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Mystic Lady ~邂逅編~  作者: DIVER_RYU
第十三章『赤き瞳に映るモノ』
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『赤き瞳に映るモノ』 破

船の仕事を終わらせ、琉とロッサはハイドロに上陸することに。

 ハイドロ島。琉に言わせれば、この世界で2番目に大きな島だという。しかし島のほとんどが山となっていて、家を建てられる場所は非常に少ないのだとか。かつてはこの島に湧く清水を求めて、多くの船が立ち寄った――と琉は語っている。


「その頃は俺も立ち寄った船に水や荷物を運んだりしてさ、色々とお手伝いしてたモンだったよ。しかしあの装置……俺の船にもある、“ソルトリムーバー”が開発されてからは島に来る人が減っていってね」


 ソルトリムーバーとは、海水から塩を取り除き、真水に変える装置である。この発明は水の湧かない島の住人や船乗りといった多くの人々を救ったそうだが、それは同時にハイドロ島の収入源が減ることでもあったのだとか。


「今は野菜と魚を売って細々とやってるよ。幸い山から栄養分が流れ込むせいか、この近海には魚が多い。それでも人は減ってね、同年代で残っているのはカズくらいかな……。あ、アードラーに乗ってくれ」


 琉はアードラーを呼び出し、ヘルメットを被るとハンドルに手をかけた。わたしはいつもの通りに後ろに乗ると琉の腰の辺りに手を回し、そのまましがみ付く。ちょっと前なら琉の心音が手に響いて来たのだが、最近はそうでもなくなった。いわく、わたしと乗ることに慣れたかららしい。


「山に住んだりはしないの? 木を切って、そのまま家を建てたりとか」


「とんでもない、ヘタに木を切ろうもんなら清水が枯れちまうぜ! それに山の中はハルムの領域だ、危険でしょうがないぞ。まぁその対策のために、あの島では武術が発達したんだけどな」


 琉が使う武術。彼はパルトネールを持たない時は空手と呼ばれる体術を使う。わたしも少し教えてもらったのだが、この島ではハルムに対する防衛法として発達したらしい。他にもカズの使う釵術もそうなんだとか。


「他にも色々あるよ。俺が得意なのは空手の他にトンファーや棒術あたりかな。ハイドロの武術はどれもその辺の棒きれで代用出来るようなモノなんだ。最もハルム対策が進んで、集落にあまり現れなくなった今じゃもっぱら健康運動だけどね。俺からすればこれが訓練の時にものすごく役に立ったなぁ……」


 元々棒きれを振り回したりしてたためか、剣や鎖といったモノもすぐに覚えることが出来たとか。特に剣、サーベルモードのパルトネールは棒術で使う棒ほどの大きさなので特に使いやすいのだとか。ただ銃だけはどうにも慣れておらず、苦手意識があるらしい。曰く、一点を遠くから狙い撃つのが難しいからだそうだ。


「……さて、そろそろカズの家に着くかな」


 情報屋のカズ。本当は桜咲和雅という名前らしい。いつもわたしに優しくしてくれる人で、色んなことを教えてくれる人である。カズは釵術の達人でもあり、その腕は琉よりも上なんだとか。家の前にアードラーを停めると、琉は扉のインターホンを押した。


「アイツ、自分で自分のことをハイドロ1の色男なんて言っちゃうけどさ……黙ってさえいれば中々の男前なんだよね。にしても俺の顔はいつになったら成長するのやら」


「やっと来たか筋肉ダルマ! 何をこそこそ話してんだ、とりあえず上がってよ」


 扉が開き、カズが姿を現した。いつも通りの黄色いバンダナに細い眼鏡。


「ねぇねぇ、フローラは?」


「ハッ、ロッサ様! フローラちゃんだったら道場です、付いていらして下さい!」


 カズの案内で家を出る。カズの家のすぐ向かいに、一際大きな建物があった。その建物の庭で、大小様々な5人の子供達がわいわい遊んでいる。その中に一人、赤い目をした子が混じっていた。


「へぇ、1日でもうすっかり馴染んだのか。しかし大丈夫かい?」


「大丈夫。わたしが人前で力を使わないようにしっかり言い聞かせたから」


 フローラは心底楽しそうだった。しかし何処か、服や何かが変わっているような気がする。ドレスの丈が何となく短くなり、頭に何か付いているのだ。


「……なぁカズ、フローラの服装だけどさ……」


 琉も気付いたようだ。


「服装? 動きやすい姿を教えてあげただけですが何か?」


 悪びれた様子もなく、カズは平然と返した。


「絶対アンタの趣味が入ってるだろ」


「何を言うか、幼女にスパッツは正義だッ! あ、大人になっても良いかも……ムチムチしてて」


「ハァ、相変わらず好みの幅が広いな、異常なまでに。……そういや、ロッサは何処行った? ……あ、あそこか!」


 琉とカズが何か喋っている時である。島の子供達と遊んでいたフローラがわたしに気付いたのであった。


「あ、おかあさん!」


 フローラがこっちに手を振る。わたしも手を振り返した。


「わぁ、フローラちゃんのおかあさんきれーい!!」


「うおっ、フローラのかあちゃんすげー! おっぱいおっぱい!!」


「ねぇおかあさん、おかあさんも“おにごっこ”やろー!」


「え、わたしも? ……よぉし!」


 わたしが子供達の中に入ると、たちまち子供達の声が上がった。この子供達はカズに武術を教えてもらっているという。この島の中で彼は、いわばたよれるお兄ちゃんといったところだろうか。


「そうだ琉、以前パルトネールを封じられたことがあったって言ってたろ? ちょっと分かったことがあってな」


「何、是非とも聞かせてもらおうか」


 道場の前ではしゃぐ子供達。わたしの精神はむしろこの子達に近いのだろうか、フローラとも一緒になって追いかけ合っていた。やはりおにごっこは一人でやるより皆でやった方が楽しい、そう思った。一方その様子を見ながら、琉とカズは難しい話を始めていた。


「あれはただのジャマーではなく、大戦争で使われた兵器“エアハッカー”を復元したモノなのだそうだ。今回はトライデントだけで済んだが、募った情報によれば計算上ありとあらゆる機械の動作を狂わせ、操ることすら可能らしい」


「エアハッカーを復元だと!? そんなの出来たら普通なら大ニュース、速報で携帯電話に着信ってモンだぜ!! ……ってアイツらまた秘密裏に開発しやがったんだよな、常識的に考えれば。マグマ爆弾しかりハリバットしかり」


「こっちはこれからも情報を集めるよ。誰か、メンシェ側に内通者がいれば良いんだがなぁ……。そうそう、エアハッカーに対抗できるのは機械仕掛けでないモノだけなんだそうだ。というワケで琉、渡したいモノがある」


 それだけ言い、カズは道場の庭を出ると家へと戻って行く。しばらくして、奥から枝分かれした棒を持って来ると琉に手渡した。


「おぉ! コイツは久しぶりじゃねぇか!」


「ねぇねぇ琉、それ何?」


 受け取った棒を持ち、喜々とした表情を浮かべる琉。気になったので、わたしは子供達から抜け出して琉に聞いてみることにした。


「これかい? トンファーって言ってね……しかしよくとってあったな!」


「まぁな、でも人の持ち物を勝手に処分するようなことはしないだろ普通。しかしエアハッカーの件で思い出してな、少し強化しておいたぜ。これからは持ってった方が良いんじゃないかな? あ、でもその前に少し練習した方が良いかも」


「そうだな、少し慣らしておくか! そして目の前には道場が!!」


 そう言いつつ、琉は意気揚々と道場に入って行った。


「あ、琉ニーニーだ! 空手教えてー!!」


「本当だ、琉ニーニーお帰り! 腹筋触らせてー!!」


 子供の一人が琉に気付き、道場に入って行く。カズと同じく、琉も島の子供達から慕われているらしい。どうやらわたしも、その一人のようだ。そして彼は子供達にトンファーを教えているらしい。


「お、皆来たか! でもゴメンね、今日は俺自身が練習しに来たんだ。教えることは出来ないかもしれん……あ、胴着取って来る」


今回はほのぼのとしています。そして琉はトンファー使いだったことが判明しましたw 書いた自分が言うのも何ですが、カズも意外と面倒見の良いヤツですねww さて邂逅編、次で完結です。

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