?

レイ    うん みんな

      で 私 一人 なぜか生きてて 

      ポツーン って

ミカ    レイちゃんだけが?

レイ    うん なぜか私だけ

      ゴキブリのようにしぶとい 私

      でも寂しかった~ もう 一人ぼっちでさ

      そのうえ 私 もう死にそうなのよ これが

      息も絶え絶えで

      「寂しいよお 痛いよお 苦しいよお

       ベニヤのカレーライスが もう一度 食べたいよお」って思いながら

ミカ    死の間際にベニヤのカレーかあ レイちゃんらしい

レイ    それでね 何か 歌が聞こえくるのよ

ミカ    歌?

レイ    あー あれなんの歌なんだろう うー思い出せない

      それにしても なんで こんな変な夢見るかな~

ミカ    疲れてるんだよ レイちゃん 生徒会役員のほうもあるし

      そもそも 演劇部長と文化副委員長が 一緒なのはきついと思うよ

レイ    いやいやいやいや それはそれ これはこれ 

      演劇部のことは演劇部 生徒会のことは生徒会

      地区大会は 地区大会 文化祭は 文化祭

      時間に余裕のある文化祭は 後回しにできるから

      とりあえずは 地区大会だよ 地区大会

      今晩中に考えなきゃ プロット 集中 集中

      がんばれ 私

      ゴキブリのようにがんばれ 私

ミカ    なんじゃそれ

レイ    ゴキブリは夜がんばるんです 夜行性なんです

      今晩中に考えなきゃでしょ プロット 

ミカ    おお やるきまんまんですな

レイ    当然じゃない だって 大会まであと2ヶ月だよ 

      明日までに せめて大筋のプロットだけでも考えなきゃ

      みんなにも宿題って言っちゃったし

ミカ    あと 2ヶ月かあ 早いなあ

レイ    本当だよねえ 光陰矢の如し あせるなあ

ミカ    今だ 脚本決まってないんだもん

レイ    ちょっとのんびりしすぎちゃったなあ 

      先輩方が引退して すぐくらいから準備しとけばよかった

ミカ    今更言っても仕方ないよ レイちゃん がんばろ

レイ    付き合わせてごめんね ミカ わざわざ 泊まりに来て貰って

ミカ    いいって いいって どうせ 私も考えなきゃいけないんだし

      それに 二人で考えたほうがいい案でるかもしれない

レイ    ありがとう 二人寄れば文殊の知恵だね

ミカ    三人だって

レイ    多分 みんなも今頃一生懸命考えてるだろうなあ

      明日 楽しみだなあ

      シイちゃんもカナも梶もどんなの考えてくるんだろうね

      あ でも多分 梶は寝てるね

ミカ    うん 梶は寝る いつも眠そうだもん

レイ    プロットなんて考えてもないだろうな

ミカ    考えようとしても睡魔が襲って来るんだよ

レイ    それで 明日 多分

二人    ごめーん ねちゃった~みょー(笑う)

ミカ    みょーってなんだ みょー

レイ    梶の毎度のパターンだからね

ミカ    みんな どんなの考えてるんだろう

レイ    カナはさ かなりまじめなの考えてくると思うんだよね

ミカ    そうかな 私はかなりおちゃらけな話作ってくると思うな

レイ    ええ カナ ああ見えて結構まじめなとこあるよ

ミカ    あるけどさ 10%ぐらいじゃん まじめ度数

レイ    そうかなあ 今日なんかさ 稽古のとき 

      時間あいたら勉強してたの知ってる?

ミカ    知ってるよ だって あれ 漫画だよ

レイ    え

ミカ    表紙だけ参考書で

レイ    そうなの

ミカ    そうだよ 多分ね カナは その漫画をプロットに持ってくると思うよ

      いたく気に入っていたみたいだから 私やりたいって

レイ    …漫画ネタね

ミカ    シイちゃんとかさ 絶対 恋愛もののプロットだよね

レイ    シイちゃんはそれしかないでしょ

ミカ    「誰々君 好き」

      「俺もだ」

      ぶちゅう

レイ    恋愛はシイちゃんの全てだもんね

ミカ    「今日 かずき君かっこよくってぇ」って

レイ    「え かずき君って知らないんだけど 誰?」みたいな

ミカ    「えー知らないの かずき君 えー」

レイ    「えーって知らないよ かずき君 苗字はえなり君かい」

ミカ    もう みんなと恋バナしたくて 仕方ないんだよ

レイ    しかし残念なことに うちの部 恋愛未経験者ばっかだから

      「へえー」「そうなんだ」「ふーん」しかいえないし

ミカ    でも シイちゃんの こと恋愛に関するバイタリティは見習わなきゃだわ

レイ    そうだよね その辺 シイちゃんすごいと思う

ミカ    だよね

レイ    やっぱ花の高校生活 一度は 彼氏ってやつほしいよね

ミカ    ほしい ほしい

レイ    爪の垢でも 飲ませてもらわないと 私ら この高校3年間 彼氏なしだ

ミカ    それは困ったかも

レイ    明日 爪の垢もらうか

ミカ    もらうか

レイ    もらうか そして がんばって彼氏作るぞ

二人    おー!

ミカ    デートするぞー

二人    おー!

レイ    一緒にベニヤのカレー食べるぞー

二人    おー!

ミカ    それでもって あれやこれや するぞー

二人    おー!

レイ    てか 論点がずれてるぞー

ミカ    おー! って本当だ 考えなきゃ プロット

      でも どんなプロットが出来上がってくるか楽しみだね

レイ    そうだね 楽しみ楽しみ みんながんばれ 私もがんばる

二人    梶 以外は(笑う)

レイ    いやいや 梶も考えてくるさ 多分 10%くらいの確率で

      よーし うちらもがんばろう

ミカ    そうだね 目指せ 全国大会 最優秀

レイ    お でかく出たな

ミカ    じゃあ 目指せ 全国大会 出場

レイ    ちょっと ランク下げた それでもでかすぎる目標

ミカ    じゃあ 地区大会 突破

レイ    うんそれだよ まずはうちらの目標

ミカ    地区大会 参加

レイ    いや それ目標じゃないし

ミカ    うーん でもやっぱり 夢はでっかくいこう

      目指せ ブロードウエイに ハリウッド

レイ    それはでかすぎ てか高校演劇じゃないし

ミカ    夢はでっかく持て だよ

レイ    夢でかすぎ

ミカ    そうかな

レイ    そうだよ

ミカ    でも 夢見るんなら そんな夢がいいよ

      明るく 楽しく 前向きな

      レイちゃん いろいろ抱えて忙しいからさ 

      気持ち的に追い詰められてるのかもよ

      だから 変な夢見たんだよ

      ミサイル落ちて みんな死んじゃった夢

      もしかしたら ミサイルでも落ちて

      みんな 消えてしまえっとか思ってるんじゃないの

レイ    思ってないよ

ミカ    いやいや 心のどこか 奥深くでさ 自分じゃ気がついてないけど

レイ    どき! って んなわけないでしょ もうほんとに


 

 

      レイ なにか思いついたように



 

ミカ    ん どったの?

レイ    え…あ…さっきの夢

ミカ    え

レイ    いや さっき見た 変な夢

ミカ    ミサイル ドカーンドカーン?て奴

レイ    うん 使えないかなって

ミカ    使えないかなって え ミサイル?

      どっかにミサイル撃ち込むとか?

レイ    何言ってんの 撃つわけないでしょ 

      人 死んじゃうし ダメでしょ

ミカ    いや 大会延期を目論んでるのかと思った

レイ    ほんとにミサイル撃ったら 私 指名手配じゃん

      大会どころじゃないじゃん

      そもそも ミサイルの入手方法知らんし

      あのね ミサイルを撃つんじゃなくて プロットの話

ミカ    プロット?ああ

レイ    さっき見た夢をプロットにしちゃうんだ

      多少 アレンジして

ミカ    アレンジ?

レイ    そうそう アレンジ 脚色

ミカ    例えば 例えば?

レイ    うん ある日 ミサイルが あっちこっちから

      ひゅーんひゅーんって飛んできてさ 

ミカ    うんうん

レイ    そしてね もういたるところに落ちるわけ どかーんどかーんって

      それはもうすごい状態でさ

      阿鼻叫喚っていう奴

ミカ    あびきょうかんって あびさんていう教官のこと? 

「あびさん!」「はい!教官」どういう意味?

レイ    凄い状況なのよ 開店早々のバーゲンセールみたいな それがあっちこっちで

ミカ    ああ それ凄そう

レイ    でね みんな死んじゃうわけ

ミカ    夢のまんまだ で それをお話にするのね

レイ    ううん 違うの 話はその後なのよ

ミカ    その後って 始まってすぐ みんな死んだら その時点でおしまいじゃん

レイ    最後まで聞く!

ミカ    はい

レイ    うん でね みんなって 実は世界中 死んでるんだ

ミカ    え 世界中

レイ    うん 人類滅亡

ミカ    じゃあ 主人公は動物?

レイ    ううん 生き物も全部死にました 

ミカ    え 登場人物は? 登場人物のない演劇?

      うわ 斬新だわ それって面白いの

レイ    実は一人生き残ってるんだな

      地球上でただ一人

      でも 放射能とかいっぱい受けてるから 息も絶え絶えで

ミカ    ああ 夢の中の ゴキブリのようなレイちゃんだ 

レイ    そうそう ゴキブリは余計だけど

      もう 立ち上がれなくって

      「寂しいよお 痛いよお 苦しいよお

       ベニヤのカレーライスが もう一度 食べたいよお」って思いながら

ミカ    そんな状況でも ベニヤのカレーは外せないんだ 

      でも それって一人芝居?

レイ    んふふ そこでね なんと もう一人現れるの

ミカ    ええ 誰 誰? 全滅したはずの人類 

      残された唯一の生存者に迫るもう一人の影

      それは一体誰なのか 次回へ続く To Be Continued

レイ    次回へ続かないよ

ミカ    あそっか

レイ    でね そこに なんと

ミカ    なんと?

レイ    天使が来るのだ

ミカ    天使? 出た ファンタジーだ まさに夢物語だ レイちゃん好きそー

レイ    悪い?

ミカ    いえ よいと思います

レイ    そしてね 天使は最後の一人になった彼女を哀れんでね 夢を見せてくれるんだ

ミカ    夢?

レイ    うん 無くなった未来

      消えてしまった明日の夢

ミカ    ふーん

レイ    それはね とても とても 普通の夢なんだよ 友達がいて

      例えば 私たちみたいに 演劇部だったりしてね

      みんなと一緒にお芝居のプロット考えたりしたりして

      友達のこととか

      恋愛のこととか 

      次の大会のこととか

      くだらないこととか

      お話してる夢

      普通で 当たり前の日常なんだけど

      それは 彼女にとって とてもとても 幸せな夢なんだ

      どう?

ミカ    夢落ち?

レイ    夢落ちっていうかさ そのまま眠るように死んでいくんだよ

      ありふれた それでいて 幸せな夢を見ながら 目覚めることなく

      天使に抱かれながら

      うわ いきなり 浮かんできたわりになんかいいじゃない これ

      よくない?

ミカ    そうかなあ

レイ    だめ?

ミカ    だって 天使がさ 哀れむくらいなら 

      助けてあげればいいじゃない

      天使の力で

レイ    うーん なんか事情があるんだよ

ミカ    事情?

レイ    うん 天使は人間のすることとかに 何もしちゃいけないとかさ

ミカ    そうなの?

レイ    あくまでも人間に対して傍観者でいなければいけない

そういうルールなんだよ

      でも 最後の一人の人間に対してルール違反をするんだ

      夢を見せるっていう

      そして 彼女が 腕の中で息をひきとるのを確認して 天使は言うんだ

      「…おやすみ人類」って

ミカ    おやすみ 人類 かあ 

レイ    ふぁあ

ミカ    あ あくび

レイ    あ ごめん おやすみと言う言葉に反応した

ミカ    眠たいの

レイ    ううん まさかぁ

ミカ    でもいいんじゃない まだ プロットだけだけどさ

      なんか面白くなるかもね

レイ    でしょ

      天使が見せてくれる夢の中で

      私やミカや梶やカナやシイちゃんがさ

      ずーと 泊りがけで この部屋でプロット考えてるんだよ

ミカ    え、役はそのままの名前?

レイ    いいじゃない うん 面倒くさいし

      なんか いつもの私たちがさ 舞台にいるような感じがいい

      プロット考えなきゃいけなくってあせってるのに      

      いつものように話が脱線してさ

      バカ話になったり

ミカ    シイちゃんの恋バナになったり

レイ    梶は寝てたり

ミカ    カナはこっそり漫画読んでたり

レイ    うん そういうのがいい いい いい

ミカ    ふふ 

レイ    私の大好きな場所だ 私の大好きな時間だ

ミカ    そして私は脈絡もなく突然 歌を歌ったり


 

 



      ミカ 鼻歌のように歌う

      それはミカが最初に歌った歌

      子守唄のような鎮魂歌のような

 

 



レイ    何?その歌 どこかで聞いた

ミカ    ん なんだっけ あれ~ ど忘れ

レイ    レイクイエムっぽいね

ミカ    れくいえむ?

レイ    もしくは子守唄かな

ミカ    こもりうた?

レイ    うん どこかで聞いたよな~どこだったかな

      なんとなくいい歌だよね それ

      そうだ その歌 最後に天使に歌わせよう

      歌いながら ゆっくり緞帳が下りてくる

      うわ いい よくない?

ミカ    自画自賛(笑う) あんまりよくイメージわかないけど 

      まあ レイちゃんがいいならいいんじゃない

レイ    お願い ミカ その歌 思い出しといてよ

ミカ    うん わかった なんとかがんばる

レイ    そんでね 実は天使は私たちの中に こっそり紛れててさ

      彼女の夢で一緒に楽しんでるんだよ

ミカ    私たちの誰かに?

レイ    そう 例えば ミカとかさ

ミカ    私?

レイ    うん

ミカ    私は天使ってガラじゃないなあ

レイ    天使はね 本当はもっともっと 人間と 触れ合いたかったんだよ

ミカ    うん

レイ    でも そうなる前に人間はミサイルどんどん撃っちゃった

ミカ    うん

レイ    だから せめて最後に彼女の夢の中で触れ合いたいんだ

      それでね 人間の彼女もさ 夢の中で うっすらと気づくんだ

      ああ もしかしたら 私はもうすぐ死ぬんだ

      そして これは天使の見せてくれている夢なのかもしれないって

ミカ    …

レイ    でね 紛れ込んでいる天使に言うんだよ

      素敵な夢を見せてくれてありがとうって

ミカ    …

レイ    (ミカに)ありがとう

ミカ    …

レイ    うん なんかできた感じっぽい

ミカ    ああ うん いいと思うよ

レイ    本当?

ミカ    本当

レイ    やった

ミカ    よかったね よーし私もがんばって 考えよ

レイ    うん さあノートにまとめるかな ふわあ

ミカ    あ また あくび 

レイ    ごめーん なんか 出来上がったらちょっと ほっとしちゃった

ミカ    レイちゃん ちょっと寝たら 寝たほうがすっきりするよ

レイ    だって

ミカ    大丈夫 私のプロットが思いついたら 起こしてあげるから

レイ    ええ なんか悪いなあ

ミカ    おお レイちゃんが遠慮してる さっきは 平気で寝てたのに

レイ    やっぱ起きてよう

ミカ    いいよ 寝てなって そして起きたらすっきりとした頭で

      私の作った最高傑作のプロットを聞くの いい?

レイ    起きたら?

ミカ    うん 起きたら

レイ    じゃあ うん わかった ちょっとだけ ごめんね

ミカ    うん 

レイ    そうだ 

ミカ    え 何

レイ    明日さあ 部活終わったら みんなでベニヤのカレー食べに行こう

ミカ    ふふ 好きだなあ

レイ    だめ?

ミカ    いいよ 明日みんなに聞いてみよう

レイ    やった ふふふ 楽しみだなあ 明日

ミカ    楽しみだね

レイ    ふふふ おやすみ ミカ

ミカ    … おやすみ レイちゃん

 



      3

 



もう一人  彼女は

ミカ    …眠った 

もう一人  そう

ミカ    明日を夢見ながら

もう一人  明日?

ミカ    ああ 無くなった未来

      来ることない明日の夢

もう一人  そう でも それは仕方がないんだ

ミカ    仕方がない?

もう一人  ああ 未来が無くなったのは 人間が滅びを選択したからだよ

      人間は神々の審判の前に 愚かにも自らの手で滅びてしまった

ミカ    うん そうだね わかってる…

      でも 彼女はそれを望んではいなかったよ

もう一人  …ああ

ミカ    僕はこれほどまでに天使であることを

      疎ましく思ったことはないよ

      彼女にとって明日が来ることが

      その先に未来があることが大切だったんだ

      人に干渉できない天使の僕にできることは

      人類の 最後の一人である彼女に

      夢を見せてあげることぐらいだ

もう一人  …私は この地から去るよ

      この地上で行うべきことは もう何もないからね

      君らと争うことも

      …君はどうするんだい ミカエル

ミカ    もうしばらく ここに残る

もう一人  そうか… (去ろうとする)

ミカ    ねえ ルシフェル

もう一人  ん

ミカ    人間は愚かだ

もう一人  うん

ミカ    それでも 僕は 人間が好きだったよ

もう一人  …ああ

 

 


      もう一人 去る

      ミカはレイを抱きおこす

 

 


ミカ    おやすみ レイちゃん

      おやすみ 人類

 



      ミカ 静かに歌う

 



      暗転

      歌だけが聞こえる

      子守唄のような鎮魂歌のような

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