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Mystic Lady ~邂逅編~  作者: DIVER_RYU
第五章『史実は見えるか』
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『史実は見えるか』 序

~前回までのあらすじ~

海底遺跡で発見された謎の美女、ロッサ。彼女を発見した男、琉。二人は手掛かりを求めてエリアδに挑んだ。途中でハルム(化けモノの意)に襲われながらも発掘に成功した琉。そしてその宝の中にあったペンダントの中に、ロッサにかかわる重要な秘密が含まれていた。果たして画像の男、“リベール”とは何者なのだろうか!?


「ふむ、それほどまでにあの男が憎いか」


 薄暗い部屋の中、フードの付いたローブを羽織った男が一人の女に話しかける。


「はい。奴は、あの彩田琉之助という男は悪魔に魂を売り、私の父を社会的に葬りました。何故あの男が無罪で父が牢獄に入れられるのか、私には理解できぬのです」


 アヤメと呼ばれた女は淡々と、かつ激しい怒りを込めた口調で答えた。


「そうか。ところでコイツを見てほしい」


 男はモニターを指差して言った。モニターには港の風景が映し出される。大きな船が停まっており、そこに丁度バイクに跨った男女が現れた。バイクから降りると

男はヘルメットを外して座席に仕舞い、女はヘルメットがほぐれて見る見るうちに髪に変わっていった。その顔を見た瞬間、アヤメは目を見開いて思わず声が出た。


「こいつは……!」


「うむ、奴らの近くに隠しカメラを用意しておいた。これで場所が分かるだろう?更に船には発信機を取り付けてある」


 男がそう言う中、モニターの中で琉は棒状のモノを取り出した。


『よし、チェィンジ・マリンアードラー! 戻れ!! ……よし、収納完了。ステアオープン! ……よし来たぞ、と。……さて、明日は7時に出発だが……』


 琉とロッサは階段を昇って行き、やがてモニターには映らなくなった。それを見とどけると男はアヤメに向かって言った。


「今聞いたな? 奴らは7時にここを出発する。そこで、だ。ここで我々が開発したあの武器を試用したいと考えている。その役割を、お前に任せようと思うのだがどうだろうか?」


「新たな武器……もしや例の“アレ”ですか?」


「そうだ。その使用権をお前に与えよう。船も用意した。今日は明日に備えて休むが良い……。では、メンシェの神の名のもとに」


「メンシェの神の、名のもとに」


 アヤメは一礼すると部屋から出て行った。


「出て行ったか。よし入れ」


 男はまた別の人物を呼んだ。するとアヤメが出た扉とは別の扉から数人の男が現れて一礼した。


「例の武器はあの娘に任せることにした。そなた達はその間に“聖戦”の準備を済ませておくように。決行は明日の夕方だ、良いな?」


「ハッ! メンシェの神の、名のもとに!!」


 男達は部屋から出て行った。


「もうすぐだ、待っておれ。囚われの同志達よ……! メンシェの神の、名のもとに」


~翌朝~


「ロッサ、今日は早起きだな」


 操舵室。琉がモーニングコールを掛ける前に、ロッサは起床していた。


「まぁ、早起きなのは良いことだ。早速飯にしよう」


 食堂で、早速琉の料理が振舞われる。卵を割って解き、その中にスライスした野菜と缶詰の肉を混ぜて焼く。味付けは缶詰の塩だけで十分だ。たちまち琉特性のオープンオムレツが出来上がる。


「今日の作業は早く終わる。だから帰港したらちょっと食料品の買い出しに出ようと思っている。工房に行くのはその後だ」


 琉は朝食を取りつつロッサに予定を話した。


「骨付き肉を多めに買おうか。ロッサ好きだろ?」


「え、良いの!?」


 ロッサの赤い目が輝きだした。骨付き肉はもはや彼女の大好物である。


「ああ。料理人として、自分の料理が旨いと言われるのは至高の喜びだからね。そういえばあの時のメンバー、元気にしてるかな……」


「あの時のメンバー?」


「あぁ、以前話さなかったっけ? 俺は他の船でコックをしていたことがあったんだ。……要するに料理人さ」


 琉は語った。彼は一度カレッタ号を大破させたことがあり、修理してる間他の船に乗っていたことがある。


「パントーダに派手に溶かされちまってね。だから今でもあのハルムは勘弁だぜ」


 仕事先を探す琉に、ある声がかかった。かつてラング装者の訓練を共に受けた同級生に、うちの船で働かないかと声がかかったのだ。


「しかしその船、ラング装者枠はすでに埋まっていたんだ。だから何で呼んだか聞いたら『コックやってくれ』だと。確かに俺は訓練時代からちょくちょく料理作ってたけどさ……」


 半ば不満を覚えながらも、仕事を受けた琉。しかし琉の料理はその船の中でも好評で、琉はすっかり機嫌が直ってしまったのである。同時に、彼は自分の料理を誰かに振舞うという喜びに目覚めたのであった。


「まぁ、父子家庭だったからね。小さいころから料理は自分で作ることが多かったからなぁ。でも本格的に金貰って振舞ったのはこれが初めてだったね。だから色々作って出したよ。……まぁ、たまに失敗することもあったけどね」


 一応、琉は調理師免許を持っている。元々料理が趣味だった彼だが、なんとなく受けたらあっさり通ってしまったのだ。しかし人に本格的に振舞ったのはこの時が初めてだったという。


「自分で言うのも何だけど、人の舌を意識したら以前より味が良くなったよ。……

まぁ、それをしばらくの間自分一人で食べていたんだけどね」


 そして琉がカレッタ号に戻って五カ月後、彼はロッサと運命的な出会いを果たしたのである。


「やっぱ、船員がいるって良いことだよなぁ。正直な話、あの後しばらく一人で船に乗ってるのが辛かったんだよ。そんな時に……まぁ良い」


 琉にとってロッサは、一人で寂しい所に舞い降りた天使のような存在でもある。しかし彼には、このセリフの続きは流石に照れ臭すぎて言えなかった。


「琉、どうしたの? なんか、赤くなってるよ?」


「気にすんな! さてさて、食い終わったら準備だ。……思えばあれから料理に対するこだわりが大きくなったんだよなぁ……」


 若干早口になりつつも過去を回想する琉。食器を片づけ、上着の裾をビシッと決め直し、二人は操舵室に向かった。


「昨日何度か話したが、今日はエリアδを見て回る。ついでに取りこぼしたモノをアームで回収する予定だ。それじゃあ……出航!!」


 港を出るカレッタ号。亀の甲羅を模した柄の旗を屋根に掲げ、青い海面を切り裂いて、白波の軌跡を描いて船が行く。その姿を、港から見ている者がいた。


「あれがカレッタ号、あの船に奴らが……。ふふ、二度と浮き上がれないようにしてあげる……!」


 彼女は船に乗り込むと、すぐさまカレッタ号の後を追ったのであった。


実習も試験も終わり、肩慣らしも済んだので久々に投稿致しました。またボチボチと投稿していきますのでよろしくです。

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