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Mystic Lady ~邂逅編~  作者: DIVER_RYU
第九章『魔の蛇に飲まれるな』
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『魔の蛇に飲まれるな』 破

アルとゲオの家族達を発見し、囚人達を連れて脱出を図る琉とロッサ。地下3階で多数のメンシェ教徒に囲まれるも、突如壁が崩れだした!!

「アル、ゲオ!」


「あなた!?」


「パパ~!!」


 姿を現したのはそう、陸上で待機していたアルとゲオだったのである。琉とロッサ、そして囚人たちの顔に安堵の表情が浮かび、口ぐちに彼らのことを呼び始めた。


「さぁて、行きますか~!」


 二人は肩をバキバキと鳴らし始めた。途端にメンシェ教徒達の顔から血の気が引いてゆく。散々傷め付けた囚人と違い、こちらの二人はピンピンしているからだ。例え薬物による身体強化があったとしても、本来ヒト族を上回る力を持つ上に武装までしている彼らの登場はまずいとしか言いようがない。


『何をしている! 地下聖殿を壊した狼藉者に裁きを下せ、決して生きて帰すな!!』


 部屋中に怒号が響き、メンシェ教徒達はナイフやスタンガン、更にはハルバードを手にして一斉に襲い掛かって来た!


「ロッサ、彼らをなるべく安全な所へ!!」


「分かった!!」 


 琉はロッサに囚人達の避難を任せ、メンシェ教徒達の前に立ちはだかった。


「ロッサ達に近づくんだったら、まずこの俺を倒してからにしな!」


「よし、望み通り血祭りにあげてやる!」


 挑発に乗ったメンシェ教徒達。琉は少し笑みを浮かべるとパルトネールを引き延ばし、軽く折り曲げた。


「パルトブーメラン!!」


 大きく振りかぶり、パルトネールを投げつける琉。パルトネールは回転しながら飛翔し、メンシェ教徒達に強烈な打撃を加えてゆく。鈍い音とともに次々に倒れ込むメンシェ教徒達。そしてパルトネールを投げつつ、琉自身も手前にいるメンシェ教徒に挑みかかった。琉の正拳突きが眼の前の敵に突き刺さり、更に彼の腕が相手の首に回ったかと思いきやそのまま投げ飛ばした。その背後から、ハルバードを持ったメンシェ教徒が襲い掛かる。


「うおっと!?」


 琉がその場で転がると、刃は床に叩きつけられた。メンシェ教徒が刃を持ち上げると、床にはくっきりとその跡が刻み込まれている。あと少しでも遅かったら、琉の頭がこうなっていただろう。


(チッ、ただでさえリーチが長い上に刃物まで付いてやがるか……。おっ?)


 ハルバード持ちの教徒に苦戦する琉の目に、勢い良く回転しながら接近してくる黒い棒状のモノが見えた。何とも良いタイミングで、パルトネールが戻って来たのである。琉はパルトネールを掴み取ると、素早く音声コードを入力した。


「パルトネール・チェイン!」


 パルトネールの先端が変形し、鉤の付いた分銅が出現した。琉はメンシェ教徒から一端距離を置くと、ハルバード目がけて分銅を放った。たちまちハルバードの柄に鎖が巻き付いてゆく。琉は左手で鎖を引き、ハルバードを絡め取った。


「痺れるぜ、覚悟しろよ……。パルトショック!!」


 琉の左の掌がパルトネールの柄を叩く。途端にその鎖を電流が走り、ハルバードを伝ってメンシェ教徒に流れ込んだ。


「うああああッ!? あ、アヤメーッ!!」


 相手はハルバードを握ったまま鋭い悲鳴を上げ、卒倒した。


「琉ちゃん、今のはやりすぎじゃあ……」


「安心しろ、手心は加えてある……。しかしアヤメって?」


 近くでメンシェ教徒を相手取っていたアルが琉に言った。琉は言葉を返すと分銅を引っ込め、パルトネールを通常形態に戻した。そして近くにいるメンシェ教徒を打ちすえ、その先端がメンシェ教徒の鳩尾を捉えてゆく。


「お父さん!? しっかりして!!」


 一方でアヤメは父親の元に駆け寄った。その体を揺すっても、痙攣しており戦えそうにない。


「彩田琉之助……覚悟!!」


 アヤメは怒りに震えつつ、拳銃を取り出してすぐさま琉に向かって照準を合わせた。琉は近くのメンシェ教徒達の相手をしており、背後から銃で狙われていることに全く気付いていない。ついにアヤメはその引き金に指を置いた。危うし琉! だが、アルがそれに気が付いた!


「琉ッ、危なぁい!!」


「アルッ!?」


 銃声一発。弾は飛び出してきたアルの肩に当たり、その鱗が砕けて宙を舞った。弾は体内に留まらず、ひしゃげて地に落ちている。被弾したアルの肩から、砂状の血が流れ落ちていた。ディアマンの血は空気に触れると砂上に変化するためだ。ガックリと膝を突くアルに、琉が駆け寄って行く。


「おい、大丈夫か!? ……許さんッ!!」


「しまった!? ええい、今度こそ!!」


 アヤメがトリガーを引くよりも速く、琉のパルトブーメランが銃を弾き飛ばした! しかしアヤメも負けておらず、ナイフを2本手に持つと、琉目がけて斬り付ける。琉はパルトネールをサーベルに変形、ナイフの刃を受け止めた。


「アル、大丈夫かッ!」


 ギュイン、という音と共にゲオが近付いてくる。ゲオは脚の装備に付けられたローラーで移動、腕に付いた装備の先端をドリルから拳状に変形、次々にメンシェ教徒を殴り倒しつつ突き進み、アルの元へと駆け寄った。


「ゲオ……オイラは大丈夫だぁ。聖弾は、入り込んではいないよぉ」


「そうか、良かった……。しかしこのままじゃラチが明かねぇ、アレを使うぞ。ナックルクエイカー!」


 ゲオは装備に付いたスイッチを押して更に音声コードを入力、すると装備された“拳”にエネルギーが充填されてゆく。


「くそっ、斬り込みが他と比べて速い上に鋭いな……。君だけか、神恵水の効果がまともに出てんのは」


「ふん! アレを飲めてたら、あと2年早く生まれていれば、アンタなんかあっという間に仕留めてやるというのに……!」


 説明せねばなるまい。メンシェの教義では、神恵水は25歳になるまで飲むことが許されていない。何故なら、この薬は身体能力を著しく向上させるものの、25歳未満が服用した場合は副作用で死に至る危険性が高いためである。


(しかし強い……。女相手に本気を出せないのもあるが、訓練を積んだワケでもないのにここまでやるとは……。もしや彼女、“アレ”か……!?)


 琉はナイフを防ぎつつ、遂にそのサーベルの刃でナイフを弾き飛ばした。ナイフを弾かれてひるむアヤメ。しかしそこに、他の教徒のナイフが斬りかかる!


「どいて! そいつはあたしがやる、だから手を出さないで!」


「こっちは助けが欲しいよ!」


 琉はナイフをサーベルの刃で叩き落とすと、その柄で素早く鳩尾を突いた。更にトリガーパーツを取り出すと、パルトネールをシューターに変形させ、アヤメに突き付ける。しかしアヤメの手にも拳銃が握られていた。互いの額に銃口が当たり、二人は無言のまま睨み合った。だが、そこにゲオの声が響く。


「琉ちゃんどいて! 一気に片を付けっから!! でやぁぁーッ!!」


 ゲオの拳が床を叩く! 途端に床を衝撃波が走り、破片やメンシェ教徒を飛ばして引き裂いてゆく。


「何!? しまった!!」


 アヤメの気がそれた瞬間を見計らい、琉は引き金を引いた。途端に赤い閃光がアヤメの額に突き刺さり、そのまま倒れ込んでゆく。彼女の拳銃がむなしく宙に吠え、アヤメは完全に意識を失った。見渡すと、フロアにいるメンシェ教徒のほとんどは床に転がっている。先程の衝撃波、ナックルクエイカーが効いたらしい。


「ロッサ、無事か!? 外に出るぞッ!!」


 琉は階段に走り、囚人達を先導した。アルとゲオは家族との再会を喜んでいる。その目には大粒の涙を浮かべており、いかにこの瞬間を待っていたかが伺えた。


「琉ちゃん、ロッサちゃん、今日は本当にありがとう! お陰でオイラ達の家族、そして仲間達は無事に帰れるよぉ!!」


「琉ちゃん、アンタは本当に見上げたヤツだぜ! 帰ったらまた御馳走すっからな!!」


 階段を駆け上がりつつ、感謝の言葉を並べる二人。しかし琉の表情は依然として厳しいモノであった。


「二人とも、まだだ。本当に喜べるのは家に帰ってからだぜ。ここはまだ地下聖殿、早く脱出しないとな!」


 力強く頷く二人。階段を昇った先に待っていたのは、また広間であった。しかしさっきとは違い、パイプオルガン等の設置された巨大な礼拝堂であった。天井まで20mはあろうかという高さに加え、所々にメンシェフラッグが掲げられており、更に堂々と飾られた彫刻が更に荘厳さを際立たせている。まさに宗教の総本山とでも言いたくなるような感じであった。


「まさに圧倒的な光景、か。しかし長居は無用だぜ、走れ!」


 出口目がけて走る琉とロッサ、アルとゲオと囚人達。琉とロッサが扉をこじ開けると、その先にはまた細い通路が続いている。その先には長い長い階段があり、琉はアルとゲオを先に昇らせた。二人が駆けのぼると、階段の上からはやがて光が差してきた。目論見通り、ここが出入り口だったのである。今のところ、メンシェ教徒の様子はない。


「よし、俺はここに残って見張っておく。ロッサは彼らを連れて先に外へ出てくれ! そしたら俺も続くから!!」


「琉、わたしも残る! わたしがいるとまた狙われるかも……」


「しかし……。まぁ、良いか。外にヤツらがいないとも言い切れん」


 ロッサは自ら残ると言いだした。琉は渋々承諾すると、一緒に見張り始めた。今のところ、メンシェ教徒達が大挙して襲って来そうな気配はない。


「ねぇ、琉。声だけ出してたアイツ、いないね」


「あぁ、そうだな。しかし、どう来るか分かったモンじゃないからね、気が抜けないぜ! ……お、皆出られたか!!」


 琉とロッサが喋っている間に、最後の囚人が階段を駆け上がり外に出て行った。それを見届けると、琉とロッサはすぐさま出ようとした、が


ガシャン!


 大きな音と共に通路が閉じられた。重いシャッターが通路を完全に塞いでおり、脱出することもままならない。琉とロッサはシャッターをガンガンと叩き始めたが、シャッターはビクともしない。


「アギジャベ(畜生)! ハメられたか!! ロッサ、シャッターを溶かせッ!!」


「ん……!! ダメ、ビクともしない……」


「フハハハハハ! 彩田琉之助、並びにヴァリアブール! 私はワインダー、ようこそ我が地下聖殿・礼拝堂へ!!」


 琉達と礼拝堂のステージに、スポットライトが当たった。琉とロッサの目線の先には豪奢なローブに身を包んだ、中年と思しき男が立っていた。


「お前か、さっきから放送で色々言ってきたのは! ……声が若い割にオッサンだったんだな……」


「うるさいぞ中学生、私はこれでも25だ! さてふざけるのもここまでだ、貴様ら二人は私直々に“浄化”してやろう!!」


 そういうと顔の老けた男――ビショップ・ワインダーはステージを降りて来た。そして懐からあの石板を取り出したのである!


「あれは! ……まさかお前も!?」


「気付いた所でもう遅いわ! 聖なる煙で浄化してくれよう……」


 そういうなりワインダーはその場で宙に浮き、琉とロッサを見下ろした。そして石板を掲げると、たちまち眩い光が部屋中に広がり始めたのである!


あの悪夢が再び! 果たして琉とロッサの運命やいかに!?

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