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Mystic Lady ~邂逅編~  作者: DIVER_RYU
第二章『硬いことは良いことか』
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『硬いことは良いことか』 破

棺について分かったことがある――連絡を受け、琉とロッサは工房に向かった。

 オオトカゲの皮を剥ぎ、肉をぶつ切りにするゲオ。そこに香辛料を加え、大量の油で炒め始めた。皮はなめして使うことが出来る。その横で、琉はサソリを揚げていた。


「琉ちゃんの料理は久しぶりだなぁ。今日は腕が鳴るねぇ」


 アルは素手でサボテンを引きちぎり、皮を剥がして焼いていた。のんびりとした口調で、やっていることは中々豪快である。


「そういやあの棺桶のことで来たんだよねぇ? まずオイラの目からすれば、あれは中々良い大理石で出来てるよぉ。色々くっついてボロボロだったけど、あれは是非ともオイラの鱗に欲しいんだなぁ。一片食べたんだけど、中々旨かったよぉ」


 ディアマンは鉱物を食べ、骨や体表の鱗、髪の毛や爪等に変えている。そして鉱物以外にも、有機物から摂取した炭素が年齢とともに額や首筋といった場所に蓄積され、大きなダイヤモンドが出来るという特徴を持つ。アルの頬には一枚、棺から取ったと思われる大理石で出来た鱗が生えていた。


「あともう一つ、あの棺は埋葬するためのモノではないぞ。いわゆるコールドスリープ装置って奴だ。それも封印解除の際にエネルギーを与え、目覚めた後はすぐに活動できるようにするモノさ。碑文からしても恐らく、彼女は何かから逃れるためにこの処置をされた可能性がある」


 ゲオが言う。確かにこの棺は最初にこれに群がるハルムの血で字を満たし、その上で一杯の清水を与えることで蓋が開いた。ゲオの推測ではハルムを集めてその血からエネルギーを棺に集め、清水を掛けることで水分を補給させるのが目的ではないだろうかということであった。


「そして最後に指定したモノを口に直接入れることで封印が解ける。しかし彼女の場合は液状だったようだな。おれたちでも流石に対象を溶かして封印する技術は聞いたことがない。ということは恐らく……」


「まさか液化した姿の方が本来の姿、てことかい?」


 琉は驚愕した表情で聞いた。


「それしか考えられないよぉ。つまり彼女はヒトじゃない何かってことぉ。流石にそこまではオイラ達の専門外だぁ。そういや、聞いた話じゃあ彼女は母ちゃんになるのが使命なんだってぇ? だとしたら、何処かに同胞がいるかもしれないよぉ」


 アルが答える。つまりロッサの姿は、長身かつ豊満な胸を持ち、腰に達するほど長いブルネットの髪、端正な顔立ちのあの姿はいわば、世を忍ぶ仮の姿ということである。


「いや、ヒトじゃないのは明らかだ。こっちも色々と見て来たからな……。まぁ、続きは事務室にしようか。サソリ揚がったぜ! ロッサ、ちょっと手伝ってくれ」


 ロッサの手伝いで皿を運ぶ三人。テーブルには様々なアルカリア料理が並ぶ。大皿に豪快に盛り付けられたオオトカゲ炒めに、琉の揚げたサソリの唐揚げ、サボテンのステーキに切り分けられたドラゴンフルーツ。どれもこの世界ではアルカリアでしか食べることの出来ない珍味である。


「開けるぜ!」


 琉が自前の泡盛を開けて杯に注ぐ。久しぶりのご馳走に舌鼓を打つ琉に、初めて見る料理に目を輝かすロッサ。見た目は大人でも、無邪気にはしゃぐその姿はまさに子供そのものだった。


(ふっ、相変わらず可愛い子だな……)


 そっと心の中で呟く琉。ロッサは喋るのも忘れて夢中になって食べていた。


「いつもそんな感じかぁい? まぁ、食べ物が美味しいのは幸せな証拠だよぉ」


 杯を片手にアルが言う。相槌を打つ琉。


「そうだ、棺の話の続きといこうか。あれ、一体何年前のだったんだ?」


「あぁ、あれねぇ。おおよそ三千年前に作られたモノだねぇ。三千年前といえばいわゆる“大洪水”と時期が被るんだよねぇ」


 大洪水。遺跡の調査によれば、三千年前のある時期に大きな洪水があちこちで起こり、これで陸地の大半が沈んでいったという。同時に、この時期には大規模な戦争があったらしいことまで判明しているのだ。


「ということは戦火と洪水から逃れるために……」


 琉は考える。ということは、メンシェ教の聖典に書いてあるのは見事なデタラメだということになる。


「それに母になることが目的なら、どこかに男の同胞がいるはずだと思うんだ。しばらくは棺探しを中心にすると良いかもしれないな」


「棺探しも良いけどもっと大事なことがあるよぉ!!」


 アルが何だか悲痛な声を上げた。


「早く水位を下げる方法を開発しないといけないんだよぉ! 知ってる? この一年でソディアは5cmも水位が上がったんだよぉ!? このままじゃディアマンは絶滅だぁ……」


 説明せねばなるまい。約三千年前の大規模戦争と大洪水で、この世界の陸地は約三分の一が一気に海に沈み、推定で四十億人が亡くなったとされている。更にそこからじわじわと海面は上昇し、約三千年かけてまた更に世界の陸地の半分が沈んだことが調査で分かっているのだ。洪水が起きたために戦争が起きたのか、はたまた戦争が起きた所に洪水が起きたのか。その史実は未だ、深海の闇に沈んだままである。

 アルを始めとしたディアマンは水に弱い。鉱物が大量に体に含まれる彼らは、水中に入ると浮上出来なくなるのである。さらに湿気が多いと鱗に苔や藻が生えてボロボロになってしまうのである。事実、遺跡で見つかる遺骨はディアマンのモノが最も多く見つかっていることからもそれが伺えるだろう。

 四種族中最も海への進出が目覚ましいヒトといえども、流石に陸地がなくなっては生きていくことが出来ない。というか、陸地がなくなって生きていける種族はいないのである。船というモノは港がなくなればいつか沈む。それはヒトである琉にはよく分かっていた。


「しかも暴徒化した奴もいるしな。……メンシェ教とかさ」


 生命の危機に見舞われた生物は、何とか生きようと必死になる。そして中には、少ない資源を取り合い罪を犯す者も出始めるのだ。いわば“ヒャッハー”な連中である。メンシェ教はいわば、その筆頭といっても過言ではないだろう。


「社会不安が事件を招き、やがて矛先は弱者に向かう……。その弱者の中に、ロッサも含まれてるワケか」


新たな事実がまた次々と……。実はそこまでお気楽な世界ではないんですw

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