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はるか傍らの少女  作者: つづら日和
第1章 始まり
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3、目覚めの悪い昼下がり

「兄ちゃんっ!!兄ちゃんっ!!」

 

 おぼろげな中、陽希の声がする。

 兄ちゃんはまだ眠いんだ。寝かしてくれ。


「兄ちゃんっ!!」

 さっきより大きな声で陽希が呼びかけている。

 それを無視して、僕は眠り続けた。

 陽希ももう声をかけてこない。諦めたのかもしれない。

 おやすみ。


ードンッ

 突如、腹にかなりきつい衝撃が襲った。


「いったっ!!」

 僕は痛みで起き上がった。

 そこには片足を上げた弟が「いつまで寝てるのっ!!」と頬を膨らましていた。

 こいつ、兄を蹴りやがったな…。

 僕は怒りをぐっと抑えた。起きなかった僕も悪いのだ…弟の前では心の広い兄でありたい。


 目がさめた場所は、とある公園の木のベンチの上だった。ご丁寧に机と屋根まである。

「あれ?なんでこんな所にいたんだっけ?」

 周りではしゃぐ子どもたちを見ながら考え出す。

 よく覚えていない。

「遊びに来たんでしょっ!」

 陽希が「何言ってるの」という顔で見つめる。

「兄ちゃんは全然遊んでくれなかったけど」

 かなりふてくされている。


 そうか、僕らは遊びに来てたのか。

 …でも、なんでこんな遠くの公園にわざわざ?


「僕友達できたんだよっ!!」

 自慢げな表情をして、陽希は砂場の方へ手を振る。すると、砂場で遊んでいた子どもたちが陽希に手を振りかえした。兄ちゃんもあんな社交的な人になりたかった。


 空は日暮れ、カラスが山へと一斉に帰っていく。

 そう…山へと。山………

「なんか忘れてないか?」

 僕が陽希に質問する。至って真面目だ。

「門限っ!」

 と陽希は元気よく答えた。

 いや…門限もそうだけど、それではなかったんだよなぁ。

 僕は必死に考える。だけど駄目だ。何か忘れているような気はするけど、それが何なのか全くわからない。

 にしても門限かぁ…もんげん………、えっ?ちょっと待ってっ!

「今何時だ!!」

「5時っ!」

 まずいっ!母さんに叱られる!!

 駅がかなり離れているんだ。早めに帰らないと5時半には間に合わない。…いや、もう手遅れか。


 僕は急いで机の上においてある弟のリュックを背負って、駅へと走ろうとする。


 砂場にいる子達が陽希に向って「バイバイっ!!」と言っている。みんな自転車にまたがって、今から帰るようだ。


「陽希、はかったな?」

 僕は陽希を睨んだ。

 

 こいつは門限の時間を知ってた、なのにあえて言わなかった。

 理由は簡単だ。ただ単に友達と長く遊びたかったからだ。


 陽希はニシシッ!と笑う。

 そりゃ怒られるのは僕だから陽希はいいだろうよっ!!


 僕らは駅へと駆け出した。


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