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Mystic Lady ~邂逅編~  作者: DIVER_RYU
第三章『必殺海底仕事人』
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『必殺海底仕事人』 破

ロッサの手掛かりを求め、遺跡に向かう琉。果たして彼を待ち受けるモノとは?

 カレッタ号のライトに照らされる遺跡の光景。所々穴のあいた建造物が、いくつも建ち並んでいる。琉達探検家はこれを“塔”と呼んでおり、探しモノは大抵ここにあることが多い。塔の外には所々クレーターがあり、ここにも戦火が及んだことが伺える。ロッサの“目”はここで発見された。だとしたら、ここで“目”を失う要因があったはずであり、その要因は恐らく戦争か……と琉は考えた。


「ただ洪水があっただけなら、ここで“目”を失うとは考えにくい。恐らくここで攻撃を受けたんだろうな」


 更に目を取り戻した途端に戻った記憶、“母になれ”という使命を帯びたのもここのはずである。琉はアードラーに乗り、更に探索を続けた。


「ガレキ多いな……。その上見る場所も多い。場所を絞ろう……オセルスレーダー!」


 琉の掛け声とともに、額にある三つの単眼を思わせる装置が紅く光かり始める。すると琉の視界にはそれまで見えなかったモノが次々に映し出された。

 オセルスレーダー。ラングアーマーの頭部に備え付けられた装置で、透明度の低い場所や隠れたハルムに備えるために使う。辺りを透視したり隠れたモノを探し出したりすることが出来、面積の広いエリアではかなりお世話になる機能である。


「あの辺りに何かが密集している……。よし、探りを入れるか」


 琉は塔の一つに目を付けた。まだあまり探られていないのか、反応物が多い。


「よし、潜入だ!」


 琉はアードラーを外に停めると、その尻尾にあたる部分からワイヤーを出し、それを持ったまま塔の中に入って行った。以前入ったエリアβの時と違い、今回入る所は結構広い。水中拘束を防ぐため、塔の探索には命綱が必須である。琉はパルトネールの先端から光りを出し、辺りを照らしつつ進んで行った。オセルスレーダーには透視能力はあれど、辺りを照らすことまでは出来ないためである。

 朽ち果てた建物。これは何のために建てられたのだろうか? オセルスレーダーの映す宝を求め、琉は塔の内部を歩く。と、その時だった。パルトネールから音が鳴り始めたのである。


「何、ハルムだと? 何処にいる!?」


 慎重に辺りを探り始める琉。オセルスレーダーにはハルムを発見する機能もあり、琉は額のリボルバーを回してその感度を上げていた。


「キシシシシ……」


 独特の鳴き声が閉鎖された空間に響く。間違いない、ハルムは近くにいる!


「パルトネール・サーベル……」


 剣に変形させたパルトネールを握り、琉は構えた。と、次の瞬間。琉の頭上から謎の粘液が襲いかかって来た。すぐに腰のスクリューを起動してかわした琉だが、粘液は壁に絡みついて溶かし始めた。


「チッ、よりにもよってパントーダか! こんな時に厄介な奴が出たぜ……」


 毒づきながら上を見る琉。そこには、蜘蛛とカニを足して胴体を取ったような外見の奇妙な生物――即ちハルムが張り付いていた。

 パントーダ。ラング装者にはある意味一番恐れられているハルムである。特定のエリアに待ち伏せ、自らのテリトリーに獲物が入り込むとそっと死角から忍び寄り、口から粘性の強い毒液を吐いて絡め取り、捕食してしまうという習性を持つ。毒液には溶解作用があり、絡め取られた獲物はその場で消化されてしまうというモノで、ラングアーマーでもこれをまともに浴びると危険である。しかし本当に恐れるべきは、コイツの毒液は塔の壁をも溶かしてしまうことにある。


「生かしておいたら崩壊する……止むを得ん!」


 事実、このハルムのせいで探索していた場所が崩され、命を奪われた者もいる。パントーダは天井の割れ目から、ふわりと降りて来た。サーベルを構え、対峙する琉。毒液を吐かれる前に息の根を止め、消滅させねばならない。

 壁をつたい、パントーダが琉にせまる。サーベルを構え、柄の先端をひねるとたちまち刀身は光をおびてゆく。迫りくるパントーダを睨んだまま、琉は言った。


「行くぜ……パルトヴァニッシュ!」


 毒液を吹き付けんと口を開くパントーダ。そこに尽かさず、琉は輝く刀身を刺し込んだ。刺したまま、パントーダを真上に投げ上げる琉。パントーダは刺された部分から光を放ちつつ消滅した。


「早く行こう、他にもいる可能性がある!」


 自分自身に言い聞かせ、琉は塔の奥まで急いだ。一方、カレッタ号船内では……。


「わたしの目が、ここに……」


 ロッサは窓から、外の様子を眺めていた。ライトに照らされ、数々の塔がそびえ立つ奇妙な光景。彼女にはそこはかとなく見覚えがあった。しかし次の瞬間だった。


「ハッ!? ここはどこ? カレッタは? 琉は? ……きゃあっ!!」


 気が付けば見知らぬ光景。海中の船の中にいたはずが、いつの間にか陸上の、それも巨大な建物の建ち並ぶ光景にいた。そして何故だか、たくさんの人達がこちらに向かって走っている。そしてロッサの目の前で、突如として爆発が起きた。


「ロッサ、大丈夫か!?」


 ある男がロッサに手を差し伸べる。ボサボサした長い髪、無精髭を生やしており、ロッサの着ているモノとどことなく似た服を着ている。彼女は彼のことなど覚えていない、しかし何処かで会ったような、そんな感じがした。


「ここにいてはまずい、早くしないと……!」


 ロッサは男の肩を借り、そのまま走り始めた。途中で男が何度も話しかける。しかしロッサにはそれが何を言ってるのかよく分からなかった。ただ突然の恐怖から逃れたいために、必死に走る他なかった。やがて二人はある船にたどり着いた。


「ここまで来れば大丈夫だ、あとは安心出来る……。奴ら、こんな所に船を隠してるなどとは気が付かなかったろうな……」


 大勢の人々と共に船に乗り込んだロッサ。必死に走った反動か、彼女は船室に入って椅子に座るとそのまま疲れて眠りこんでしまった。

 どれほど時間が経ったろうか。ロッサが次に目を覚ました時には元の、カレッタ号の船内にいた。


「今のは一体……。それに、さっきの男の人は、誰……?」


 夢から覚めたような覚めてないような、妙な気分のロッサ。今のは何だったのだろうか、そう思いつつロッサは改めて外の風景を眺めた。そびえ立つ塔、あれはかつてもっと高かった。所々に開いたクレーター、あれは爆発によって起きたモノだ。遺跡の光景を見るたびに、ロッサの脳裏には少しずつ先程の謎の光景がリンクしていった。


「じゃあ、あれは……」


 そう思った矢先、突如呼び出し音が鳴り始めた!


「ロッサ、マズいことになった! 今から俺の言う通りにしてくれ、良いな……うわぁッ!?」


 何かを言い終わらぬうちに、琉からの連絡が途絶えた。


「琉? 琉ッ!? 一体、何が……!?」


さぁ、久々にハルムが出て参りました。モチーフはウミグモ、実物は中々グロいですww

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