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はるか傍らの少女  作者: つづら日和
第1章 始まり
4/63

0ー3

「え?なんで?」 

 その生き物は確かに日本語でそう言った。

 その頃の僕は外国人はみんな英語を喋るものだと思っていたくらいなので、さほど気にとめなかったが人でないものが日本語を話すのは異様な光景なんだなぁと今では思う。その生き物が普段日本語を話しているようには思えないし、翻訳など、かなりの面で優れた頭脳を持つ生き物なのかもしれない。

 

 僕はぽかんと立ち尽くしていた。急に銃口を向けられたうえに赤い光に包まれたんだ、ポカンともする。

「もしかしてっ!」

 そう言って僕へと手(?)を伸ばす

 伸ばした手の輪郭が危うい、スライムのような液体でのようなものが僕の方へと伸びてくる。その手は僕の持っているリュックサックを奪おうとした。

「だめ!!」

 僕は慌ててカバンをぎゅっと持つ。

「これは渡さない!」

 子供がおもちゃを譲らないように…僕はそれを誰かに渡したくなかった。そんな、今となっては結構小さな理由なのだったのだか、その時にかなり勘違いを起こされてしまったようで、

「あなたは反逆者なの!!」

 と驚いたような声で言われた。

「へ?」

 『反逆者』という聞き慣れない単語を聞いて僕の思考が停止した。大体、幼い子どもに反逆者とは失礼な。その単語を聞き呆然とする僕を見てその生き物も理解したのだろう「こいつ何も知らないな」と。


「あー…えーと…

 困りながらそう言うと、サァーとその生物の体が変形していいった。水色のジェルになった生き物の形はどんどん人型になり、やがて、

「すっごぉ」

 そこに現れたのは幼い少女の姿だった。もともとそこまで身長が変わらないから大きさはさっきと一緒ではあるが、同い年くらいの子どもの姿になって前より親近感が湧く。

 見た目は、当時売られてた人形にそっくりだった。茶色のツインテールに白い肌…服はそのままだけど、デパートのおもちゃ屋のショーウィンドーに飾ってあった物にそのままだ。

 さっきの店で見た物を見様見真似でやったかもしれない。人形のような人間に見える見事な出来前。


「そのリュックにあるもの、返してもらえないかな?」

 生き物はニコッと微笑んだ。

 もともと声は可愛らしかったけど、この姿だと余計に可愛らしく思える。どうやら、僕が害のないものだとわかって、平和的に解決したいようだ。さっき、銃を向けられたんだけどな。


 この時の僕は銃を構えられた時点でその場の流れにあまりついていけてない。なぜなら、生き物についていった→かっこいい機体→かっこいい!!→撃たれる→謎の光出現→女の子になる。対応能力が高い子供でさえ、目が回るようなうつりかわりの速さだ。

 しかしこの訳の分からないこの状況で石だけはどうしても渡してはいけない…いや、渡したくない!と思う気持ちは何故か変わらなかった。

「僕のだもん!!」

 昔の僕、本当に物欲すごいあるなー。今の僕ならすぐ渡している。

 僕のその答えに対して生き物は、

「私のだもん♪」

 と優しい言い方と同時に微笑みの圧がかけられる。無頓着な僕でさえ、「これは笑ってない」と怖さ感じた。

 しかし、怖じけづけかけながらも僕は引かなかった。

「い…一緒に来てくれるならいいよ!」

 当初の目的は父さんと母さんに信じてもらうことだ。石を渡して二人に信じてえるなら、僕としても嬉しい。そう思っての言動だった。何故か上から目線の条件提示する度胸があったのかは知らないし、今の僕が知りたいくらいだ。

 数秒間、生き物が無言で僕を見つめてくる。  

 やがて説得するのを諦めただろう。ハァ…とため息をついた。

「私のなんだけどなぁ。」

 困ったような顔をして頭をかく。

「ねぇ、君。困った子ではあるけど悪い子じゃないのはよく分かるよ。私にも君のような好奇心大勢の弟がいたから不思議に思って興味を持つつのもよく分かる。なんか、弟と重ねちゃうだよなぁ。今すぐその石を奪い取って、銃で数秒前の記憶を消そうかとも思ったけど…」


 そう苦笑いしながら言うと、


「何だか私は、君に納得して石を返してもらいたいと思えたよ。」

 

 そう言うと、生き物の手が僕の頭へと伸びてくる。今度は何かを奪い取るような怖い手じゃない。温かな優しい感じがする手だった。その手は、僕の頭を優しく撫でた。第三者から見ると同い年くらいの女の子に撫でられる…少し情けない光景だけど、少女はとても歳上のお姉さんのように思えた。実際そうなのかもしれない。


「私はマル。君の名前は?」 

「佐竹祐希!」

 元気いっぱいで答える。


「そう、ユウキくん。一緒には行けないけどその代わりに、私がいいもの見せてあげる。」


 マルがそう言うと、ふわぁとあたりが光に包まれていく。

マルの優しい微笑みが暖かな光によってどんどん薄れていった。

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