1話
俺、水野 旭は一人暮らしの大学生活を送っている。地方から東京の大学に受かったため一人暮らしをすることになった。
最初は寮生活を考えたのだが、推薦の人たちのおかげで安価な寮の空き室がすでにいっぱいになっていた。
そして探した結果、今住んでいるアパートが他に空いている寮より安く、さほど大学までの距離も変わらなかったので迷わず選んだ。
唯一の欠点を言うなら、少々間取りが狭く日差しが悪いくらいだ。
金銭のほうは派手な使い方さえしなければ、奨学金と親の仕送りのおかげでバイトをせずに暮らせるほどだ。
こうなると休日や帰宅後は、勉強するか、携帯やパソコンでネットサーフィンやゲームをするしかない。ましてや、今は長期休暇の春休みだ。
「ぬおー、暇だー」
部屋の床の上を横になってゴロゴロ回りながら携帯を見つめる。ついているテレビの音が虚しく部屋に響く。
「友人は今実家に帰省しているし、実家の両親は海外に旅行中だし、ゲーセンとか行くのもめんどいし……部屋でも掃除するか」
部屋を掃除しようと、携帯で見ていたSNSを閉じようとする。
すると、閉じようとする直前に1件ツイートされた。
どうせ宣伝か何かだと思って流し目で見ようと思ってたいら、一見変わったツイートだった。
『だれかDSN☆って奴知ってる? なんかフォローしたことねえのにフォロー扱いになってるんだよ』
DSN☆? 誰だ? どうせ、ハッキングでもされてフォローされたんじゃないのか?
すると、すぐにそれに対してのリツイートが入る。
『あー、それあたしもフォローになってるー><』
『ハッキングされたんじゃねえの?』
『絶対違うって。てかこのアカウント、ツイート一回しかしてないし』
『俺の方はフォローしてなかったー、よかったー』
『なんて書いてあるの?kwsk』
『んっと、The dream is the place that is sick with healing. Como seu crime é?』
『解読班はよ』
『最初は英語で次はポルトガル語みたい。夢は癒しと同時に病む場でもある、あなたの罪は如何ほどか? て意味みたい』
夢? 罪? なんだか何かしらに感化された人みたいだなー
するとまたすぐにリツイートが入る。
『どういうこと?』
『随分またキザな台詞だことw』
この後はただそのアカウントに対しての誹謗中傷しか表示されなかった。
ただ、俺はなぜかものすごく興味がわいたんだ。
部屋掃除なんて忘れ、すぐにパソコンの電源をつけ起動させた。
だって誰もフォローした記憶がないのにフォローしたことになってるんだぞ!! そんなオカルト話に食いつかない手はないじゃん!!!
インターネットを開き、すぐに『DSN☆』と検索した。キーワード欄からすでにいろいろな噂が飛び交っているのがわかる。
「うお、すげえ!!! 色んなこと言われてる!」
フォローを外したら死ぬとか、不幸に見舞われるとか暗い話題ばかりではなく、これをフォローしてフォローされたら幸せになる、願いが叶う等々。
さまざまな噂が飛び交っていて、掲示板にもこれについて書き込まれていた。
このアカウントの人物はすでに死んでいて、このアカウントが作られたのはその人が死んだその日の夜だとか。
それに対しての反論で、それだとフォローするのはなぜ? など色んな討論が起きている。
「おお……こんな都市伝説みたいなのあるんだ…不思議だなぁ、あ! そうだ」
急いで携帯を手に取り、自分のツイッターのフォローを確認した。
だがフォローリストに、そのアカウントの名前はなかった。
「期待して損した……あ、もう風呂入るか。んで、飯食って寝るかなー」
時計を確認するとまだ5時台だが、今日の7時から見たい番組もあったので先に風呂に入ることにした。
「まぁ、いい暇つぶしにもなったし結果オーライか!!」
何事も無駄に前向きに考えろ、と父親に育てられたので全くもって問題はない!!!
お風呂~♪ と歌いながら携帯をテーブルの上において、着替えをもって浴室に向かう。
すると、どこからともなくジジジッ、と音がした。
「ん? あ、テレビ消しとくか」
点いていたテレビを消して、風呂場に向かいなおす。
――本当は、テレビじゃなくて携帯だった。そこには一件メッセージが表示されていた。
『DSN☆さんをフォローしました』
だが、あっという間にそのメッセージはまるで最初からなかったかのように消えてしまったらしい。
俺はそれに気が付くことができなかった。