~長い一日~
キールがトロール達を追って、村につく。
トロール達は真っ先に、観光客に襲いかかる。それを止めに入った兵士は棍棒の重い一撃に弾き飛ばされる。そこは悲鳴と恐怖の坩堝と化していた。
剣の選定の参加者たちがトロールに向かっていくが、棍棒のひと振りに、一人また一人と倒れてゆく。
そんな中、全てを薙ぎ払わんとする炎が昇る。
「っち、守りながらってのはやりずらいねえ」ナーガルの魔術、その炎はトロールの一団を業火の中に落とし込む。
”魔術ってのは、出しちまうと、あとは制御がきかんに、こう散らばってるのは…”
その思考を巡らすナーガルの視界の端を、かけ向ける暴力が一つ。
「いかん、おにげ!!」声の先には、観光客だろう、赤毛の女の子がいた。
ナーガルは思考を巡らすが、自分が持てる手札では、どれを使っても巻き込んでしまう。
「間に…、あえ…!!」その暴力に向かって駆けていく。すれ違う刹那に足を切りつけ体勢を崩し、前にでる。
キールだ。
「馬鹿坊主、早くお逃げ!!」ナーガルは声を上げるが、今度は自分に向かってくるトロールの対処で思考を持っていかれる。
キールの目には、女の子の家族だろう、女の子に逃げるように声をかけている。
「ごめん、ヴェイン、ばあちゃん、この人たちをオレの家族と同じ目に合わせたくはないから」矢筒は、空になって捨て手元には抜いた剣のみ、それも大型の獣を解体する為の包丁ように使ってたもの。さっきは、上手く足を切り抜けられたが、あんなのは意識を向けられてなかったから上手くいっただけだ。
トロールの前で、深呼吸を一回する。体勢を崩したトロールが起き上がりながら、こちらに殺意を向けてくるのが分かる。後ろの家族は、どうやら奥さんらしき人が逃げる際、転んだらしい。家族に支えられてるが…
どうやら、起き上がたトロールも、後ろの状態に気がついたみたいだ。
その瞬間、殺気が後ろに映るのを感じた。家族を狙っている!、キールはそう感じた瞬間飛び出していた。
「こっちだ、バケモン!!」声と共に斬りかかる。
流石にトロールも意識をキールに移し、そこで棍棒を振り払う。
”キン”
持っていた剣を飛ばされてしまった。その事実が、キールを青ざめさせる。
”マズイ、マズイ、マズイ、このままだと死ぬ、せめてやれることは!!”
剣を弾かれて、体勢を崩しながらキールはさっき浸けた傷口に、全力で蹴りを入れる。
トロールの、汚らしい悲鳴が木霊する。だが、もう完全に終わりだ。
トロールを足止めできたはいいが、こっちには剣もなく、無理に蹴りにいったので、倒れふしてしまった。おじさん、ばあちゃ……、とキールが走馬灯に入ろうとしたとき
「剣士さん、これ飛ばされた剣!!」と赤髪の女の子が、キールに駆け寄り、剣を渡す。
”馬鹿、なんで逃げなかったんだ!!”即座に、思考がどうすれば良いかを考える。
受け取り、闇雲に”敵”に向かって剣を振った。
”トロールが、真っ二つになった”
その光景が、目に映ると同時に、キールは意識を失った。