『琉が飲むソディアの水は熱い』 序
オルガネシアを旅立った琉とロッサ。今、アルカリアでの冒険が始まる。
※前作『Mystic Lady 第一部 ~復活編~』の続きとなっております。未読の方はこちらへどうぞ→ http://ncode.syosetu.com/n7922s/
カレッタ号船内。明かりのついた部屋で一人、パソコンを打つ姿があった。
『航海日誌:○月×日 アルカリアを目指し、オルガネシアを出て4日が経った。明日の朝にはアルカリアの玄関口、ソディア島に着くだろう……』
アルカリア。日誌に出てきたソディア島に加え、リチウム島、ポタス島、カルス島の4つからなる国である。ソディア島以外は小さく、あまり人は住んでいない。
海底遺跡エリアδは、ソディア島の沖に存在する。比較的島から近いので、基地から直接通って調査するということが可能である。難点と言えば、ここの古代文字はまだ解読が成功していないというところだけだろうか。
『まずはソディアのラング基地に話を通しておこう。それからまずは街の探索。ロッサにまた色々と見せてやる必要があるだろう。それにしても久しぶりのソディアだ。またサソリで一杯飲みたい所である……』
キーボードを打ちながら感慨にふける琉。
「まぁ、まずは着いてからだな! 今日はもう寝よう」
~翌朝~
「ロッサー! 着いたぞー!!」
操舵室から響くアナウンス。部屋の中、ロッサは目を擦りつつ布団の中からもぞもぞと出て来た。
「起きたか。今日は外で飯にするぞ、行こうか!!」
目をこすり、操舵室に向かったロッサに琉は言った。窓からはこれまでよりも強烈な日差しが降り注いでいる。彼女は窓の外を見ると、そこには今までとは違う砂と岩で構成された世界が広がっていた。
「ここがソディア……。何て言うか、島全体が黄色い……」
「アルカリアが熱砂の国と呼ばれる理由はこれさ。ソディアに限らずどの島に行ってもこんな感じだぜ」
辺り一面砂景色。強烈な日差しが道行く者に突き刺さる。この環境を好む種族であるディアマンを除けば、他の種族はオアシスと海辺付近以外にはほとんど見られない。これまでの島とは違う環境を目の当たりにし、ロッサは夢中になって眺めている。
「港の付近にちょっとした街がある。調査は明日だ。今日は一日、街の散策とでも洒落てみないかい?」
カレッタから降りた二人。早速ロッサが街に歩こうとした時だった。
「待った。そっちじゃない、こっちだ」
琉の指差す方向には大きな建物があった。
「ソディアのラング基地さ。先に手続きを済ませて来る」
琉に連れられ、ロッサはラング基地まで歩いた。基地の入り口には大きな看板が立てかけてある。
「やれやれ、『女性装者募集!』か。見るたびに大きくなってるな、この宣伝」
「ねぇ、琉。どうしてこれが大きくなるの?」
ラング装者は現在の所ほとんど男性しかいない。強大な力を必要とするせいか、女性が志すことがまずないのだ。男女格差をなくすべく、この業界は女性用アーマー(因みに普通のアーマーは30kg)を開発したり、トライデントの軽量化(普通のトライデントの重さは2kg)に努めたりして積極的に女性装者を増やそうとしているのだが、現状は大して変っていない。
おまけにソディア基地の装者はほとんどが赤銅色の肌をしたマッチョな猛者ばかりなため、まず寄りついてもくれないという現状があるのだ。因みに女性用アーマーを使用しているのは琉の知る限りは一人だけ。しかしそれも、種族の特性上筋肉量の少ないジャックが身につけているモノだけである。
カウンターに向かい、手続きを済ませた琉はロッサを連れて出た。そろそろ二人にとっての朝食の時間であるが、ここの基地には訓練施設や食堂と言ったモノがない。待ちきれないとばかりにロッサは琉の手を引き、街の方に引っ張ろうとした。
「慌てるなって。そうだ、せっかくだからアレ使おうぜ」
笑いながら琉が言う。彼はパルトネールを取り出すと、カレッタ号の方を向いて言った。
「アードラー!」
海面に影が浮かびあがり、琉のサポートメカであるアードラーが姿を現す。
「チェィンジ! マシン・アードラー!!」
たちまちアードラーはバイク形態であるマシンアードラーに変形した。琉がハンドルを握ると、ロッサがその後ろに乗ってがっちりと組みついた。当然のことだが琉の背中には柔らかいモノが押しつけられる。
(やべぇ、心拍数が急上昇してやがる……。落ち着け俺、この間一緒に飛んだ時はどうもしなかっただろう!)
「琉、どうかしたの?」
琉の耳元に、不意にロッサの声がした。
「ひゃあっ、何でもない! い……行こうか!!」
琉がハンドルを握り、アクセルを鳴らす。踏み固められた砂の道を、青の機体が駆け抜ける。一部の島をのぞいて道路が作りにくいこの世界に、オンロード車は存在しない。
「ちょっとこの奥に旨い飯屋がある。朝早くからやってるし、そこにしようか」
早朝、まだ人通りの少ない街中でアードラーを飛ばす琉。ロッサはその背中で、アルカリア独特の熱気をはらんだ風を肌に感じていた。
「琉、ここって美味しいモノ、ある?」
ロッサが聞く。琉はハンドルを握ったまま答えた。
「旨いモノね。ここには他で食えないモノが色々あるぜ。例えばサボテンのステーキとか、オオトカゲの丸焼きとか。ここは環境が厳しくてね、元々生き物が少ないんだ。その数少ない食材をフルに活用するためにね、料理そのものは色々と発達してるんだぜ。個人的お勧めはサソリの唐揚げかな……。あれ、ビールの当てに最高なんだよね」
琉はあちこちの島に行くせいか、中々の食通でもある。旨いモノには目がない一方、嫌いな食べ物はほとんどない。彼にとって、食べられないモノはイコール食中毒を起こすモノか調理に失敗したモノである。
「サボテン? オオトカゲ? ……サソリ?」
ロッサにとっては新出単語のオンパレードである。それもそのはず、これらの生物は皆この世界ではオルガネシアでは見られず、アルカリアにしかいないモノばかりだからである。目覚めて一カ月では世界を把握しきれない。琉はぽかんとなっているロッサに言った。
「まぁ、食ってみれば分かるさ。どれも旨いモノだぜ。……お、そろそろ着くな」
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