ヒロイン?
突然ですが、最後の部分を変更しました。
……プロット作ろうかな(´・ω・`)
2020/11/22 追記
全体をブラッシュアップ(改稿)しました。
最後の部分どころじゃねぇな(遠い目
小さい窓から赤い光が差し込みはじめた頃、リサさんが研究室にやって来た。
若干名残惜しい気もしたが、こちらの都合を押し通す訳にはいかず、ラングさんとの実験は中断させてもらった。
その後三人で休憩室に移り、軽い自己紹介と面談。リサさんとラングさんの判断で仮採用が決まり、現在は『何か一つ研究を仕上げる事』が課題として出されている。
課題を通して自身の有用性を証明できれば、晴れて本採用、ギルドの仲間として受け入れるとのこと。
「さて、何をしたものか」
自室には向かわず、さっきまでリサさんから聞いていた話を思い返す。長時間に亘る講義だったが、チート能力として頼んでおいた『完全記憶能力』のおかげで、今でも一言一句思い出せる。
「早速役に立って良かった。記憶についてこだわった甲斐がある」
とりあえず聞いた話を自分自身でまとめてみよう。
魔法研究ギルドと冠しているが、研究対象が魔法である必要は無い。というか、『魔法は一般人が使えるものじゃない』だそうだ。
この世界の魔法は、どうやら発動に厳しい条件があり、一つの魔法を使うために、ダンジョン最深部に眠る『短杖』『モノクル』を身に着け、特定の詠唱をする必要がある。
それらの道具は一つのダンジョンにつき一セットしかなく、しかもそれに対応する一つの魔法しか使えない。
必然的に魔法の価値は上がり、貴族や王族のように財産があるか、ダンジョンを攻略した本人しか魔法が使えないらしい。
「儀式が手間とか、そういうレベルでもないんだよなぁ」
普通に生きていれば関わることがないもの、それがこの世界における魔法だ。
じゃあ魔法研究ギルドは何をしているかというと、大半が資金調達のための研究らしい。
研究結果は錬金術師ギルドや薬師ギルド、商業ギルドや鍛冶師ギルドに売り、そのお金を魔法の道具を借りる為に使ったり、研究が上手くいっていない人間に補助金として渡したりするらしい。
それなら端から他のギルドに行けば良いと思うかもしれないが、それこそがここ、魔法研究ギルドの人気がない理由だ。
「他と比べて自由にできるとはいえ、それが良いとも限らないしな」
決められたことをするほうが、安定で、かんたんな事に違いない。それに比べてここは何でも自分でやらなければならない。
それができるのはよほどの努力家か、天才か、明日を生きるのに困らない不老不死くらいだろう。
「すぐに魔法を使えないのは残念だけど、二番目くらいには魔法に近い、か」
一番は自分自身の手で魔法を手に入れること。とはいえ、そのための知識を得ないといけないし、案外良い選択をしたかもしれない。
研究についてだが、実のところ、もう終わっている事にもできる。
皆さんご存知の知識チートを使えば良いのだ。
魔法研究ギルドとしては、価値のあるものが手に入って嬉しい、こちらとしても研究する手間が省けて嬉しい。
「ま、そんな事はしないけどな」
特にお金に困っている訳も無いのに、他人の努力を盗んだり、自分を過剰に大きく見せる真似はしたくない。
他にも知識チートをしない理由は多々あるが、最大の理由は面白くないから。
長い人生になるんだ、多少の手間を惜しむようでは、直ぐに暇になってしまうだろう。
だが、しばらく考えてみても、いまいち良い案浮かばない。
「うーん……深く考え過ぎなのかなぁ」
研究という言葉のせいか、少々大袈裟に捉えてしまったのかも知れない。
ぱっと思いついた内容が『ピストンの工作精度に左右されないエンジンの仕組み』とか『人間に必要な栄養を、すべて最初から兼ね備えた植物の作り方』みたいに、どうも現代日本基準でも難しい内容しか出てこない。
「もっと身近なもので良いかもな。よし、聞いてみよう!」
一応、研究内容も自分で考えないといけない事にはなっているが、少し助言をしてもらうだけなら良いだろう。
「でも、誰に聞くべきだろうか」
リサさんはもう既に寝ている。日が沈んだら寝て、太陽が登ったら起きるという生活をしているそうだ。曰く、そのほうが人間関係を広げやすいから、とのこと。
逆にラングさんは今でも起きているだろう。だが、研究に熱中しているため、声をかけるのは難しい。気が引けるとも言う。
「明日でも良いかな」
眠る必要が無いから、できれば夜の間も作業していたい。とはいえ研究以外にもやる事は沢山ある。
「剣とか硬貨を確認しておこうか。いや、不審がられないように、眠ったふりでもしようかな? ……足音?」
そう、足音だ。
ラングさん、ではないな。あの人は研究室に籠もっているはずだ。ならリサさんだろうか。
……ああ、そうだ、さっき挙げた二人以外にも研究者はいたんだっけ。
「もしリサさんじゃなかったら、挨拶しておかないと」
まだリサさんとラングさん以外とは顔を合わせていない。
リサさんの様子から考えると、他のギルドメンバーへの紹介はまだだろう。不審人物と思われるに違いないが、自己紹介はしなければ。
もしものときは二人のどちらかに説明してもらうということで、当たって砕けましょう。
「夜だから誰も来ない、って油断していたな」
夜にしかできない研究、例えば星に関係する事とか、そういうのを研究対象にしている人なら、この時間に活動していてもおかしくない。
実際、星の研究をしている人もいると聞いた。
どうすれば驚かさずにいられるのか、そんなことを考えている内に、扉の前まで足音が迫っていた。
内開きの扉が開く。
そこに立っていたのは女神だった。
……いいや、確かに可愛さは女神級だが、そういう意味じゃない。
透き通るような銀髪、きれいな肌、青い右目がランプの明かりに照らされる。ぱっと見、転移を担当してくれた女神様に見えたが、左目が赤いことからあの女神様ではないとわかる。
「いやいや、女神は地上に降り立たないだろ、普通に考えて」
彼女に聞こえないよう、口を抑えモゴモゴと独り言。
気を取り直し、自己紹介の準備。先手必勝、勢いで押し込めば問題ない、はず。
そう思い、彼女を顔を見た。
「え?」
彼女の目には涙が浮かんでいた。
それを認識した直後、
「ラクさん!」
「ごふぉっ!?」
強烈なタックルを食らった。
「ラクさん、また会えて良かった。もう、私、会えないかと……」
何がなんだかわからない。抱きつかれていることはわかるが、何故抱きつかれているのかわからない。
しかもこれは、泣いている?
突然の事に動揺し、されるがままにされていた。