4.魔王(新生児)魔法習得中
数ヶ月もすると、昼間中魔力の循環を行っていても気を失うことがなくなった。
ある程度は魔力も増えたと考えていいだろう。
では次に、この魔力で如何に外界へと働きかけるのか。
体内で循環することは簡単に出来る。というか循環だけでなく自由自在に動かすことが出来るようになったけどな。右手に魔力を集めたり、体全体に張り巡らせたり、全身の皮膚だけに集めて体を覆ったりね。
この体内での魔力の移動の延長で体外へと魔力を集めることは出来ないだろうか。
まあとりあえずやってみることにするか。
とりあえずはいつもの両手の指を合わせるようにして、気持ちいつもより丸く構える。
その丸く構えた両手の内側から漏れ出した魔力が真ん中に向かって渦巻くように集まるのをイメージする。
………うまくいっているんじゃないかな。目には見えないが直径1cmくらいの球状に魔力が渦巻いているような気がする。
ただ渦巻いているのいいんだが、これをどうしたら火やら水やらになるんだろうか。
火、つまり燃えるという現象は酸素と可燃物と熱源の三要素がなければ起こらないはずだ。
この世界に酸素はあるんだろうか。
炭素原子からなる生物が生きていくには酸素元素は酸素の状態か二酸化炭素の状態で必要なはずだ。この体が本当に炭素原子から出来ているのかはわからないが、見た感じや触った感じでは前世と変わりない気がする。うん、きっと酸素はある。
次に可燃物だ。
燃える物ってことだけど、元素で言えば水素もそうだし、きっとある。
最後に熱源だ。
燃えるには最低着火エネルギーってのが必要で、可燃物によってそのエネルギー量は違う。たとえばガソリンは火花で着火するけど灯油は火花くらいじゃ着火しないって具合に。
じゃあ着火エネルギーが低いもので試すのがいいんだろうけど、そのエネルギーをどうやって作るか。
あれこれエネルギーを作り出す方法を考えていると、手がじんわりと熱を感じ始めた。
どういうことだ?おそらく渦巻いている魔力から熱が発生し始めたのはわかるけど。
………摩擦熱かな。渦巻いている魔力のなかで空気中の元素同士が擦れて摩擦が生じて熱を生んでいるのかも。これは着火エネルギーに使えるな。
それじゃあ酸素と水素の混合ガスを作って摩擦熱で着火してみるか。
酸素と水素の混合ガスをどう作るのか。もうイメージだよね。
ここまで魔力感知やら魔力の放出なんかでもイメージから入って結果的に出来たからね。
渦巻く魔力にさらに酸素1個と水素2個が混合するイメージを加えてその3個のみが渦巻きながら擦れ合うように魔力を操っていく。
とふいに小さくポッという音と共に小さな爆発が起こった。
やった、火(正確には水素爆発)が起きた。
まだ小さな火を起こしただけだが、魔法が使えることが証明された。
ずいぶんと科学的な魔法だが。
なによりもイメージが一番大切だということがわかったことが一番嬉しいことだ。
イメージ次第ではもしかしたら本当になんでも出来るかも知れない。
原理をイメージさえできれば空を飛ぶことも可能かも知れない。夢が広がるぜ。
火の原理や炭素の件は正確ではありません。ご了承ください。