6ー2
僕は駅についた。
走ってきたのは初めてだ。
結構、しんどい。
「どうしたの?」
後ろから声がして振り返る。
そこには制服姿の浅草がいた。
「今、帰りか?」
息を整えながら聞く。
「うん、部活で今日はかなり遅いんだぁ。」
浅草は、もうヘトヘトだと言う感じて肩を上下させた。
もう八時だ。女子が一人で出歩いていい時間なのか?
浅草は、僕の様子を下から上まで見たあと、
「どうしたの?何か、急いでるみたいだけど…。」
と言った。
今から陽希を…と言いかけて僕は考える。
今僕は、彼女と改札前で出会った。
つまり、学校帰りの浅草は電車を降りたばかりになる。
的はずれなことを聞いていると知っていながらも、僕は浅草に一応確認する。
「浅草が今乗ってた電車って北口…?」
その問いに、浅草は何を言っているのかとキョトンとし、
「学校帰りなんだから、西口のホームだよ?」
と、当然のことをかえされる。
それはまさに今、僕が乗りたい電車だった。
つまり…新快速もないこのド田舎で30分くらい次を待たなければない。
「あのさ、さっきから聞いてる?」
浅草がふいに顔を覗き込んだ。
うつむきながら心の中で、あぁ〜っっ!!と叫ぶ僕の、鼻と鼻がスレそうなくらい近くに浅草の顔があった。
僕は驚き、仰け反る。
「そんなに後ずさらなくても…」
と言う彼女対して、なぜか僕の動機は止まらない。
あぁもうっ!こんな時に何考えてるんだっ!
僕は気持ちを切り替えるべく、深く息を吸った。
陽希を、探さないと。
「浅草、どこでもいいっ!陽希を見てないか?」
「えっ!?ハルくん?」
いきなり聞かれて、浅草は驚き、
「見て…ないけど。」
とおずおずと答えた。
やっぱり見てないか。
「なんでもない、ありがとっ!見つけたら連絡くれっ!」
僕はそう言うと立ち去ろうとした。
ーパンッ
その瞬間、浅草が僕の腕を掴む。
「私はまだ何も聞いてない。ハルくんが居ないの?駅に来たってことは行く場所があったんでしょ?」
彼女は、僕に問い詰める。
ジーと見つめて、百笑は僕の返答を待っていた。
その瞳は僕がはぐらかすことを許さない。
「あぁ…。陽希がいないんだ…。」
僕は百笑から視線をそらすと、うつむきながら言った。
「でもっ!乗りたい電車がっ!」
行ってしまった。
それなら、他の方法を考えないといけない。
家に帰って、母さんに事情をごまかして連れて行ってもらうか、財布を取りに行ってタクシーを呼ぶか。
まだ、待つより動いたほうがいいっ!
僕は律ちゃんとも誓ったんだっ!
それにカエラちゃんが絡んでると嫌な予感がする。
僕の心の中は、一気に言葉にできない程たくさんのことが目まぐるしく回った。
「でも、急がないといけないでしょ。家から駅まで自転車で5分以上かかるんだよ?目的地に行くためにあちこち動いてたら、電車を待っているのと時間が変わらなくなるよ。」
困った子だなぁと、百笑は僕に苦笑する。
そんなの僕にも分かってる。
「でもっ!
僕が口を開くと、浅草は真剣で見つめる。
そして、パシンと両手で僕の顔を挟む。
「大丈夫。絶対に見つけるから。」
僕を見て、彼女はフワッと微笑んだ。
僕はどこで成長の仕方を間違えたんだろう、そう思うくらい百笑はとても頼もしく見えた。




