第一章 出会い
「何度言われたら、分かるんですか!!」
「すみませんでした」
今日も…授業中うるさかった為に、職員室呼びだされた。
「今後、二度とこのような事がないように!!」
「…。」
「分かりましたか??」
「はい。」
―4月
私立の中高一貫校に通っているどこにでも居る、普通の中学生。
毎日のように、怒られている、私の名前は…利佳子。
今年…晴れて、中学2年生になることが出来た。
クラスメートも、先生も変わって、また新しい一年が始まろうとしている。
クラス替えで絶対離れると思ってた、友達とも、また同じクラスになれた。
なんだかんだ、毎日…みんなで笑って、時には先生に怒こられて、とっても楽しい毎日だった。
月日も変わって、文化祭シーズンが来た。
彼氏は「居ればいいなー」とは思うけど、絶対欲しいとは思ってなかったし、今はみんなと遊ぶほうが大事…と思っていた。
そんなある日、小学校時代の友達から、電話が来た。
裕美だ。
「元気??」
相変わらず、とっても、テンションが高い。裕美は、耳にピアスをして、髪の毛が茶色で、いわゆるギャル。
「うん、元気だょ」
「あのね、文化祭のお誘い何だけど、明日〇×学校の文化祭行かない??」
〇×学校は、利佳子の近所の学校で、不良のイメージしかない学校。でも、何も用事なかったし、初めての文化祭だし、行こうとかなぁと思った。
「いいょ」
「本当に↑↑良かった。うち、彼氏と別れちゃってさぁ―」
「まぢで!!」
「だから、ここの文化祭で彼氏を作るの―↑↑」
「OK!!」
「じゃあ、明日…いつもの場所に10時ね。」
「了解。じゃあね」
「うん。」
「ばいばーい」
次の日、10時に待ち合わせ場所に行くとまだ、裕美は来てなかった、15分くらいして、裕美が来た。髪の毛は金色で化粧はいつもの2倍ぐらい濃く、ピアスはいつもより大きいものを付けていた。
「ゴメンー。化粧に時間掛かっちゃった。」
「全然いいょ。てか、朝ご飯食べたー??」
「食べてなーい。」
「じゃあ、食べてから行こう。」
「良いよ!!」
朝ご飯も食べて、いよいよ、〇×学校に行く!!
来ている女子中高生は、ほとんど、ギャル。自分がとっても浮いていた。
入る前に、裕美はもう一度鏡を確認して、髪の毛をいじっている。
「どこのクラス行く??」
「んー。ここが良い!!」
パンフを見ながら、裕美が指した教室は、高校3年生の
[出会いの場]
と書かれた、教室だ。
何か、とっても怪しい教室だった。けれど、お構いなしに裕美は、その教室に入って行った。
入った瞬間、ウチらの方に、誰か来る。一人は、髪の毛は金色で鼻にピアスをしている。もう一人は髪の毛は黒でブラウスが第三ぐらいまで開いている。どちらもとっても怖そうだ。
「可愛いね。俺らと遊ばない??」
「うん。遊びたーい」
「えっ!!」
思わず言ってしまった。
「嫌なの―??」
「別に…」
「じゃあ、決まり」
仕方なく、裕美の後ろを着いて行く。椅子に座り、自己紹介をした。
「俺は、神山 慎吾よろしく!!」
髪の毛が黒い方。第一印象はとってもテンションが高い。
「桐山 健よろしく。」
髪の毛が金色の方。第一印象は、無愛想。
「松本 裕美です。ちなみに、今、彼氏募集中です。」
「戸山 利佳子です。よろしく!!」
最後に、噛みながらも、自己紹介をした。
そして、一時間ぐらいして、利佳子を除いてみんなとっても、盛りがっていた。
裕美に耳打ちをして、何とか、教室から抜け出した。
廊下にあった椅子に座っていると、前から、誰かが来た、髪の毛が金色…さっきの人だ。
確か名前は…健。
「こんなところで何やってんの??向こうでみんな、盛り上がってるょ!!」
「何か、メールが来てたみたいで…。」
とっさに、嘘をついた。
これが健と初めて喋った言葉だ。
この時は、まだ、これから起こることなど想像もしていなかった。
「何か、あっちの二人も盛り上がってるみたいだし、俺らは、どっか違う所行かない―??」
このまま、一人で居るのもつまらなかった…。
「いいょ」
「どっか行きたい所ある??」
「特にない…。」
「じゃあ、屋上でも行くか??」
何の為に屋上に行くのか分からないけど、取りあえず、怖かったから、「うん」と答えた。
「利佳子は彼氏居んの??」
「居ないょ」
こんな会話をしながら、屋上に着いた。屋上には5・6組カップルが居た。こんな所に居るなら、今すぐ、裕美の所に行きたかった。
「あの辺に座るか??」
「うん」
椅子に座り、沈黙が続いた。
その瞬間、健は、利佳子の頭を引き寄せて利佳子の唇と、自分の唇が重ねる。
あまりに強引で身動きが取れない、健の舌が利佳子の舌と絡み合う、健は、利佳子の体をゆっくり、椅子の上に倒す。ヤバいと思い、何とか…健を離した。
「何すんのよ!!」
その場から飛び出した。
健は後を追っては来なかった。
さっきの教室に戻ると慎吾と裕美が居ない、当たりを見回すと廊下の端の方で、慎吾と裕美が抱きあっていた。そのまま、見ない振りをして、家に先に戻った。
帰る途中、携帯がないことに気がついた…。
いつ落としたんだろう??
健と屋上に行く時はあった。
きっと、走ってる時に落ちたんだ。
仕方なく、屋上まで戻ることにした。
階段を上がってると、前に、健が居る。
ふっと見ると、健は利佳子の携帯を持っている。
今は、健とは喋りたくなかったけど、携帯なきゃ困るし、気づいたら足が動いていた。
「あのー携帯。」
「さっきはゴメンな。いきなり…。」
謝られる何て、思ってもなかった。
「いえ、別に…」
「はい。携帯!!」
「ありがとうございました。」
キスされたのは、びっくりしたけど、健が携帯を拾ってくれなかったら、今頃、携帯は見つかっていなかったかもしれない。
「あのー。」
「何や??」
「ありがとうございました…。」
「良いから!!まぢでゴメンな!!」
「いえ…もう良いです」
気がつけば、お昼過ぎだ。
「お腹空いたな―??」
「利佳子もお腹すいた!!」
「じゃあ、たこ焼きでも食べるか??」
目の前でたこ焼きを売っていた。
「うん。食べる↑↑」
「いくら―??300円くらいで足りるかな―??」
「奢るから!!」
「良いの―!!ありがとう。」
利佳子はいつだって、健のそういう、さり気ない優しさが嬉しいかったよ。大好きだったよ。
椅子に座って、2人でたこ焼きを食べる。
「お前、口にソースついてるぞ」
「えっ!!どこー??」
「動くなよ!!」
健の手で、利佳子の口についていた、ソースをとってくれた。
「ありがとう」
顔を真っ赤にしながら言った。そんなことしてると、裕美と黒髪の慎吾がこっちに来る。2人は手をつないでとても、ラブラブだ。
その姿を見て、健は…
「俺らもラブラブな感じ見せようぜ」
そう言って、利佳子の手をとった。これが、初めて手をつないだ時だったね。
「りかこー!!」
裕美が走って来る。
「あれ、2人ラブラブですね―」
「まぁな!!」
「ウチも慎吾とラブラブなのー!!」
とっても嬉しいそうだった、それに、裕美は、彼氏を探しに来たわけだし、良かった。
「じゃあ、あたしたちトイレに行って来ます、なので、ちょっとの間りかこを借りますー」
言わなくても良いことを…。と、思いながらも、トイレに行った。
「で、健さんとは…どうなったー??」
「どうなったって、言われても…」
今思えば、健と慎吾も、ウチらが居なくなった瞬間に、こういう話をしていたのかなぁ??と思う。
「ウチは、慎吾と付き合うことにした!!」
「まぢで!!」
普通だったら、1日で付き合うなんて、有り得ないけど、さらだから、あまり驚かなかった。
「おめでとう」
「ありがとう」
「りかこも健さんと頑張ってね」
「うん」
裕美には、キスされて逃げだして、携帯落として、戻って来たことは言えなかった。
「じゃあ、二人とこ戻ろう!!」
「うん」
戻って、また、4人でいろんな話をした。何となく時間も過ぎて、文化祭の終わりの時間が来た。
「これから、カラオケ行かなーい??」
裕美が提案した。
「賛成」
もちろん、慎吾は賛成した。
「俺も、賛成!!りかこは??」
「ゴメン↓↓塾!!」
「じゃあ、俺送るわ」
「えっ!!良いょ。近いし気にしないで、カラオケ行って来てー」
「女を1人で帰す奴は居ないから」
「ありがとう」
そうやって、いつも利佳子は健の優しさに惹かれていったんだね。
それまで、黙っていた、慎吾と裕美が冷やかした。
「メッチャお似合いやでー」
「りかこ良かったね」
「別に付き合ってるわけじゃないしー」
「じゃあ、俺らはカラオケ行くか―??」
「行く↑↑」
「じゃあね―」
「うん。バイバーイ」
テンションが高い2人が居なくなり、何か…ほっとした。
「じゃあ、俺らも行くか」
「うん」
と、言って…着いた場所は自転車の置き場。
「俺…自転車だから、後ろ乗れるか??」
「うん。多分…」
もちろん、男の人と、2人乗りするのは、初めての体験。緊張しながらも後ろに乗る。
「ちゃんと、掴まれょ」
軽く、背中に掴まった。
「飛ばすから、もっと、ちゃんと、握ってなきゃ、落ちるぞ」
と言って、りかこの手を掴み、自分のお腹の方に回す。
「家どっちの方??」
「ん―踏み切りの方」
とっても、短い距離なのに、とっても、長く感じた。
「ココかぁ??」
「うん。今日は、ありがとうね。」
「電話してもいいか??」
「いいょ」
電話番号とメールアドレスを交換した。
「じゃあ!!」
「バイバーイ」
あの時…健に出会っていなければ、携帯を落としていなければ、こんな苦しい思いをしなくて良かったのかもしれない。
こんな、恋を知らずに済んだのかもしれない。