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第一話:洞窟へ

前回のあらすじ!


寝て起きたら森の中!

川だ!水だ!

誰お前(水面をのぞきつつ)


「ええ? 誰この子……。あ、でも顔つきはあんまり変わってない。他の誰かになったんじゃなくて、髪と目の色が変わって身長が縮んだだけ……だけって表現できるものじゃないなあ」


 赤い目、ってことはアルビノか何か? でも別に光に弱かったりはしないし、どうなんだろう……。

 髪の色と目の色が変わって、印象も大きく変わった自分の顔をぺたぺた触りながらひとりごちる。あ、ほっぺたプニプニ。それこそ小学生くらい。え、もしかして身長が縮んだんじゃなくて幼くなったってこと?

 なんか変な薬でも飲まされた?


 それで、服装は……なんかうちの高校の制服っぽい? というよりはうちの制服そのものかなこれ。私が縮んだのに合わせて小さくなってるけど、見慣れたブレザータイプの制服だ。

 嘘でしょ? 森歩くのにスカートって自殺行為じゃん。


 と、とりあえず、自分の状態の確認は他にできそうなこともないし、次は水の状態の確認を進めようか。

 口に含んでみて……あ、普通に美味しい。大丈夫っぽいかな?


「水の確保はできたし、次は……食料? それとも身を隠せる場所かなあ」


 そう呟きながら、周りに何かないか確認していると、川の向こう岸に小さい洞窟があった。

 洞窟……。あそこ、風除けとかに使えないかなあ。雨とか降ってきた時とかに使えると便利だし、ちょっと確認してみようかな。

 川を横切って、その洞窟に近づく。んー、見た感じ割と頑丈そう? とりあえず天井が崩れることもなさそうだし、次は中を見てみようか。


「お邪魔しまーす……。いや、これはなんか違うね」


 挨拶しながら一歩踏み出す。見回すと、この洞窟が外から見たより大きい……深い? とにかく意外と大規模なものだとわかる。具体的には奥が見えない。


「こんなに大きい洞窟なら奥の方に何か居たりするかもしれないし、他によさそうな場所を探そうか……な?」


 洞窟を出ようと、振り返ろうとして足に力を込めた瞬間、先ほどまで何の問題もなかったはずの洞窟の地面が突然崩れ、穴が開いた。


「え、ちょっ……きゃああぁぁ?!」


 そして、崩れる地面を蹴って落下を防ぐようなことのできない一般人たる私は、間抜けな悲鳴をあげながら落下していくのでした。






「―――ぁぁぁあああっ! あうっ!」



 急に落ちたからすごい悲鳴をあげちゃったけど、意外と深くなかったのか、痛いところといえばさっきちょっと打った腰くらいで、捻挫もない。

 それにしても、なんで急に? 踏み込んだ時は別に不安定そうな感じしなかったんだけどなあ……。

 

「……うわ、思ったよりは浅かったけどこれは無理だね」


 結構勢いよくぶつけたはずの腰があんまり痛くなかったし、なんか浅かったっぽいから頑張ったら戻れないかなと思って上を見上げると、ちょっと無理そうな高さ。

 具体的には7、8メートルくらい? これでもいろんな運動部に誘われるだけあって身体能力にはそこそこ自信あるけど、流石に3メートル以上垂直跳びするのは無理でしょ。

 しかも身体小さくなってるから身体能力落ちてそうだし。


「となると、この空洞が他の場所に繋がってることを祈るしかないかなぁ……って、あれは」


 日光が微妙に刺しているからか意外と明るい空洞の中を、横穴が空いてたりしないか周りを見回していると、左手に……うん、宝箱かな? があった。こう、日本のゲームやってる人が見たら9割頷きそうな、ザ・宝箱って感じの。

 とにかく、そんな感じの宝箱が置いてあった。

 ……ええ?


「なんで宝箱なんだろう。もしかしてこの洞窟ってダンジョン的な何かだったのかな」


 あ、ちゃんと出口ある。よかったよかった。

 にしても、この宝箱開けても大丈夫かなあ。手元に何もないから、何か入ってそうなこれは開ける一択なんだけど、ゲームだと罠がかかってたりするんだよね。

 気をつけながら開ければいけるかなあ。宝箱で罠って言えば……毒ガス、爆弾、呪いとか?

 普通なら呪いとかありえないって言うんだろうけど、今日だけで不思議体験を何回か体験してる私には真面目にあってもおかしくないと思える。


「そーっと、そーっと……」


 変な匂いも変な音もしない、隙間から罠っぽいものも見えない、体調が悪くなったりもしてない……。罠はなかったのかな?

 結局完全に開け切れた。中身は……袋?

 そんなマトリョーシカじゃあるまいし。しかもこの袋妙にふわふわしてて中身わかんない。


「えいっ……うわ、何これ気持ちわるっ」


 袋を開けて覗き込むと、明らかに外から見た体積と中の空間が釣り合ってない不思議な袋だった。

 わかりやすく言うと、未来から来たロボットが持ってるやつみたいな感じ。ちょっと言い方はあれだけど、端的に言って気持ち悪い。


「中身どうやって取り出すんだろう……手入れたら中身わかったりしないかな」


 そう呟きながら手を入れると、残念なことに中身はわからなかったけど、手に当たるものが二つ。

 一つは多分本。しかも結構分厚いやつ。

 もう一つは……なんだろうこれ。なんか細長くて、軽く曲がってて……。

 とりあえず取り出してみようか。まずは本。表紙は……何語なんだろこれ。あ、でもなんかなんて書いてあるのかわかる。異世界もの特有の言語チートか何かかな。


 ちなみに、夢だから読めるって言う説はあんまり有力じゃない。さっき水飲んだ時とか普通に美味しかったし、腰はまだ痛いし、多分この現状は夢じゃない。


「えっと……『ゴブリンでもわかる魔法入門』?」


 え、魔法? これは異世界説が、それもファンタジー世界説が有力ですね。さすがに気分が高揚します……ではなくって、これって魔法の参考書みたいなものなのかな?

 後でちょっと読んでみよう。私も魔法使ってみたいし。


 それはそれとして、もう一つの細長い何かを取り出す。

 ……え、これってもしかして……。


「……刀?」


 袋から出てきた、「細長くて軽く曲がっている」それは、私が時代劇とか、お父さんの実家とかで見たことのあるものよりも短いが、見た感じはやっぱりよく知る日本刀なのでした。

 目測だから正確な長さはわからないけど、だいたい50センチくらいかな? 小太刀って言うんだっけ、こう言う刀。


「うわぁ、普通に切れそう」


 ちょっと鞘から引き抜いてみたけど、普通に刃がついてる。お父さんが日本刀大好きでよく見せられてたからわかるけど、これ普通にいい刀だよね?

 いざとなったら使うけど、あんまり使いたくないなあ。絶対私じゃうまく使えないよ。




 なんか便利な魔法とか書いてあるかもしれないし、次はこの本の中身を読んでみようかな。ちょっと壁に寄りかかって……よいしょっと。

 えーっと、『魔法とは生きとし生けるもの全てが……






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――





「―――以上が基礎魔法の一覧である』」


 この本は鈍器になりそうなほど分厚いだけあって、魔法の使い方とか、理屈とかについてかなりわかりやすく書いてあった。

 魔法は生物に宿る魂の力、魔力を消費して発動する術で、詠唱とか魔法陣とかを使って使うらしい。

 あとは魔力を体外に放出できるのは人間と魔物、あとは魔獣くらいだとか、魔力の感じ方とか色々。


 それに、この本は魔法の図鑑的なものでもあるらしく、今のところ見たのは基礎魔法って言う、一番簡単な部類の魔法で、他の魔法の元になる、魔力を変質させる基礎の基礎部分だけだけど、この本には上級魔法までの詠唱と魔法陣が書いてあった。

 

 ちなみに、魔法には基礎、初級、中級、上級、英雄級、精霊級、神話級の7段階があるらしく、普通の人間が勉強して使えるのは英雄級までらしい。


「初級魔法は後にしよう……。この洞窟がどんな構造をしてるのかは知らないけど、暗かったら光の魔法が使えるかもしれないし、やっぱり読んでて正解だったね。確か―――『光よ(ライト)』」


 基礎魔法には、自分の魔力を基本属性である火水風土光闇の6属性に変質させる魔法しかないらしく、6種類だけだったので詠唱が簡単だったのもあって難なく覚えられた。

 魔力が切れたら気絶するらしいけど、体感でどのくらい使ってるかはわかるから流石に切れそうになったらわかるでしょ。

 

「さて、本を袋に戻して、魔法も消して……。よし、この横穴からちょっと外見てみようかな」


 そーっと外を見てみる。なんかよくわからない生物……というかゴブリン的なのと目があった。やっべ。

 とっさに体を戻してもう一度外へ見てみる。さっきより近づいてきてる。やっべ。

 しかも今度は走ってこっち来た。明らかに敵対的な反応、と言うか下品な視線してるし、これ私薄い本的展開になっちゃわない?

 どうしよう、逃げ場ないし、戦うしかないの? 私別に武道とかやってないんだけど……魔法も使えそうなのないし。まさか水で溺死させるわけにはいかないしね。


「うう、怖い……」


 小太刀を引き抜いて、正面に構える。

 ゴブリンが入ってきて、こっちににじり寄る。変な笑い声をあげながら寄ってきて、手に持ってた棍棒を振り上げて――――


「…………え?」


 ゴブリンの首が飛ぶ。

 気がつくと、体が勝手に動いて、私が持ってた刀がゴブリンの首を切り落としていた。

 ゴブリンの首から血が吹き出る。とっさに後ろに飛びのいて血がかかるのを防ぐ。


「っ……うぷっ」


 あ、やばい、吐き気が…………。


「ん、ぐっ。はあ、はあ」


 喉の奥あたりまできたものを飲み下して、刀を見る。

 私、普通の刀使ったことなんてなかったんだけど……体が勝手に動いたし、この刀ってなんか変な魔法でもかかってるのかな。妖刀か何か?


 でも、助かった……刀についた血を振るい落として鞘に収める。

 ほんとは脂とか拭ったほうがいいんだろうけど、紙とかないし、後回しだね。


「ゴブリン? の死体を見ないように外行こう……あれ?死体消えてる?」


 もしかしてこの刀妖刀確定? 魂とか血とかの代わりにしたいでも吸い込んだの?

 ……あ、いや! そういえばさっきの魔法の本にちっちゃく書いてあった気がする。

 確か、魔物と魔獣の違いをTIPSで書いてる欄に、普通の生き物と違って魔物は死ぬと体が魔力に分解されるとかなんとか書いてあったような。

 ってことはあのゴブリン? 魔物なのかあ。


「とりあえず行こう」


 横穴から覗いて……左右に道が分かれてるね。とりあえず上に行く方に向かおうかな。ええっと、右かな?

 いつ魔物が出てきてもいいように、刀は抜いとこう……それと、『光よ(ライト)』っと。

2019/7/2、服装に言及していないことに気づき加筆

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