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Mystic Lady ~邂逅編~  作者: DIVER_RYU
第七章『砂の地獄を突破せよ』
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『砂の地獄を突破せよ』 急

オアシスに急行する琉達一行。途中、砂漠にすむ凶暴なハルム・イグピオンの襲撃を受けた。珍しく集団で行動するイグピオンに苦戦する一行だが、ロッサがついにそのうちの一体を捕え、食らい始めた! しかし直後……。

 慌てて駆けつける琉、アル、ゲオ。


「くそっ、パルトブラスター!!」


 琉はパルトネールに取り付けられたトリガーパーツのレバーを切り替えてブラスターモードにし、駆け寄り、照準を合わせ、両手で構え、引き金を引くとたちまち青白い光弾がイグピオンの体を貫き、木端微塵に吹き飛ばした。


「でやぁッ! ロッサちゃん、無事かぁい!?」


「ふんッ! くそ、生きててくれよ……!!」


 アルとゲオもそれぞれ撃破し、3人はロッサに近づこうとした。すると、


「おわッ!? 何、まだいただと!?」


 予想もしてなかった事態。何と更に5体ものイグピオンが出現し、その尻尾をこちらに向けている。


「食う気まんまんだぜ、こりゃ……」


「こんなの、絶対おかしいよぉ!?」


 再び構える3人。アルとゲオが口ぐちに言った。


「アル、ゲオ、すぐにアンタレスへ走ってくれ! 俺がその間にロッサを助け出す!! 良いかい!?」


「了解!!」


 琉はパルトネールを構え、迫りくるイグピオンを待ち構えた。


(あと3m……2m……1m……今だ!)


 距離を読んで、琉が引き金を引く。ドォォォン、という音と共に放たれた光弾が、1体のイグピオンの体を貫き爆発させた。続けざまに琉はもう一体に狙いを付けると、これまたパルトブラスターで爆発させた。


「躊躇してる場合じゃねぇ、もう一発行くぞ! ……何ぃ?」


 距離を読み、引き金を引く琉。しかしパルトネールが反応しない。それもそのはず、タダでさえ消費の激しいブラスターを、立て続けに撃ったせいでエネルギーを使い果たしてしまったのである。


「アギジャベ!(くそっ!)」


 急いで電池を詰め替える琉。相手は、すぐに近くに来ていた。それもそのはず、本来射撃が苦手な琉はエネルギーを無駄にしないためにも一定の距離にまで誘いこんで撃つというクセがあるのだ。しかし今回はこれが返って仇となってしまった。電池切れのトライデントは変形も出来なくなり、ただ重いだけの棒となってしまうのである。そして非情にも、琉に毒針が迫る。万事休す、そう思われた時であった。


 ヒュウン!


 不意に琉の体が宙に浮いた。そして琉に迫っていた尻尾を、何と同じ形をしたモノが弾き返している。琉は一瞬、何が起こったのか理解出来なかった。


「琉、大丈夫!?」


「……ロッサ? ロッサなのか!?」


 声に気付き、視線を向けた琉の目に最初に写ったのはロッサの顔であった。眉間が開き、第三の目が輝いている。彼は、翼を開いたロッサの腕で抱えられていたのである。そしてそのロッサの腰から、何かが生えている。その先にあったのは……


「イグピオンの尻尾……そうか、取りこめたのか!」


 そう言われてロッサは、自分の腰に生えた尻尾を自慢げにくねらせた。形の良い彼女の美尻と相まって、非常に妖艶な動きを見せている。長さこそ4mとオリジナルと比べて短いがその力はむしろオリジナルを遥かに凌駕しており、弾かれた個体はそのまま転倒してしまっていた。ロッサは琉を地面に降ろすと、尻尾を掴んでオドベルスに向けた。


「琉、下がって!」


 次の瞬間。ロッサの尻尾から真っ赤な炎が噴き出し、イグピオンの体を包み込んだ。真っ赤な炎に包まれたイグピオンの体はたちまち爆発を起こし、跡形もなく消滅した。


「ハァァァァァッ!!」


 ロッサはそのまま残りのイグピオンに向かって火を放ち、たちまちイグピオンの群れは爆音とともに跡形もなく消え去った。


「琉ちゃん! ロッサちゃん! 早く乗ってぇ!!」


 全滅したのを見計らい、バギーで駆けつけたアルとゲオ。すぐさま琉とロッサは乗りこむと、再びハルムが出ないうちにそこを後にした。


「はぁ、はぁ……。何とか脱出出来たな……。ロッサ、よくやったぜ! ……ってロッサ!?」


 琉はすぐに異変に気が付いた。ロッサはアンタレスの座席に着いた瞬間に気を失い、倒れ込んでいたのである。


「またか……一応、脈は大丈夫みたいだな。お疲れさん、オアシスに着いたらたっぷり水を飲ませてやるからな!」


 そしてイグピオンを退けて1時間後。やがて砂景色から、再び町が見え始めた。そして町の真ん中には大きな湖が、透き通った水をたたえている。


「よ~し着いた! 琉ちゃん、ロッサを起こしてやりな!!」


「着いた!? おいロッサ、オアシスに着いたぞ! ……君、寝顔可愛いじゃん」


 オアシスを取り囲むようにして出来た町。その建物の間をすり抜けて、アンタレスはオアシスの岸に停車した。ゲオに言われ、琉はロッサを揺すった。


「ん……琉……」


「オアシス、着いたぞ。……あ、って何だよ、いきなり抱きつくんじゃねぇよ! どこ触ってんだコラ!?」


 寝ぼけたロッサに抱きつかれ、琉はあわわと慌てふためいた。


「相変わらずウブだねぇ」


「あ……着いた……? ……お、み、水!」


 目を覚ましたロッサ。そしてオアシスが目に入るや否やアンタレスから飛び降り、真っ直ぐに駆け寄ると大きな水音を立てて飛び込んだ。


「ロッサ、君かなり大胆なことするねぇ……」


 相当乾いていたのか、ロッサはオアシスの水の中ではしゃいでいた。心なしか、ロッサの肌が先程よりも艶とハリを増してるように見える。


「ロッサ、そろそろ上がっておいで」


 そう言われてロッサは、オアシスの岸に上がって来た。濡れた髪が艶やかに輝き、彼女の肌は戦闘中と比べて幾分キレイになったかのように見えた。


(これでハルムの形質が二つになったか。オドベルスの翼にイグピオンの尾、どちらも強力なモノには変わりないな)


 何にせよ、これからの活躍に期待しよう、と思う琉なのであった。そしてほぼ同時刻……。


「フッ、やはり突破されたか。所詮ハルムはハルム、集団行動させても天敵には勝てんということか……」


 薄暗い部屋で男が一人、怪しげな機械を触っている。口元には怪しい笑みを浮かべ、目の前のモニターを見ていた。


「嗅ぎつけた所でどうにも出来まい。貴様らにこの、メンシェ教地下聖殿を攻略することは不可能だ。四人ともソディアの砂に埋めてやろう、覚悟するんだな……!」


 男はモニターの画面を切り、同時に怪しげな機械を素手で叩き壊した。そして部屋を出ると、そのまま階段を下って行く。するとそこには大量の、ベルトコンベアーに向かうトヴェルクとディアマンがいた。彼らは皆、奇妙な腕輪と脚輪を付けられており、ディアマンの中には鱗が一部砕けている者もいる。そして所々、フードの者達が鞭を持って睨みを利かせていた。


「メンシェの同志達に告ぐ! この地下聖殿、並びに地下聖房を汚さんとする輩が現れた! そのうち一人はかの恐るべき悪魔ヴァリアブール、そしてもう一人は悪魔に魂を売ってヒト族を裏切った極悪人、彩田琉之助だ! ただちに亜人種共を牢に戻し、臨界体勢を取れ! メンシェの神の、名の下に!!」


「メンシェの神の、名の下にッ!!」


 フードを被った者達が一斉に答え、トヴェルクとディアマン達を引っ張り何処かへ連れ去り始めた。中には鞭で叩きつける者までいる。


「そこの五人、私と共に来い!」


「ハッ!!」


 男はフードの者を五人連れ、更に地下室へと下った。中は鉄格子の部屋がいくつもあり、トヴェルクやディアマンといった異種族の女性と子供が入れられている。絶えずすすり泣きが響いており、彼女らもまた、腕と脚に輪っかが付けられていた。


「コイツらだったか、アルとゲオの嫁と子供っていうのは」


「はい、ビショップ・ワインダー様」


 ビショップ・ワインダーと呼ばれた男は鉄格子の奥ですすり泣くトヴェルクとディアマンの母子を見降ろしつつ言った。


「“浄化室”へ連れて行け!!」


 五人が鉄格子を開けて入ると、中にいた母子達は怯えて奥へと引っ込んだ。しかし無情にも引きずり出され、哀れな母子は奥の部屋へと連れ去られていった。


「ふっふっふ、ヤツらなら真っ先にあの部屋を嗅ぎつけるだろう。トヴェルクの女に付けられた小細工に、我々が気付くはずがないとでも思ったのか? やはり所詮は亜人種の知恵か……」


 ワインダーはローブの中から石板を取り出した。中央にオーブがはめ込まれ、周りを取り囲むように毒蛇が描かれている。


「待っておるぞ、反逆者ども……!!」


ロッサに待望の新能力! そして遂に、命令を下していた謎の男の名前が明らかに!! さぁ次回、一行は家族を救いだすことは出来るのか!?

~次回予告~

「こっちは忙しいんだ! コイツは痺れるぜ、覚悟しろよ……」


「わたしに良い考えがあるんだけど」

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