夕焼け皐月、始まりの赤
「物足りねぇ」
「えー? なんか言ったかー?」
夕焼けが容赦なく俺の目を攻撃してくるから、涼太の姿もよく見えない。俺と世界をつなぐ大切なゲートを守るため、瞼がその光を代わりに一身に受けて真っ赤に染まる。彼は今、何メートル先にいるのだろうか。
「なんにもねーよ! つーかちょっとくらい待ってくれてもいいだろ!」
「誠一がボーっとしすぎなんだよー! 受験生だからって徹夜で勉強しすぎるのはよくないぞー」
「うるせー」
ああ、眩しい。
「ったく、遅いから迎えに来てやったぞ。俺が頑張って進んだ数メートル、どうしてくれんだ」
「たった数メートルじゃねえか」
「ははは、まあそうだけどさー」
「……志望校、もう決まってんの?」
「ん、まあな」
彼はそこの学生だというだけで親戚の鼻を高くさせるような大学の名前を口にした。俺は、彼といつか肩を並べることができるのか、いささか不安になってきた。大丈夫、そう自らに言い聞かせるしかない。まだ、高校生活もあと10か月ある。
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朝、学校ではみんなそれぞれの時間を過ごしていた。俺はもっぱらその日の提出物を終わらせようとあがいているか、クラスの馬鹿どもと騒いでいるかの二択だ。
「うい~」
腑抜けた声が聞こえた。涼太だ。彼はとても朝に弱い。でも髪の毛はキッチリ整えられている。……まあ、理解はできるが。
「ええ、その提出日、今日だっけ!?」
「そうじゃないならやってねーよ」
「……もう諦めるわ」
「今日、放課後暇だろ?」
「なんだよその聞き方。暇だけど、どうしたの?」
「ちょっと相談したいことがあるんだよ」
「そうか、じゃあ駅前でドーナツでも食いながらどうだ」
「ほんと、甘いもん好きだよなー」
そうこうしているうちに、チャイムが鳴った。




