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第九章 大好き


昨日家に帰って来てから、ずっと、部屋に閉じこもって居た。


みんなから、電話が来てたけど、出ることはなかった。


その時、外で「りかこ〜」って、呼んでる声が聞こえた。


海斗たちかなぁ??


カーテンを開ける。


朝の光が差し込んで来る、やっぱり海斗たちだった。


「おはよう!!」


「上がっても良いか??」


喋ることが出来ず頷いた。


みんな、黒い服を来ている。


今日は、葬式だった。


カギを開け、みんなが入って来る。


目の下が腫れてる、みんなも辛いんだよね。


利佳子の為に明るく振る舞ってくれて、ありがとう。


「「お邪魔します」」


「これ、お前に渡そうと思って…」


海斗が差し出したのは、結婚届けと、指輪だった。


「結婚届けは、正式には出来ないけど、あいつ書ける所は全部書いて…


正式に結婚出来る日まで、預かっといてくれっ言われて…。


ずっと…俺が、預かってたんだ。


指輪は健の指輪。お前の指輪は、健が付けてる。


あいつの1人で結婚式とか言って、指輪交換してたで…。」


「ありがとう」


今にも、溢れそうな涙を堪えながら、結婚届けに利佳子の名前を書く。


「お通夜…来れるか??」


首を横に振った。


「分かった、結婚届けは、健に…ちゃんと見せるから」


結婚届けに利佳子の名前と健の名前が入った。


「じゃあ、俺たちは行くな」


「じゃあな」


お通夜には行かない、だって…健は死んでない。


りかこの中で生きてるから。


これからもずっと…。


りかこが来た場所は、健とまた一緒に来るって、約束をした…。


湘南の海



海岸を1人で歩いた。


空は、とっても、晴れ晴れとしている。


健…りかこを置いて行かないで。


ただ、それだけがりかこの願いだった。


最後の最後まで、健の気持ちも知らないで、強がってゴメンね。


健は、りかこのこと幸せに出来ないって言ってたけど…そんなことないよ。


とっても、幸せだったよ。


確かに、健は未成年なのに、たばこを吸って、お酒を飲んで、


利佳子の為に利佳子の事を傷つけた人殴って、どうしようもなかったよね。


でもね、それでも、りかこは健が大好きだよ。


たばこを吸ってる健も、


お酒を飲んでる健も、


利佳子を守ってくれた健も、


全部、大好きだよ。


今でも、これからもずっと…。


やっぱり、最後に健に会いたい。


会って伝えたい、


「大好き」だって。


「幸せ」だったって。


時間は、17時…一番早い電車に乗れば間に合う。


走って、駅まで行き、新幹線に乗り、何とか間に合った。


「来たんやな!!」


海斗だ。


「うん、健に伝えたいこと言ってなかったから…。」


健のお通夜には、大勢の人が訪れていた。


その中には、健の笑顔の写真を見て、涙を流す人もいた。


それでも、りかこは健がこの世から、居なくなった何て思えない。


どこかでまだ生きているようにさえ思えた。


参列者の列の一番最後に並んだ。


健の目の前に来た。


手を合わせた。



健…大好きだよ。


幸せだったよ。



その一言を伝えた。


「りかこちゃん!?」


「はい」


健のお母さんとお父さんだ。


「…ごめんね。あの子、ごめんね」


健のお母さんが涙を流しながら言う。


その姿を見て、堪えていた涙が溢れでた。


翌日、葬式が終わり、利佳子たちの所に健のお姉さんが来る。


「今から、健の骨を焼きに行くけど…人数多いから、


3人ぐらいにして欲しいんだけど…車の関係でごめんね。」


「りかこ行くか??」


「ここで見送る」


「本当に良いのか??」


「うん」


「じゃあ、俺と隆と優也の3人で」


健と同じ学年の高3が行くことになった。


健は大勢の人に見送られた。


…もう、健はいない。


あの声も笑顔も…ぬくもりも。


いろんな思いがあるけど…でも今、健に伝えたい事は


「ありがとう」


その事だけ…。



こんな恋があること教えてくれてありがとう。


利佳子のことを好きになってくれてありがとう。


いつも、いつも、家まで送ってくれてありがとう。


健…ありがとう。




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