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百円の彼女  作者: 上村俊貴
綾香と買い物へ
23/23

その1

 「ふうー」

 最後のテストを滞りなく終えた尚吾は、一人ため息をついた。

 四日間続いたテストも今日で最終日だ。

 紗綾の買い物に綾香と一緒に行ったり、紗綾とデート?したりとテスト期間中なのに勉強する時間がほとんどなかったが、全ての科目において、満足のいくできだと思う。

 まあ、それで綾香に勝てるかと言われれば、正直難しい、というか無理だろうが…

 ここ数日、結構な過密スケジュールだったので、今日はさっさと帰ってゆっくりしようと思い、何ができたできなかったという試験あと独特の喧騒に包まれている教室を足早に後にする。

 「しょ……ご……ん…」

 廊下に群がる生徒たちを掻き分け、ようやく校門にたどり着いた頃、後ろから尚吾を呼ぶ声がした気がして振り返る。

 「あれ?おかしいな、確かに今…」

 振り返った尚吾は、尚吾同様足早に帰路についた一部の生徒たちの中に、自身を呼びそうな人物を見止めることができなかった。

 「尚吾くん!」

 「うわっ」

 おかしいなと、怪訝に思っていると、急に横合いから声を掛けられて、思わず情けない声をあげてしまう。

 「驚かすなよ、全く。で、何の用だ綾香」

 「はあ、はあ、ちょ、ちょっと待ってね」

 全力で走ってきたのだろう、綾香は行きも絶え絶えだ。

 「本当に何の用なんだ…」

 基本的に運動することが苦手な(尚吾の言えることではないが)綾香がわざわざは全力で走ってきてまで、尚吾に何の話だというのだろうか。

 どうやら、尚吾が一人で疑問を深めている間に、呼吸を整えたらしい綾香が、歩きながら話し始める。

 「尚吾くん、昨日学校終わってから何してたの?」

 尚吾も、少し早足で歩き出し、綾香のとなりに並びながら、何でもないことのように答える。

 「昨日は、紗綾がデートに行こうって言い出して……っていうか綾香のせいで紗綾がデートに行こうなんて言い出して大変だったんだぞ」

 「…」

 「どうした、綾香?」

 なにやら、様子がおかしい。

 というか、少し怒っているようにも見える。

 しかし、尚吾には全く心当たりがない。

 聞こえてくるのは、綾香のローファーのコツコツという微かな音のみで、会話もなく二人は歩いていく。

 どれくらいの時がたっただろうか、不意に綾香が口を開いた。

 「私とも、して…」

 「え?」

 なんの事かわからず、尚吾が首をかしげていると、

 「私とも、デートしてほしいの!」

 「え、えーと…どういうことだ?」

 呆然としている尚吾に対して、綾香も綾香で自分でも予想外のことを口走ったらしく、ボンッと一気に顔が赤くなったと思ったら、そのまま俯いてしまった。

 二人はしばらく無言で向かい合っていたが、先に復活したのは尚吾の方だった。

 「あー、なんだ、つまりそういうことなのか?その…綾香は俺のことが―――」

 「ち、違うよ、そういうことじゃなくて…あっ、いや違うことはないんだけど…いやでも違うというか…」

 最初こそ大きな声だったが、綾香の声は段々と小さくなっていき、最終的にほとんど聞き取れなくなった。

 食いぎみで否定され、少々ショックだったが、どうやら、そういうことではないらしい。

 しかし、ならどういうことなのだろう。

 綾香に聞こうにもどうやらまだ混乱しているらしく、一人で何事かを呟いている。

 考えていても仕方がないので、とにかく歩き出すことにした。

 すっかり忘れていたが、家では紗綾が昼食を作って待っているのである。

 しばらくして、我に反った綾香が駆け足で追い付いてくる。

 「で、結局、俺に何をしてほしいんだ?」

 尚吾のさっきのことを全く気にしていない様子の訪ね方に、背後でビクッとしたあとに安堵するような吐息が聞こえた。

 どうやら、尚吾の気遣いは綾香に伝わったらしい。

 ひとつ深呼吸をすると、もうすっかり落ち着いた様子で、綾香ゆっくりを話始めた。

 「さっきに急にデートとか言ってごめんね。驚いたよね」

 「ああ、まあな」

 尚吾は、努めて怒っていないことを伝えるため、ことさら気を遣っていつも通りに答えた。

 「怒ってないんだ。ふふっ、やっぱり優しいね尚吾くんは」

 尚吾の気遣いに気づいたのか、少し気恥ずかしそうしながらもそう返してくる。

 「な、なんだよ急に」

 「ううん、なんでもない。それでね、今日は尚吾くんに買い物に付き合ってほしいの」

 「買い物に?」

 あんまりに普通な提案に、デートなどと言われたせいで身構えていた尚吾は肩透かしを食らった気分だ。

 しかしながら、確かに最近綾香二人で買い物には行っていない気がする。

 紗綾を交えた三人でならついこの間服を買いに行ったが、そのときはほとんど綾香と紗綾が一緒に買い物をして、尚吾は荷物持ちだった。

 尚吾が一人思井を巡らせていると、

 「そう、買い物に。ダメかな?最近一緒に行ってないし」

 とそんなことを言ってきた。

 どうやら、綾香も同じようなことを考えていたらしい。

 「よし、じゃあ久々に一緒に買い物するか。」

 「うん!」

 そう言って微笑んだ綾香は、素直な喜びのなかに、微かな後悔が入り交じったような表情をしていたのだが、尚吾はそのことには気が付かないのだった。


更新が遅れて申し訳ありませんでした。

これからは不定期で更新していきますのでよろしくお願いいたします。

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