序章1
魔法と緑に溢れる世界、「ヤハウェ」実り豊かな大地に、人々はそう名付け、生を享受していた。
だが、楽園は長続きしなかった。地の底から這い出た、魔物たち…、そして王によって、楽園は蹂躙された。
魔の闊歩により、世界は混迷し、人々は絶望した。
そんな絶望の中、一人の英雄が現れた。全てを切り裂かんとする剣と、山が歩いてるような威圧感を放つ鎧を纏い、魔物と、その王に戦いを挑んだのであった。
英雄は激闘の末に、遂に魔物の王、”魔王”を討ち果たしたのだ。
しかし世界には、完全なる平和は訪れなかった。魔王の肉体は滅んだが、人々の絶望を糧に、精神の存在となって、再起の時を待ちわびながら、魔物に、己が糧を生み出すように言い残し、永き眠りについたのであった…
英雄は、己が鎧を、魔物たちが、この世界に上がってきた空間の裂け目「魔の穴」の封印に、己が剣は、魔王から奪った武具と共に、世界を守る楔として、世界に残した。いつか必要な時の為に…
***
世界は平和になりました、めでたしめでたしって行かないのが、この伝説みたいで、
英雄が鎧で塞いだってされてる、魔物があふれ出てくる穴ってのも、完全に塞げてないから、魔物も完全に消えた訳じゃない。この時期になると母が読んでくれた神話の話を思い出す。
そもそも、伝説で言われている、穴と言うものが、どんな物なのか分かっていない。
それでも伝説を誰も疑わないのは、魔物は時々襲って来るし、伝説の剣や、各地に残された武具、それは聖剣や、聖槍なんて言われて、世界中に点在している。今でも見つかると、そこに行く人が増え、旅人の為に宿などができ、そこから発展して、そして村が生まれるほどだ。
なぜ、人々がそこに行くかだって?それは、その武器を抜くためさ。
残された武器たちは、封印を受けて、使い手を待っている…らしい…?
その為か、国で戦士を集めて、武器を引き抜ける人を探したりしている。魔物が、また活発化しているからだ。
俺が住んでる村も、そんな経緯で出来た場所で、子供の頃に聖剣に触って、抜けないか遊んだりしていたもんだ。
「キールー準備手伝って」
いけない、叔母さんが呼んでる、”選定の儀式”の準備を手伝わなきゃ。
しかし毎回抜けない剣を、抜くために人が集まるもんだよ。
そしてキールは、手伝いに駆け出していくのだった。