第十一話 リリナローズ(ライト視点)
リリナローズ・レイシラ。それが、オリアナ様の友人の名前だった。
レイシラ公爵家の女傑であり、自身の片翼以外の男が大嫌いな性格の彼女は、言われてみれば確かに、オリアナ様と同じ年頃だったはずだ。
面会するにも、貴族ですらない僕では、中々に厳しい。とはいえ、ダメ元で面会を求める手紙を送ったところ、予想外に面会に応じるという返事をいただいた。
そして、今日……。
「ここが、オリアナ様のご友人の家……」
とある事情により、貴族の屋敷に入ることがあった僕でも、その家の規模に尻込みしそうになる。
「お待ちしていました。貴方が、ライト・ロットール様ですね」
ついでに、屋敷から出てきた女性を前に、震えそうになる体を必死に抑える。
リリナローズ・レイシラという女性は、長く美しい銀髪に、真っ赤な瞳を持つ優しそうな顔立ちの女性だ。しかし、今の僕に、彼女を優しいと称することはできない。
「っ、はい。本日は、無茶なお願いにもかかわらず、お招きいただきありがとうございます」
全く目が笑っていないどころかほんのりと殺気すら漂わせている女性に対して抱ける感想は、ただただ、『怖い』しかない。
「いいえ、問題ありませんわ。オリーの片翼を自称する男に関しては、わたくしが引き受けると決めていたのですから」
「自称?」
「えぇ、今までも、オリーに近づいて、甘い汁を吸おうとする愚か者どもが、ここに来ることもあったので」
片翼でもないのに、そんなことをする魔族が居るとは思い難い。となれば……。
「それは、他種族、ですか?」
「ほとんどは、ね? ですが、魔族でも犯罪者は居ますから」
つまり、それだけオリアナ様は狙われていた、ということだ。
その事実に、僕は愕然とすると同時に、恐怖する。
オリアナ様は、いつも、そんな危険に晒されていたのか……?
そうであるならば、オリアナ様が僕を遠ざけようとするのも分からなくはない。
「さて、立ち話もなんですし、屋敷の中で、じっくり話を聞きましょうか?」
明らかに敵認定しているらしいレイシラ様。普通なら撤退するかもしれないが、ここは、オリアナ様のために来た場所で、そうでなくとも、レイシラ様にすら認めてもらえない状態で、オリアナ様に認めてもらえるとも思えない。
「よろしく、お願いします」
僕は、そうして、屋敷の中へと足を踏み入れた。




