表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Mystic Lady ~邂逅編~  作者: DIVER_RYU
第八章『地下聖殿に潜り込め』
24/39

『地下聖殿に潜り込め』 急 

通気ダクトを通り、潜入する琉とロッサ。遂に二人は浄化室の場所を突き止めた!

「何故だ? 何故ここまでする必要がある?」


「決まっているだろう。ただでさえ汚れたヤツらが、こちらの言うことを聞くと思うか? だから浄化するのだ」


 浄化室。その中で、女と一人のメンシェ教徒が言い争っていた。


~20分ほど前~


「納得いきません! 何故これをする必要が!?」


 浄化室。特殊な強化ガラスの壁によって二つに遮られた、異質な部屋。片方には様々な機械やガスボンベが置かれ、ガラスの向こうには何もない。そんな部屋で、ある女性の怒りの叫びが響いていた。


「仕方あるまい、あの生意気なトヴェルクとアルヴァンを従わせるにはこうする他ないのだ。そしてヤツらは間違いなく、この部屋に来る」


 もう一人、豪奢なローブを着こんだ男がそれに答えた。そして懐から、あるコインを取り出して女に見せた。


「ヤツらの悪知恵だ。こんなモノを家族に取り付けておった。だから間違いなくこの部屋が分かるだろう。そしてもし来なければ30分後に浄化しろ、分かったな!?」


 二人が話す傍らで、数人のメンシェ教徒がディアマン、及びトヴェルクの母子をガラスの向こうへと押し込んでいた。最後の一人を蹴り込むとつかさず鍵を掛け、メンシェ教徒の一人が言った。


「ビショップ・ワインダー様、準備が出来ました!」


「よし、お前とお前、あとアヤメはここに残れ。あとの3人は見回りを任せる。良いな? コインはあえてここに置いておこう」


 ガラスの中では、アルヴァンとトヴェルクの母子がガラスを叩いて懇願していた。しかしその声は届くことがない。というのも浄化室のガラスは防音使用で、かつアルヴァンやトヴェルクといった腕力に優れた種族でも割れぬほどの厚さで出来ているためであった。ワインダーは機械に付いていたマイクを取るとこう言った。


「よく聞け亜人種ども。運が良ければ誰かが助けにでも来るだろう、だが! あと30分したらそこのパイプから聖なる煙が噴き出され、お前達の魂を浄化するだろう」


 マイクのスイッチを切ったワインダー。そしてアヤメの方を見るとこう言った。


「良いか、ヤツらが来たらまとめて始末するのだ。決して生きて帰すな! メンシェの神の、名の下に!!」


「メンシェの神の名の下に!!」


~回想終了~ 


「おい二人とも! こんな所で言い争ってどうする、ヤツらはいつ現れるか分かったモンじゃないんだぞ!!」


 もう一人いたメンシェ教徒が、二人の言い争いを止めた。


「こんなの、絶対おかしいよ……」


 アヤメはまだ不満を漏らしていた。そんな折であった。


 ガンッ! ガンッ! ガンッ! バタンッ!!


「ん!? 噂をすれば来たか!!」


 扉を豪快に蹴り倒し、青いスーツの男と赤いドレスの女が駆けこんできた! 男は入るや否や銃を構え、一人を目がけて赤い閃光をぶっ放した。


「間にあったな! ロッサ、鍵を開けろ!!」


「OK、まかせて琉!」


 ロッサはすぐさま鍵穴に指を入れ、回そうとした。


「させるか!!」


「危ない!!」


 アヤメのスタンガンがロッサに襲いかかる。しかしその腕を、琉の手が掴んで止めた。


「貴様は彩田琉之助! この間の屈辱、晴らさせてもらう!」


 アヤメは拳銃を取り出した。中にはあの聖弾が詰まっている。


「誰かと思えばこの間の小娘か。親父は元気か!?」


 琉はシューターを構え、アヤメと対峙した。お互いに銃を構えて睨み合い、こわばった指がトリガーにかかる。が、その時だった。


「残念、扉なら既に開いたぜ。遅かったようだな!」


 琉はシューターを構えたまま、アヤメにそう言い放った。


「何!?」


「スキあり!!」


 まさに一瞬のスキ。琉はすぐさまトリガーを引くと赤い閃光がアヤメ目がけて襲いかかった! が、


「うがぁッ!?」


「そっち!?」


 当たったのは別のメンシェ教徒だった。不意を突かれたアヤメは思わずメンシェ教徒の方を見た。そして同時に、ロッサは扉をこじ開けたのである。


「チッ、外したか。ロッサ、彼女らを頼む! ……さて、これだけ終われば用済みだ。あばよ!!」


 琉はSスイッチを入れ、相手の頭上に狙いを定めた。


「パルトスパイダー! ……何!?」


 ドヤ顔を浮かべつつトリガーを引く琉。だがしかしパルトスパイダーは発射されなかった。そしてトリガーパーツを外そうにも、パルトネールが変形しない。


「馬鹿な! これはどういうことだ!?」


『ククク、引っかかったな! 異端者よ』


 たちまち浄化室内に声が響き渡った。


『ようこそ、我らが地下聖殿へ。教えてやろう、その扉にはジャマーが仕掛けてある。開けることによってスイッチが入り、トライデントの機能を全面的に封じてしまうのだ。それだけではないぞ?』


「何ぃ? ……あ、熱ッ!!」


 なんとパルトネールが高熱を発し、琉は思わず手を離した。幸いにも琉の手は火傷していなかったが、落ちたパルトネールは熱によって赤くなっている。


「そうか、お前達の狙いは最初からこの俺とロッサだったというワケか!」


『その通り! 皆の者、この二人を捕えよ! 殺してもかまわん、トライデントのないコヤツなど怖くもなんともない、やってしまえ!』


 牢獄からの扉から、数人のメンシェ教徒がなだれ込んできた。そしてアルとゲオの家族達を連れて再び牢へと連れて行こうとする。


「……全くお前らというヤツらは。一体いつ、俺が武器なしでは何も出来ないヘナチョコだと言ったんだ?」


 琉がそう言うと、彼を取り囲むメンシェ教徒達が笑いだした。


「負け惜しみか、彩田琉之助! 虚勢を張っても無駄だぞ?」


「だったらお前、かかって来い!」


 琉は声を上げた者を指差し、挑発した。挑発されたメンシェ教徒はナイフを抜き、琉に襲いかかる。


「面白い、やってやろうじゃねぇか……ぐふっ!?」


 ナイフの一撃をかわし、琉の手刀が彼の首筋にヒットした。そして琉は腰だめに拳を持って行き、そのまま独特の構えを取ったのである。


「何だその構えは!?」


「お前達、“空手”も知らんのか? だったら教えてやるからかかってきな!」


 取り囲んでいたメンシェ教徒が一斉に琉目がけて襲いかかった! 琉は早速近くにいた者に一撃食らわせると、背後にいたメンシェ教徒を回し蹴りで一掃、更にその場で高く跳び上がるなり正面にいたメンシェ教徒の顔面を蹴り倒した。倒されたメンシェ教徒に巻き込まれ、背後にいた者達までもが倒れて行く。


「ロッサ! あの扉の何処かにジャマー装置がある、破壊してくれ!」


「任せて!」


 そう言われるとロッサは液化し、何人かのメンシェ教徒に体当たりを食らわせながらあの扉まで向かった。数に任せて攻撃するメンシェ教徒。しかし、この比較的狭い浄化室において、大量に戦闘要員を繰り出したのはメンシェ教側の判断ミスだったと言わざる得ない。地の利は完全に琉にあった。


「これの、何処かに!」


 ロッサはガラスの壁に付いた扉にしがみつくと、眉間の目を開いて装置を探し始めた。その間にもメンシェ教徒の執拗な攻撃が続く。


「そっちに行かせるワケにはいかん! トァーッ!!」


 叫びと共に跳び上がる琉。琉は手前のメンシェ教徒の肩に跳び乗ると、彼の脚は次々にメンシェ教徒の肩に襲い掛かった。蹂躙されるメンシェ教徒の上を駆け抜け、琉はロッサの元へ向かう。彼が着地した途端、メンシェ教徒達は蹴られた個所を押さえて次々に倒れ込んだ。


「必殺・飛石粉砕蹴り!」


 飛石粉砕蹴り。相手の肩を蹴り付け、その反動を利用して飛石を渡るかのように敵から敵へと素早く跳び移り、着地と共にダウンさせるという琉の編み出した技である。


「ロッサ、装置は見つかったか……チッ!」


 ロッサに駆け寄った琉だったが、そこにナイフの刃が一閃した。寸手の所でかわした琉だったが、逆立った髪の一部が宙を舞った。


「彩田琉之助、息の根を止めてやる!」


「因縁の対決か。来い!」


 琉はすぐに構えを取った。アヤメも片手にナイフ、もう片手にスタンガンを構えて対峙する。


「ここであったが百年目……あの時の屈辱、晴らさせてもらうよ!」


 アヤメのナイフが琉に斬りかかる。素早い斬り込みをかわす琉だが、同時に彼女のスタンガンがロッサに襲い掛かった。


「まずい!」


 琉の手がすぐさまアヤメの腕を掴み、キリキリと締め上げる。スタンガンは地面に落ち、琉のブーツが容赦なく踏み壊した。


「クッ!? ……やってくれたわね!!」


 アヤメはナイフを逆手で構えると、琉の喉元目がけて斬りかかる。体を軽くそらしてかわす琉だが、その横から他のメンシェ教徒がナイフの先端を向けて来る。琉はそのナイフを持った腕を掴むとアヤメに向け、更にナイフの持ち主の腹部に肘鉄を食らわした。


「邪魔しないで、コイツはあたしが仕留めてやる!」


「チームワークがよろしくないようだな、君達は」


「う、うるさい!」


 呆れた顔で挑発する琉に、食ってかかるアヤメ。だが、この後二人の目に写ったのは思いもよらぬ異常な事態であった。


「しかしアヤメ、そんなことを言ってる間があったら早くコイツを……うッ!?」


 ナイフを取られ、肘鉄を食らって突っ伏しているメンシェ教徒。彼がアヤメに忠告をしようとした時、それは起きた。


「う、うがぁぁぁッ!? か、体が、体が動かない!!」


 喉元、胸、腹部、あらゆる個所を押さえて彼はのたうち始めた。彼だけでない。他のメンシェ教徒も突然苦しみ出し、床の上で転げ回り出したのである。


「しまった! こんな時に!?」


 アヤメの表情に焦りが生じた。


「き、切れた……。は、早くし、し、し……」


「おい、一体全体どうなってやがるんだ!?」


 あまりに異常な光景に、琉は目を見開いた。突如苦しみ出すメンシェ教徒達、彼らに何があったのか、何故アヤメは平然としていられるのか、そして何より琉とロッサはこの地下聖殿を脱出することは出来るのであろうか!? 


メンシェ教徒に一体何が起きたのか!? そして琉とアヤメ、因縁の戦いの行方やいかに!? そして今回、琉は空手が出来ることが判明。実は素手でも結構戦えるんですw しかしピンチに変わりはありません、彼の運命やいかに!?


~次回予告~

「これが浄化の効果だと言うのか!?」


「琉、早く!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ