3、目覚めの悪い昼下がり
「兄ちゃんっ!!兄ちゃんっ!!」
おぼろげな中、陽希の声がする。
兄ちゃんはまだ眠いんだ。寝かしてくれ。
「兄ちゃんっ!!」
さっきより大きな声で陽希が呼びかけている。
それを無視して、僕は眠り続けた。
陽希ももう声をかけてこない。諦めたのかもしれない。
おやすみ。
ードンッ
突如、腹にかなりきつい衝撃が襲った。
「いったっ!!」
僕は痛みで起き上がった。
そこには片足を上げた弟が「いつまで寝てるのっ!!」と頬を膨らましていた。
こいつ、兄を蹴りやがったな…。
僕は怒りをぐっと抑えた。起きなかった僕も悪いのだ…弟の前では心の広い兄でありたい。
目がさめた場所は、とある公園の木のベンチの上だった。ご丁寧に机と屋根まである。
「あれ?なんでこんな所にいたんだっけ?」
周りではしゃぐ子どもたちを見ながら考え出す。
よく覚えていない。
「遊びに来たんでしょっ!」
陽希が「何言ってるの」という顔で見つめる。
「兄ちゃんは全然遊んでくれなかったけど」
かなりふてくされている。
そうか、僕らは遊びに来てたのか。
…でも、なんでこんな遠くの公園にわざわざ?
「僕友達できたんだよっ!!」
自慢げな表情をして、陽希は砂場の方へ手を振る。すると、砂場で遊んでいた子どもたちが陽希に手を振りかえした。兄ちゃんもあんな社交的な人になりたかった。
空は日暮れ、カラスが山へと一斉に帰っていく。
そう…山へと。山………
「なんか忘れてないか?」
僕が陽希に質問する。至って真面目だ。
「門限っ!」
と陽希は元気よく答えた。
いや…門限もそうだけど、それではなかったんだよなぁ。
僕は必死に考える。だけど駄目だ。何か忘れているような気はするけど、それが何なのか全くわからない。
にしても門限かぁ…もんげん………、えっ?ちょっと待ってっ!
「今何時だ!!」
「5時っ!」
まずいっ!母さんに叱られる!!
駅がかなり離れているんだ。早めに帰らないと5時半には間に合わない。…いや、もう手遅れか。
僕は急いで机の上においてある弟のリュックを背負って、駅へと走ろうとする。
砂場にいる子達が陽希に向って「バイバイっ!!」と言っている。みんな自転車にまたがって、今から帰るようだ。
「陽希、はかったな?」
僕は陽希を睨んだ。
こいつは門限の時間を知ってた、なのにあえて言わなかった。
理由は簡単だ。ただ単に友達と長く遊びたかったからだ。
陽希はニシシッ!と笑う。
そりゃ怒られるのは僕だから陽希はいいだろうよっ!!
僕らは駅へと駆け出した。




