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Mystic Lady ~邂逅編~  作者: DIVER_RYU
第六章『琉さん事件です』
18/39

『琉さん事件です』 急

工房と連絡が付かず、アードラーに跨り急行した琉であったが……。

 ~琉が工房に現れる数時間前~ 


「さて、今日も作業始めるよぉ~! えぇとまず、オイラとゲオは……」


 工房の朝は早い。この世界での主流産業は遺跡探索。琉のみならずラング装者にとって、彼らを支える道具の存在は非常に重要な存在である。しかしその道具はトライデントやラングアーマーといった特殊なモノばかりで、これを制作出来る技術者は限られてくる。アル達の工房もその一つであった。彼らの工房は毎日これらの道具を開発、製造する他にも修理、改造といった注文が大量に舞い込んでくる。朝から晩まで、交代しつつ休憩しつつ彼らは着実に作業をこなし、完成させる。

 

「今年の新ラング装者は10人か。彼らに頑張ってもらうためにも、キッチリとカスタマイズしなとな!」


 そういって各々作業場に向かう技術者達。ある者はPCに向かい、ある者は機械を操作し、ある者は完成した部品を組み立てる。こうしてまた、忙しくも清々しい朝が訪れる……はずだった。


 ガンッ! ガンッ! ガンッ! 


「誰ぇ? 仕方ないなぁ、もう」


 インターホンがあるにも関わらず、扉を乱暴に叩く音が工房内に響き渡った。アルはだるそうなセリフと共にモニターを見て、驚愕した。フードを被った男達が、扉の周りを囲っているのである。


「ハッ、メンシェ教!? 皆ぁ、後ろに下がって! 絶対に開けちゃダメだよぉ!! ゲオ、ちょっと話を聞いてやって!!」


 ディアマンとトヴェルクが働いているこの工房にとって、メンシェ教徒は脅威以外の何モノでもない。アルはその手の甲から鉱物で出来た鉤爪を出し、ゲオは近くに置いてあった自前の武器であるパイルバンカー(杭打ち機)に盾をくっつけて構えつつモニターに向かった。


「はいはい、要件を伺います」


「亜人種ごときが我々に大きな口を利くな。すでに周りは包囲している、助かりたくば大人しく我々の命令に従うのだ。まず、工場長を呼べ」


 ゲオはアルに合図すると、アルがモニターの前に立った。


「工場長はオイラだぁ。早く要件を言ってくれよぉ!」


「まず我々にこの工房を明け渡せ。そして今作っているモノを全て中止しろ」


 あまりにも理不尽な要求。アルとゲオは顔を向き合わせると、再びモニターに向かって言った。


「何故この工房が欲しいんだ? ついでに何故制作中止にせねばならん!? そこんとこちゃんと説明してもらおうかッ!!」


「オイラ達の作ったモノを待ってる人がいるんだよぉ! それを差し置いてまで、一体何を作れっていうんだぁ!?」


 剣幕を張る二人。しかし交渉をしていたフードの男は動揺もせずにこういった。


「よろしいならば……連れて来い!」


 すると奥から、何人かの男がディアマンとトヴェルクの女性と子供を掴み、引っ張り出してモニターに押し付けた。それを見た瞬間、二人の顔が凍りついた。


「ク、クロエ!? おい、オイラの家族に何をする気なんだぁ!?」


「ヘルガ!? くそッ、卑怯だぞお前ら!!」


 モニター越しに助けを求める二人の家族達。悲痛な表情が、アルとゲオの心に突き刺さる。フッ、と笑いつつ、フードの男はモニターに向かって言った。


「せいぜい吠えるが良い。会いたければ扉を開けろ。ま、開けないならこちらからこじ開けるのみだがな!!」


 この声の直後である。バンという大きな音と共に扉がこじ開けられ、メンシェ教徒がなだれこんで来た!


「皆、早く奥に逃げて! ゲオ、いくよ!!」


「オラオラ、妻と子は返してもらうぜ!?」


 メンシェ教徒のナイフが二人に襲いかかる。アルの鉤爪が刃を受け、ゲオのショルダータックルが炸裂した。アルの背後から、また別のメンシェ教徒が斬りかかる。しかし刃は、彼の鱗に当たるなり折れてしまった。


「ひ、ひぃッ! このバケモノめ!!」


「アンタ達はハルムより恐ろしいよぉ?」


 次の瞬間、この男にアルの裏拳が炸裂した。しかし……


「これ以上の抵抗はやめろ。愛しい家族がどうなっても良いのか?」


 メンシェ教徒のナイフと銃が、アルとゲオの家族に向けられていた。


「あ、あなた!!」


「お父さーん!!」


 助けを求める妻に泣き叫ぶ子供達。二人は歯を食い締めて見る他なかった。


「ふん、この二人は生かしておくと厄介だ。やれッ!!」


 リーダー格の男が指さすと、銃を持った男達が一斉に工房内目がけて発砲した!


「うわッ!?」 


 アルはその硬い手で、ゲオは盾ですぐさま弾を防いだ。


「なんてね、そんな銃弾ごときでやられるオイラ達じゃないよぉ!」


「ほほぉ。では、後ろの扉はどうなっているかな?」


「何!?」


 二人が振り向くと、後ろの扉に銃によって開けられた穴が開いており、しかもそこから肩を押さえた作業員が一人崩れるようにして倒れ込んで来た。右肩を押さえており、押さえる手の指の間から大量の血が流れている。


「しまった! おい、大丈夫か!?」


 ゲオが扉に向かおうとした、その時だった。


「おっと動くな、大人しくしろッ! おい、女と子供を連れて行け!!」


 二人の家族が、メンシェ教徒達に引っ張られて姿を消した。


「全く手こずらせおって……薄汚い亜人種の分際が、我々メンシェに逆らうとは何事だ!!」


「やることが汚いのはそっちの方だ! こっちこそ、オイラ達の工房を荒すのはやめてもらうよぉ!」


「生意気な……。やっちまえッ!!」


 その場のメンシェ教徒が、武器を構えて工房に突入しようとした、まさにその時だった。


 ブィィィィィン!!


「何だ貴様は!? ……うがッ!?」


「アル、ゲオ、大丈夫か!?」


~回想終了~


「ひどい……ひどすぎるよ!」


「すると、二人の家族は一体どこに連れ去られたんだ!?」


 話を聞いた琉とロッサ口々に言った。


「全く見当がつかないよぉ……。それに、アイツらは何で一体急に暴れるようになったんだぁ?」


「さっきニュースで、ヤツらの監獄襲撃が報じられてたんだ。恐らく、これで大量の人材を取り戻したんだろう。ヤツら、ただのよそ者嫌いの田舎者集団だとタカをくくっていたが……思っていたよりデカかったんだな……」


 溜息をつく琉とアル。ところがその隣で、ゲオは何やらレーダーを取り出して見ていた。


「ん、ゲオ? そのレーダーは一体どうしたんだぁ?」


「アル、さっきヤツらが来た時に、ヘルガ……ウチの家内に小型発信器を投げつけておいたんだ。反応してれば良いのだが……」


 まさかの好プレーに驚く琉とアル。ゲオの顔はどことなくドヤ顔をしているようにも見えた。


「おいゲオ、何でそれを早く言わん! しかし良くやったぜ!!」


「だが問題が一つ。ヤツらの向かう場所が……」


 ゲオはレーダーの地点を指差した。


「まさかのオアシスだ。そのためには、この街から砂漠地帯を突っ切らねばならない。しかし早く行かないと、何されるか分かったモンじゃねぇ……」


「でも、オアシスの周りはハルムの巣窟だよぉ! どうやれば……」


 このセリフの直後だった。


「何、ハルムの巣窟? ジュルリ……」


「ロッサ! ……ん、待てよ?」


 ロッサのセリフで、琉はあることを思いついた。


「……よし、俺達も行こう」


「えぇッ!?」


 琉のセリフに驚く二人。しかし琉にはある思惑があった。


「ヤツらの暴走を止めたいのは俺も同じだ。ハルムなら俺とロッサに任せてくれ。さ、早く行かないと何されるか分からんぞ!」


 こうして琉、ロッサ、アル、ゲオの4人は、オアシスに向けて砂漠横断を決意するのであった!


~次回予告~

「これが……新たな力か!?」


「はぁぁぁぁぁッ!!」


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