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プロローグ


「死んだらしい」


 今、俺? 私? はトラックに撥ねられ、気がついたら真っ白な空間に居た。


 一人称の所で吃ったが、別に記憶が無くなったり自分の性別がわからないという事はない。

 ただ、17年生きてきた中で、まともに一人称を使った経験がなかったので、いざ使うとなるとどれを選ぶべきか悩む。

 『うち』や『儂』『妾』『朕』以外なら問題ないのだが、選択肢が多すぎて逆に困る。


 一人称の決定も重要な課題として、今はもう一つの問題も解決しなければならない。


「これは所謂テンプレなのでは」


 トラックに撥ねられるという稀有な経験をした、というか人生で二回以上トラックに撥ねられた人物がいるのかどうか怪しいが、その後真っ白な空間にいるというのは、『異世界転生』もしくは『異世界転移』のジャンルにおいて、使い古された導入だろう。

 現実にラノベの『お約束』を持ち込むのはどうかと思うが、他にこの状況を説明できる知識を持ち合わせていないため、やむを得なくそうしている。


 そういうのを期待していない、と言えば嘘になるが。


「その通りです」


 突然、鈴を転がしたような綺麗な声、いいや、それだけでは言い足りないほど、この世の神秘を体現したかの様な綺麗な声が聞こえる。


 後ろを振り向くと、女神がいた。

 きっと比喩ではなくそうなのだろうが、見た目からして人間離れした美しさが溢れ出ている。

 透き通るような肌、曇り一つない銀髪、地球の青さに勝る美しさの碧眼、まさに神だ。


 そして、若干頬が赤い。


「なるほど、心の声が聞こえるパターンでしたか」


 テンプレと言えども、神様が心を読めるかどうかは作品によって違う。

 読めたからどうという話ではないのだが、気になるものは気になる。好奇心的な意味でもプライバシー的な意味でも。

 口に出していない言葉に反応し、照れている事から、どうやら心が読めるみたいだ。


 と頭の中で解説している間、女神の顔が赤くなり、こめかみに青筋が立っていく。


「まさか、この私をからかったのですか!」

「それこそまさか、ですよ。言っている事はあくまでも事実だけですし」


 そう口にすると、女神は赤くなる。

 いや、元々赤かったけど、怒っている時の赤さではなく、照れている時の赤さに変わっている。

 赤がゲシュタルト崩壊しそう。


「ごほん。さて、……どうしてここに呼ばれたか、説明して頂けないでしょうか」


 流石にこれ以上神様をかr……神様の可愛い姿を見るのは無礼だと思うので、本題に入るよう促す。


「そ、そうね」

「異世界転移ですか?」

「そうよ」

「転生ではなく?」

「そうよ」

「転移先は剣と魔法があり、中世ヨーロッパ風ファンタジーの世界」

「そうよ……って、私にも説明させてよ!」

「あ、すみません」


 ここまでは想像できる範囲だったし、肝心な部分以外を話す労力を減らしてあげようという気遣いだったが、どうやら裏目に出たらしい。


「まぁ、悪気がなかったのなら、私も文句は言わないわ」

「ありがとうございます。で、チート能力はありますか、ないですか?」

「質問禁止!」

「あ、はい」

「最後に話を聞いてあげるから、それまでは静かに聞いてよね」


 という訳で、女神様の話を要約すると、こうだ。


 女神は神だが、役割的には天使に近く、創造神から『嗚呼ー、暇だー、最近流行りの異世界転移でも、ちょっくら起こしてくれんかのー』と指示(命令)されたため、こんな状況になっている。

 異世界に行って何かを成し遂げろ、という事はないそうだ。


 チート能力は貰えるらしい。

 勿論それにも理由があって、チートは確かにズル(チート)だが、身寄りのない人間がまともに暮らそうとするなら、多少の反則技がないと、にっちもさっちもいかないとのこと。


「じゃあ、チート能力を決めるんだけど、何か要望はある?」

「チート能力を作る能」「却下」「了解です」


 『一つ願いを叶えてもらうなら、叶えてもらう願いを1グーゴル(10の100乗)個にして貰う』作戦は失敗した。


「うーん。だったら不老不死、いえ、自分が死にたいと思ったら死ねる不老不死にしてください」

「それはどうゆう事?」

「……人間の精神力で悠久の時を過ごすのは、多分無理です。心が壊れた時、どんな力を持っているか分かりませんし、人生を終わらせたい時に終わらせられた方が良いと思います」


 不老不死の『負の面』を描いた作品は多くある。

 それらをフィクションだと軽んずるよりも、対策を打っておいた方が良いはずだ。


「あ、空腹になって苦しくなるとか、そういうのは勘弁してください。でも基本は人間と同じで、ご飯を食べても問題ないようにお願いします。あと寝られないのも嫌ですね」

「ちょっと待って、今言った事と他の要望も、この紙に書いて」


 そう言って女神はA4のコピー用紙とボールペンを、どこからともなく取り出した。



 ――能力についての要望を書き続けること、20分弱。


「女神様、できました」

「ん? あ、ああ、分かったわ」


 女神は椅子に座り、紅茶を飲んでいたらしく、『あれ? 何の話だったっけ?』みたいな顔をしたが、あえてツッコまないでおく。


「心読めること分かっててそれをするんなんて、尚の事質が悪いじゃない! ……まぁ、良いわ」


 紙を渡すと、女神様はいつの間にか用意していた机の上に起置き、『これは問題なし』『これは、どうだろう』と呟きながら、要望の横にチェックを付けていく。


「……後ろから覗き込まれると、落ち着かないんだけど」

「暇になってしまったので」

「それもそうね。じゃあ、なにか質問ある?」


 作業をしながら彼女は問う。


「そうですね。能力以外のサポートはありますか? 例えば家を貰えるとか、ステータスが高いとか」

「残念ながらそれは無理ね。むしろ、そういうのを与える代わりに、一つだけ強力な力を与える事になっているから」

「言葉は?」

「日本語と同じよ」


 作業をしながら会話をしてくれる女神様は、キリッとしていてかっこいい。

 褒められた程度で赤くなっていたとは、到底思えない姿だ。


「――この中から、与えられるものと与えられないものを分けたわ」


 紙を差し出されたので、受け取って確認する。


「基本的には大丈夫だけど、『切り取った体の一部が、別個体として再生する』とかは無理ね。……プラナリアにでもなりたいの?」


 その指摘は的確だ。


「駄目で元々、あれば分身的な感じで楽できたでしょうけど、自分が何人もいるのは絵面的に最悪ですし、無くても良いかなとは思っていました」

「じゃあなんで書いたのよ」

「『出来る』と『しなければならない』は別ですからね。出来る事が増える分には問題ないかと」

「それと、『丈夫さは人間と同じ』『再生のタイミングは自分で遅らせる事も出来る』ってどうゆう目的で入れたの? 問題はないけど」

「一応、不老不死は隠しておきたいですからね。そういう能力があれば、一般人の振りも出来ると思って」


 すべてラノベの受け売りなんだけど。


「『完全記憶能力』『痛みを感じない』『任意の記憶を消せる』『意識の外付け』……まぁこの辺は問題ないわね。他に聞きたいことはある?」

「んー、あるといえばありますが、これ以上聞いて楽しみを減らすのは何ですし、もう大丈夫です」


 不老不死だから、情報が足りなくて死んだ、というのも起こり得ない。

 むしろ、分からない事が多いくらいじゃないと、長い長い人生を過ごす中でやる事が無くなってしまう。……かも知れない。


「じゃあ、そろそろ転移させても良いかしら」

「宜しくお願いします」


 段々と眠くなる。

 これが転移する前の儀式だろう。


「女神様、対応してくれたのが貴女で良かったです」

「え!?」


 女神様の驚いたような、照れたような顔を最後に拝んで、転移した――


 質よりも量を求めた方が、結果的に質も良くなる、という話を聞いたような聞かなかったような……(・Δ・;)

 という訳で、ぼちぼちと書いていきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 会話シーンが多くて情景描写をしやすいです。 [一言] 僕も文章力を磨くために小説を書いてます(最近は休みがちですが・・・)。お互い頑張りましょう!
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