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はるか傍らの少女  作者: つづら日和
第三章 浅草百笑
49/63

4ー4

 隣が相変わらず静かだ。て言うか…

「この本を開けるためには己の血肉を捧げよとか中二病じみたこと書かれてあるけど、やって無いんだよな?」

「流石にしてないよ!」

 慌てて否定された。でも、この本を見た時には開いてたんだよな。

 最初は見たことのない本の形をしていたため、いかにも解読不明の文が書かれてあると思ったが、ページをめくったそこに書かれてあったのは日本語だった。しかも手書き…書くというより彫るという方が正しいかもしれい。文字の色は黒ではなく水色だ。…それにこのカクカクとした丁寧な字…これは浅草の筆跡とすごく似ている。

「…これ、浅草が書いたんじゃないのか?」

 書いてある内容があまりにも中二病じみていたため苦笑いしながら問う。

「私も最初はそう思ったよ?だけど、こんなの書いた記憶がないよ。」

 確かに浅草が「右腕が疼く」みたいな発言をしているところは想像がつかないけど…。

「こんな本、気にしなければいいんじゃないのか?」

 相談にのっていて、こう言うのもおかしな話かもしれない。

「だって、私の身に覚えもないものが書かれてあるんだよ?気にならない?」

 気になるよ。だって無関係じゃないんだ。この本にバッチリ『佐竹祐希』って記されてたんだからな。

「で、もしかしたらここに書いてあることを実行していったら何かがわかるかもしれない…と?」

 いたずらっぽく笑いながら浅草は、

「うん!楽しそうでしょ?」

 と言った。

 幼い頃の僕だったら即答してたんだろうなぁ。だけど、今は正直にあまり気乗りがしないの。

 でも、まぁ…楽しそう…か。

「分かったよ。」

「やった!」

 ガッツポーズをして喜んだ浅草は「相談してよかった」と笑った。


 本に書かれていた内容は良く分からない部分もあったが主に4つ。人物表、地図、解放の仕方、あと浅草の成長記録…本当にこれ、浅草が書いてないのか?…でも本人が気味悪がって持ってきたものだ…それに普通は自分で自分の成長記録は書かないだろう。

 この本の中で一番分からないのは解放の仕方っていう部分だった。いかにも中二病ぽく、もっとも胡散臭い。そして一番何言ってんのか分からない内容だった。

 人物表に書かれてた内容も不可思議なことが多く、気味が悪い。人物はあいうえお順に並んでおり、空白だらけだ。僕のページ欄なんて酷いもので2ページ丸々空白だった。一行目に年齢と性別…合ってるのか知らないけど体重と身長。多分おおよそはあってるのだろう。最近は測ってないから本人もよく把握して無い。そして次に陽希の名前もあった…こっちもっと酷く途中からページが真っ黒だった。


 実行すると言っても、地図に書かれてあるところに行く簡単なものだ。気味悪くても突然何かが起こる訳じゃない。


 じゃあ浅草が帰った今、何でこんなに悩んでるんだよ。本の内容か?全体的に胡散臭いし怖いよな。頭に何かが引っかかってても無理はない。

 僕は引き出しを開けた。…多分何かを取り出すために。

「今、何で開けたんだろ。」

 引き出しの中にはまだ使われてない新品ののりや消しゴム等の筆記用具があるだけだ。特にどれかがなくなりそうなわけでも無い。

 

「あぁ!!もう!」

 ビックリしたぁ。隣の部屋から陽希が大声で叫ぶのが聞こえた。

 そして、僕は陽希と僕の部屋をしきる壁を訝しげに見つめる。この壁、そこまで厚く無いよな?と今更ながらに思った。さっきの話なんて陽希が聞いていたら真っ先に行きたい!って言いそうだ。…ずっと静かだったのはこの部屋で聞き耳を立ててたからじゃ…。陽希ならやりかねないと思ったけど聞かれてないと思っておこう。


「ご飯できたわよー!」

 一階から母さんの声がする。

「お腹空いたー!」

 さっき何に叫んでいたのか分からないが陽希がすぐ反応して降りていった。

 遊園地は来週の日曜日。来れない人が多いと言ってテスト期間に予定を入れようとした犬塚の案よりはまともな日だ。ただ、部活のある人は通常どうりにある。

 僕は、少し色んなことを考えて立ち止まったが、タイミングよくお腹がなったので下へ降りることにした。

 

 そしてこの後、恋バナ好きの母さんにさんざんいじられる羽目になる。

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