話の通じない少女
翌日、土曜日だ。
「んー」
朝起きてカーテンを開けて体を伸ばした、洗面所に行こうとした俺の後ろから声が聞こえた。
「おはようございます、奏樹様」
俺は恐る恐る後ろを向いた。
そこに笑顔でいたのは昨日の女の子、見た目は中学二年くらいで少し小顔、髪はショートヘアーで髪から二本の小さな角が見えている。
「あ、あ……」
固まった俺を女の子は昨日の夜中のように覗き込んだ。
「どうされました? 昨日はお疲れのようでいきなり倒れて驚きましたよ、もう少しお休みになってはどうですか?」
どうも夜中の事は夢では無かったらしい、俺は数回深呼吸して冷静になって言った。
「なんのようでようか?」
言いたかったのは「ようでしょうか」だ、冷静になれていたのは一瞬で、俺はガチガチに固まっている。
少女は首を傾げて
「夜中に申し上げたと思うのですが……奏樹様の護衛をさせていただきます、神守笹江です」
「へ? 護衛?」
「はい、護衛です、閻魔様から聞いていると思いますが」
「えん……ま?」
「はい、閻魔様です」
俺は直感した、この子はなんだか危ない子だ、冷静になれ、俺!
「えーと、神守さんだっけ? どこから来たんですか?」
「もちろん審判所です」
「審判所? 裁判所か? 何県だ?」
神守さんは首を傾げて
「けん……とはなんでしょうか?」
「えっと……」
これはキャラ作りの一つなのか、それともなんなのか。
俺は聞こえないように呟いた。
「中二病ってこんななのか……」
「ちゅうにびょう……とはなんでしょうか?」
聞こえてた!!
「えーと……なんで俺の部屋にいるの?」
「護衛の為です」
「どうやって入ったの?」
「閻魔様に送っていただきました」
「…………」
俺は頭を抱えた、話が通じない!
「?」
神守さんの方をみると神守さんは笑顔で返してくれた、違う! 挨拶したわけじゃない!!
一人唸っている俺の後ろから聞きなれた男性の声が聞こえた。